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指定席を譲れと粘る夫婦に、友人を責める男性たち。通路に立っていた私が言った一言

  • 2026.10.21
ハウコレ

通路の向こうから届いた「まあ、代わってあげればいいのにね」という小声。座ったまま友人を責める2人に、私は体の向きを変えました。

トイレから席に戻ると、通路に年配の夫婦が立っていました。窓側に座る友人は、外したイヤホンを片手に握ったまま、困った顔で首を横に振っています。楽しみにしていた2人旅の途中で、見知らぬ人たちに向かって声を張ることになるとは思っていませんでした。

何度断っても引かない夫婦

「自由席がいっぱいなんだよ。若いんだから代わってくれてもいいだろう」

年配の男性が、友人の顔をのぞき込むようにして言いました。隣の女性も「少しの間だけでいいのよ」と重ねます。

友人は座ったまま、まっすぐ相手を見て答えました。

「ここは予約して取った席なので、すみません」

2人で並んで座れるよう、早めに予約しておいた指定席。友人が謝る必要は、どこにもないはずでした。

それでも夫婦は通路をふさいだまま、その場を離れようとしません。私の席の前にも男性が立っていて、座ることさえできない状態です。荷物棚の端をつかんで、やりとりを見守るほかありませんでした。

通路の向こうから聞こえた声

同じ問答が何度か繰り返されたころ、通路を挟んだ隣の列から、ひそひそと話す声が聞こえてきました。スーツ姿の男性が2人。通路側の男性が、窓側の連れに顔を寄せて言います。

「まあ、代わってあげればいいのにね」

「ですよね」

通路に立っていた私の耳には、その声がはっきり届きました。

友人は、何も悪いことをしていません。それなのに、横で見ているだけの人から「譲らない側」として扱われている。自分の席には座ったまま、口だけで人の席を差し出しているのです。そう思ったら、黙っていられなくなりました。

小さく息を吸って、通路の真ん中で体の向きを変えます。

周りに届くように言ったこと

「こちらの方々が代わってくれるそうですよ!ありがたいですよね」

男性2人のほうへ手のひらを向けて、周りの席にも届く声で言いました。

近くの乗客が一斉に顔を上げ、夫婦もこちらを振り返ります。通路側の男性は「えっ、いや……」と口ごもり、窓側の男性はスマホの画面に目を落としました。

通路側の男性は、膝の上の鞄を抱え直して早口で言いました。

「すみません、仕事の資料があるので」

年配の男性は、短く鼻を鳴らしました。

「なんだ、口だけか」

夫婦はそれ以上何も言わず、デッキの扉の向こうへ歩いていきました。

そして...

ようやく席に腰を下ろすと、友人が小声で「ありがとう、助かった」とつぶやきました。握ったままだったイヤホンを、ケースに戻しながら。

通路の向こうの2人は、それきり一言も話していません。通路側の男性は鞄を膝に抱えたまま、ずっと窓の外を見ています。仕事の資料があると言っていたのに、その鞄が開くことは、最後までありませんでした。

陰で言っていたことを周りに聞かれたら、気まずいのは分かります。それでも、あの人の慌て方は、ただ恥ずかしがっているだけには見えませんでした。あの男性は、どうしてあれほどうろたえていたのでしょうか。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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