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「大事な話がある」と送った俺が、最後まで送れなかった一文

  • 2026.10.19
ハウコレ

異動を打ち明けた直後、彼女から届いたのは思ってもいなかった本音でした。用意していた続きの一文を、俺は送る前に消しました。

送信前のメッセージは、スクロールしないと読めないほどの長さになっていました。異動のこと、この2か月のこと、その先のこと。全部書いたのに、読み返すたびに順番が違う気がしたのです。結局、残したのは最初の一行だけでした。

言えないまま短くなった返事

3年付き合っている彼女とは、別々に一人暮らしをしています。福岡への異動の内示が出たのは2か月前。正式な辞令が出るまでは口外しないよう言われ、彼女にも伝えられずにいました。

メッセージを打てば、つい書いてしまいそうになる。だから返信は、なるべく短くしました。「ごめん無理そう」と送った休みの日は、家で引き継ぎの資料を作っていました。会えば顔に出る気がして、約束も2回続けて断りました。

言えないことを抱えたまま、平気な顔をする自信がなかった。自分の都合ばかりで、彼女に何を我慢させているのかまでは考えていませんでした。

一行だけの前置きと、その続き

辞令が出たその日、帰宅してすぐに彼女とのトーク画面を開きました。

「大事な話がある」

送ってから、ずいぶん重い前置きになったと気づきました。10分近くたって届いたのは、短い返事です。会ってから話すつもりでしたが、これ以上待たせるわけにはいきません。異動のことを2通に分けて先に送りました。

本当に伝えたかったのは、その続きです。

「一緒に福岡に来てほしい」

入力欄に打ったものの、送信ボタンに触れる前に迷いが出ました。彼女の返事を先に待とう。そう決めた直後に、メッセージが届きました。

「実は私、別れようって言うつもりだった」

送れなかった一文

画面の文字を追いながら、入力欄の文をすべて消しました。

彼女は、別れを考えるところまで来ていた。原因の大半は、俺の短い返事と断った約束です。ここで「来てほしい」と送れば、彼女の迷いに自分の都合を上乗せすることになる。そう考えて、理由を尋ねる短い文だけを返しました。

届いた説明には、責める言葉が見当たりませんでした。何度も書き直したような、丁寧な文章です。読み進めるうちに、会えなかった休みの日に自分が何をしていたのか、一度も伝えていなかったことに気づきました。

「異動の話、正式に決まるまで言えなかった。ごめん」

謝るには足りないと分かっていました。それでも、言葉を足すと言い訳が混ざりそうで、そこで送信しました。

そして...

「次の休み、そっち行ってもいい?ちゃんと顔見て話したい」

返ってきたのは「うん、待ってる」でした。

ブラウザには、福岡の不動産サイトが開いたままになっていました。保存した物件は、どれも会社から少し離れた2LDKです。1人で住むには広すぎる部屋ばかり選んでいたことを、彼女にはまだ話していません。

消した一文は、あとからメモに打ち直しておきました。彼女の話を全部聞いてから、それでも言っていいと思えたときだけ口にする。そのうえで、次の休みの予定に、彼女の家へ行くとだけ書き込みました。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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