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森美術館・片岡真実館長が「森 万里子展」を解説。「ワンネス」を探求し続けるアーティスト

  • 2026.10.19
Hearst Owned

2002年以来、日本の美術館では24年ぶりの個展として開催される、待望の大回顧展。その共同キュレーションを手掛ける森美術館・片岡館長に、展覧会の見どころと、常に時代を先取りしてきた森 万里子さんが、新たに投げかける現代への問い、そして今だからこそ体験してほしい魅力について寄稿していただきました。

Kenshu Shintsubo

<Profile>
片岡真実(かたおかまみ)/森美術館館長

2003年より森美術館、2020年より現職。国立アートリサーチセンター エグゼクティブ・アドバイザー。第21回シドニー・ビエンナーレ(2018年)や国際芸術祭「あいち2022」(2022年)などの芸術監督、ヘルシンキ・ビエンナーレ2027共同キュレーター、その他委員や審査員などを多数兼務。これまでにも小沢 剛、会田 誠、アイ・ウェイウェイ、塩田千春などのアーティストの個展を手掛けている。

日本では24年ぶりの大規模展「森万里子:燦燦」

今回の展覧会では、現代美術家・森 万里子が30年にわたり手掛けてきた代表作の数々を展示。魂の行方を探る、エターナルで優しく、全てを包み込むような世界観が魅力です。《エソテリック・コスモス:バーニング・デザイアー》(1996–1998年)305×610×2cm。 Hearst Owned

森 万里子さんの30年以上にわたる旅路を網羅する個展「森万里子:燦燦」は、日本の美術館での大規模展としては、2002年以来となります。万里子さんは、ロンドンとニューヨークで現代アートを学び、卒業早々にニューヨークと東京で個展。30歳で「第47回ベネチア・ビエンナーレ国際美術展」の特別賞を受賞するなど、まさに彗星(すいせい)のように登場し、1995年の作品《スター誕生》は、彼女そのものでした。東京都現代美術館での個展はまばゆい輝きを放つ初期作品が中心でした。今回の個展では、多様な分野へ関心を広げてきたその後の進化も含め、活動の全貌をふかんできるでしょう。

共同キュレーターのアレクサンドラがとても近い所で万里子さんを見守ってきたのに対し、私はどちらかといえば米国、英国、南米などでの活躍を距離を持って見てきました。作品の展示も評価も欧米中心だった「森 万里子」を、このタイミングで改めて日本あるいはアジアの観点から論じられるのか。これまでアジアの中堅作家のキャリアを総覧する個展を10本近く企画して来ましたが、今回もとてもチャレンジングです。同時に、21世紀になって彼女が唱えてきた「Oneness(一体性)」や「Connectedness(つながり)」を観客の皆さんと共に体験する機会を作ることに意義があると考えています。

《Wave UFO》(内部)(1999–2002年)。本展での体験鑑賞(ポッド内への入場)は人数制限があり、事前申し込みおよび別途料金が必要です。 Tom Powel

万里子さんはデビュー直後から、大作《リンク》(1995~2006)と《エソテリック・コスモス》(1996~98)のために各地の遺跡や秘境、新興都市などに赴き、撮影していました。《リンク》では過去・現在・未来を象徴する場として、エジプトのギザ、カンボジアのアンコールワット、渋谷、ニューヨークのタイムズ・スクエア、上海など、《エソテリック・コスモス》のためにはアリゾナのペインテッド砂漠、死海、フランスのミラージュ洞窟、中国のトルファンなど本当に世界中です! ’03年以降は、沖縄、そして青森、長野などの縄文遺跡、さらにはスコットランドやアイルランドにある新石器時代の遺跡を精力的に訪問し、そこから新作が生まれています。

《エソテリック・コスモス:ピュア・ランド》(1996–1998年)305×610×2cm。 Hearst Owned

1996年の万里子さんのノートには、すでに「全ての物は繋がっている」と書かれています。万里子さんが感じていたのは、自然の壮大なスケール感、太古から共有されてきた場のエネルギー、異なる空気、太陽の光。そうした体験も「Oneness」の素地になっています。

その思いは《Wave UFO》では、3人の体験者の脳波がつながる体験を可視化させ、スコットランドの遺跡に着想を得てできた《トムナフーリ》では、超新星爆発などが放つニュートリノを観測するスーパーカミオカンデと、ケルト文化の魂の再生を重ね合わせています。循環する宇宙も、最新の宇宙物理学理論を参照した立体作品で表現してきました。さらに2010年に設立したFaou財団では、世界六大陸に大自然と人間の関係を再認識させる作品を設置することを目指しています。

《トムナフーリ》(2006年)327×115×40cm。 Richard Learoyd, Photo Courtesy: SCAI THE BATHHOUSE, Tokyo

30年以上にわたって、一貫して「全てはつながっている」という直感を探究し続けてきた万里子さん。《スター誕生》で一つの星として輝いた彼女のまなざしは、今や個を超え、全人類、全生命、自然界をつなぎ、宇宙そのものの循環へと開かれています。争いや分断が深まる今だからこそ、人々の心の奥に差し込む燦燦とした光は、私たちが世界とのつながりをもう一度想像するための道標となるはずです。

【森万里子:「燦燦」】
会期/2026年10月31日(土)~2027年3月28日(日)
時間/10:00~22:00(火曜日のみ~17:00)
※ただし11月3日(火・祝)は~18:00、2月23日(火・祝)は~22:00
休館日/会期中無休
会場/森美術館
所在地/東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F
URL/www.mori.art.museum/jp/exhibitions/marikomori

初出:リシェスNo.57 2026年9月28日発売
EDITING:KAZUHIRO NONAKA

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