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「時間ぎりぎりなのかもね」バスで70代の母を追い抜いた若い男性。呆れた私が降り口で恥ずかしくなった理由

  • 2026.10.15
「時間ぎりぎりなのかもね」バスで70代の母を追い抜いた若い男性。呆れた私が降り口で恥ずかしくなった理由

映画の日、駅から乗ったバスで

数年前の休日、40代だった私は、姉と70代になったばかりの母と3人で映画を見に出かけました。

母はそのころ、段差を下りるのが少し苦手になっていました。駅から映画館まではバスで向かうことになり、乗車するときも私は母の背中に手を添えようとしました。

「いいのいいの。自分で乗れるから」

母は笑ってそう言うと、手すりをつかみながらゆっくりステップを上がりました。

車内には空席もあり、私たちは後ろのほうに3人並んで座りました。

しばらくして映画館の前のバス停に着き、母を先頭にして席を立ちました。

すると、後ろの席にいた20代くらいの男性が、ゆっくり進む私たちの横をすっと通り抜け、先に降り口へ向かっていったのです。

私は少し驚いて、姉の耳元でささやきました。

「バスの中で追い抜くなんて、よっぽど急いでるのね」

「時間ぎりぎりなのかもね」

姉も小声で返してきました。

母がゆっくり歩いているのは見れば分かるのに、そんなに急いで追い抜かなくてもいいのに。

私は少しあきれながら、母の後ろを歩いていました。

歩道でふり返った男性の両手

母を先頭に降り口へ近づくと、先ほどの男性が歩道に立っていました。

あれ?急いでいたんじゃないの?

不思議に思った次の瞬間、男性がこちらをふり返りました。

そして、ステップを下りようとする母に向かって、両手をそっと差し出したのです。

「あっ…」

思わず声が漏れました。

男性は急いでいたのではなく、母がバスを降りるのを手伝おうとして、先に降りてくれていたのです。

そのことに気づいた瞬間、私は恥ずかしくなりました。姉も驚いた顔で私を見ています。

ところが、当の母は差し出された手を見ると、にっこり笑いました。

「ありがとう。でも、これくらい自分で降りられるのよ」

そう言って手すりを握り、一段ずつ慎重にステップを下り始めました。

男性は差し出していた手を止め、母が降りる様子を見守っています。

無事に母が歩道へ降りると、私と姉も慌ててバスを降り、男性に頭を下げました。

「ありがとうございます。母、こう見えて負けず嫌いで」

「いえ、降りられてよかったです」

男性は少し照れたように笑い、手を下ろすと足早に去っていきました。

その後、映画館へ向かって歩いていると、母がうれしそうに言いました。

「若い人に手を差しのべてもらえるなんて、私もまだまだ捨てたもんじゃないわね」

「お母さん、せっかく手を貸してくれようとしたのに、自分で降りちゃったじゃない」

姉が笑いながら言うと、母も楽しそうに笑っていました。

私たちもつられて笑いましたが、私は先ほどの自分の言葉を思い出し、少し申し訳ない気持ちになりました。

母が亡くなった今でも、姉と会うとあの日の話が出ます。

知らない人の行動を勝手に決めつけてしまった私たちと、親切を喜びながらも最後まで自分で降りた母。

思い出すたびに、姉と二人で笑ってしまう、忘れられない出来事です。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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