1. トップ
  2. エピソード
  3. 俺の寝言が彼女に届いていた。「最後、なんて言ってたの?」と聞かれて、送れずに消した一文

俺の寝言が彼女に届いていた。「最後、なんて言ってたの?」と聞かれて、送れずに消した一文

  • 2026.10.20
ハウコレ

自分の声を聞き直すと、名前のあとに何を言いかけていたのかはすぐに思い当たりました。けれど彼女に聞かれても、その言葉だけは送れないまま消しました。

目を開けると、スマホを握ったまま横向きに寝ていました。ロックを外すと彼女とのチャットが開いたままで、一番下に38秒の音声メッセージが残っていました。吹き出しは画面の右側、俺が送ったものでした。

押した覚えのない送信

眠る前は、次の休みの予定を彼女とやりとりしていました。候補のお店が届いたころには布団に横になっていて、「ごめん、ちょっと目つぶる」と送ったところまでは覚えていました。その下に彼女からの返事も届いていましたが、読んだ記憶はありませんでした。

音声の吹き出しの横には、既読の表示がついていました。握ったまま眠ったせいで、親指がマイクのボタンに乗っていたのでしょう。

イヤホンをつけて、自分の送ったものを再生しました。布団の音と呼吸の音のあとに、間の抜けた声で彼女の名前。そのあとに続くもごもごした音を聞いて、自分が何を言いかけていたのかすぐに思い当たりました。

布団の中で繰り返していた言葉

「一緒に住もう」。それ以外に考えられませんでした。

先月、アパートの更新の案内が届きました。更新するより、2人で住める部屋を探したい。次の休みに会ったら切り出そうと決めて、眠る前も布団の中で、言い方を頭の中で繰り返していました。それがそのまま、口から出ていたようです。

聞き直しても、はっきりしているのは名前と、最後の「もう」くらいでした。彼女に伝わったとは限りません。それでも、顔を見て言うつもりだった言葉が、寝ぼけた声のまま先に届いてしまいました。

ここ最近、彼女は仕事が立て込んでいて、約束が2回続けて延期になっていました。そんな時期に寝言でこんな話を聞かせたら、急かしているように受け取られるかもしれない。

送信取消のメニューまで開いて、そこで閉じました。既読がついたものを消せば、かえって何かあったと思わせてしまいます。「昨日のは」と打っては消し、結局送ったのは、軽く流すための一文でした。

「ごめん、寝ぼけて変なの送ってたよね。忘れて」

文字にできなかった一文

送ってすぐに既読がつき、少しして返信が届きました。

「最後、なんて言ってたの?」

忘れて、と書いたのは失敗だったのかもしれません。取り消したがっているように読めたなら、あの「もう」の先を、彼女はどう想像しているのだろう。

「一緒に住もうって言ってた」と打ち、送信ボタンの上で親指を浮かせたまま画面を見ていました。案内の封筒も、探しておいた間取りも、まだ何も見せていませんでした。寝言の説明として送れば、それで話が済んでしまう気がしました。

全部消して、打ち直しました。気づけば、彼女の質問に既読をつけてから、ずいぶん時間がたっていました。

「今度会ったとき言う」

そして...

返ってきたのは「わかった。次の休みは空けとく」でした。延期が2回続いたあとだったので、その一文を何度か読み返しました。

更新の案内は封筒ごと、次に会う日に持っていく鞄に入れました。返事の期限は来月末。彼女がどう答えるのかは、まだ分かりませんでした。

(20代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ