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夫「今日は他人でいてくれ」→妻のパート先に部長と突然来店→上司の一言で嘘が全部崩れたワケ

  • 2026.10.18
SHUFUFU

商業施設のレジでパートを始めて、もうすぐ一年になる。作業しながら「いらっしゃいませ」と言うのにも慣れてきた頃、夫が職場の上司を連れて店に入ってきた。

「今日は他人でいてくれ」耳打ちされた言葉

夫の名前は翔太、35歳。IT系の会社に勤めていて、私がこの店に出ていることは前から知っていたし、それを嫌がっている様子もなかった。

その日、翔太はお惣菜用トレイを持ちながらショーケースをのぞき込んでいた。隣には初めて見る50代くらいの男性。スーツをきちんと着た人で、翔太が「部長」と呼んでいるのが聞こえた。

翔太は私のレジに近づいてくると、他の客のふりをするように視線をそらし、小声で言った。

「今日は他人でいてくれ。頼む」

一瞬、何を言われたのか分からなかった。

「……どういうこと?」

「社内では独身だってことにしてるんだ。部長には特に。今バレると困る」

翔太は続けて、「部長には昔から『身軽な若手』として目をかけてもらってて、今度のプロジェクトのリーダー候補にも名前が挙がってる。既婚だと分かると外されるかもしれない」と早口で言った。それだけ言うと、何事もなかったようにコロッケを差し出して「これ、お願いします」と言った。

頭の中が「は?」でいっぱいになった。私は結婚して3年になる翔太の妻だ。社内では独身だと嘘をついていた上に、今、私の職場で私に他人のふりをしろと言っている。

「独身を装ってた理由」が全部おかしい

袋にコロッケを詰めながら、頭を整理しようとした。でも考えるほどおかしい。

以前、翔太は「会社の飲み会に独身の後輩女性がよく来る」と話したことがあって、そのとき「俺は結婚してるから関係ない」と私には言っていた。家では既婚を隠す気なんてなさそうだったのに、社内では逆のことを言っていたことになる。

理由を聞くと、翔太は「入社してすぐの頃、独身だと思われたまま可愛がられて、リーダー候補にまで名前が挙がった。今さら『実は結婚してます』と言ったら、軽い噂話じゃ済まなくなりそうで、ずるずる言えなくなった」と言った。

しかも今日この店に来たのは、部長の自宅がこの商業施設の近くで、手土産を見繕うついでに惣菜を買いに寄ったからだと、あとから翔太の口から聞いた。私がここで働いているのは翔太も知っていた。それなのに部長を連れてきた。

つまり、鉢合わせしても私が黙って話を合わせると、たかをくくっていたのだ。

会計をしながら、私は翔太の顔を見なかった。「550円です」とだけ言って、お釣りを渡した。

「他人って、奥さんのことですか?」

ところが、翔太が財布をしまいかけたとき、隣に立っていた部長が口を開いた。

「あの、さっき『他人でいてくれ』って言ってましたよね。彼女、もしかして奥さんですか?」

翔太の手が止まった。

部長の声は責めている感じではなく、確かめているだけのトーンだった。どうやら翔太が耳打ちした声は、部長にも聞こえていたらしい。

翔太は「え、あ、いや」と言いかけて、口をつぐんだ。

私はとっさに否定も肯定もできず、ただ翔太を見た。

翔太はしばらく目を泳がせてから、「……妻です。結婚して3年になります」と言った。声が小さかった。

部長は一度息を吐いて、「そうですか」と言った。「社内ではずっと独身だと聞いてましたが」

「すみません、言いそびれてて」

「3年も言いそびれるのは、ちょっと長いですね」

部長はそう言うと、家では奥さんを大事にしてほしいと前から若手に言ってきた、と付け加えた。自分も昔、部下の家庭を後回しにさせる働かせ方をして苦い思いをしたことがある、とも。

それだけ言うと、翔太の袋を受け取って先に歩いていった。

店を出る前に翔太が戻ってきた

十分後くらいに、翔太だけ戻ってきた。部長は外で待っているようだった。

「ごめん」

「うん」

「怒ってる?」

「怒ってるっていうか、なんでそんなことするの、って感じ」

翔太は何も言わなかった。私も次のお客さんが来たので、それ以上は話せなかった。

夜、家に帰ると翔太がリビングで待っていた。「ちゃんと話したい」と言った。

聞くと、入社してすぐの頃に「結婚してる」と言い出すタイミングを逃し、そのまま言えなくなったらしい。部長には独身の若手として目をかけてもらい、リーダー候補の話も出ていたから、今さら言えなかった、と繰り返した。

「だからって、私に他人のふりをしろって言う?」

「言えなかった。本当にごめん」

翌週、社内で正式に報告した

部長から翌日、翔太に連絡があったと、あとから聞いた。「奥さんに失礼なことをさせたな。ちゃんと社内に話しておけ」と言われたらしい。

翔太は翌週、職場で既婚であることを上司と同僚に報告した。「言いそびれていた、妻にはこの前迷惑をかけてしまった」と説明したという。

私への「他人でいてくれ」は、もう二度と言わないと約束した。

それから数週間たった今も、翔太は変わらず惣菜を買いに来る。ただし一人で。レジに並んで「コロッケふたつ」と言ってくる。私が「いらっしゃいませ」と言うと、少し気まずそうに笑う。

それでいい、と今は思っている。

さいごに

自分の立場を守りたくて、妻に「他人でいてくれ」と頼んでしまう。それがどれだけ相手を軽く扱うことか、翔太自身が一番よく分かったはずです。部長のひと言がなければ、このままずるずる続いていたかもしれません。もし自分が同じことを頼まれたら、あなたはどうしますか。

※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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