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「いつものやつ、ある?」と普段は横柄な常連客。だが、豆腐を買うときだけ口調が変わる理由に笑った瞬間

  • 2026.10.21

入口のすぐ前に止まる黒い車

以前、コンビニでレジを担当していたころの話です。

ある夕方、店の駐車場に黒い高級車が勢いよく入ってきました。車は入口のすぐ前に止まり、中から身なりのいい年配の男性が降りてきました。

私が「いらっしゃいませ」と声をかけると、男性はまっすぐレジへやってきました。

「いつものやつ、ある?」

「えっ、いつもの……ですか?」

私にとっては初めて見るお客さんです。何のことか分からず戸惑っていると、男性は面倒くさそうな顔で、私の後ろの棚をあごで示しました。

どうやら、タバコのことだったようです。

それからというもの、男性はよく店に来るようになりました。車を止める場所も、いつも入口のすぐ前です。

買い物のときも、自分で商品を探す前に、レジにいる私へ声をかけてきます。

「牛乳、ある?」

「はい、奥の冷蔵ケースにございます」

「……」

男性は返事もせず、さっさと奥へ歩いていきます。

せめて一言くらい返してくれてもいいのに。そんなことが重なり、私は男性のことを、少し横柄なお客さんだと思うようになっていました。

豆腐を買うときだけ変わる口調

ところが、ある夕方のことです。

いつものようにレジへ来た男性が、少しやわらかい声で尋ねてきました。

「お豆腐はある?」

「はい、ございます」

答えながら、私は心の中で首をかしげました。

タバコは「いつものやつ」、牛乳は「牛乳」。それなのに、豆腐のときだけ「お豆腐」なのです。

最初はたまたまだと思いました。しかし次の日も、その次の日も、男性は豆腐を買うときだけ同じ言い方をしていました。

どうして豆腐だけなんだろう。

気になって仕方がなくなった私は、男性のことをよく知っている顔なじみの年配の女性客に、会計のついでに尋ねてみました。

「あの方、豆腐を買うときだけ『お豆腐』って言うんですよ。不思議ですよね」

すると女性は、何でもないことのように教えてくれました。

「ああ、あの人の実家、有名なお豆腐屋さんなんだよ」

「えっ、そうなんですか!」

思わず笑いそうになり、私は慌てて手元のレシートに目を落としました。

なるほど。実家が豆腐屋さんなら、豆腐に特別な思いがあるのかもしれません。

もちろん、本当の理由を男性に聞いたわけではありません。

それでも、あのぶっきらぼうな男性が豆腐にだけ「お」をつける姿を思い出すと、なんだかおかしくなってしまったのです。

それ以来、黒い車が駐車場に入ってくると、私はつい豆腐の在庫を気にするようになりました。

そして、次に男性が来た夕方のこと。

私は、いつもの質問をされる前に声をかけてみました。

「お豆腐、入ってますよ」

男性は一瞬きょとんとした顔で私を見ました。

それから、ほんの少しだけ口元をゆるめたのです。

「……そうか。ありがとう」

「いえ、とんでもないです」

男性からお礼を言われたのは、これが初めてでした。

男性は奥の冷蔵ケースから豆腐を持ってくると、両手でそっとレジに置きました。私もいつもより丁寧に袋へ入れました。

車の止め方やそっけない態度が変わったわけではありません。それでも、豆腐を大切そうに扱う姿を見てからは、以前ほど苦手に感じなくなりました。

人には、意外なこだわりがあるものです。今でも豆腐売り場を見ると、あの男性の「お豆腐はある?」という声を思い出します。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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