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三宅香帆さんに聞く、大人のためのウェルネス読書術。“忙しくても本を味方にする5つのコツ”

  • 2026.10.16
Kyohei Hattori

読書は、知識や情報を得るためだけのものではない。忙しい毎日から少し離れ、自分のペースを取り戻す時間にもなる。一方で、仕事や家事、日々のタスクに追われていると、「本を開く時間がない」「最後まで読み切れない」と、読書そのものがプレッシャーになってしまうことも。

今回は、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』などの著書で知られる文芸評論家・三宅香帆さんに、忙しい日々の中で本を心地よい味方にするための読書術を聞いた。

月に約20冊ほどの本を読むという三宅さん。3日で2冊ほどのペースで読み進めることもあるというが、どのように読書時間をつくっているのだろうか。まずは、三宅さんの5つの読書のコツを教えてもらった。

【コツ1】 最初から最後まで読まなくてもいい

三宅さんは、基本的に1冊ずつ本を読むスタイル。ただし、「最初から最後まで、順番どおりに読み切らなければいけない」とは考えていないという。

「複数冊を同時に読むことはせず、1冊ずつじっくり読むスタイルです。ただ、1ページ目から最後まで読み切ることが、必ずしも大切だとは思っていません。

あまり面白くないと感じたら、途中で読むのをやめてもいい。新書などであれば、目次を見て、興味のある章から読み始めても大丈夫です。最近はAudible(オーディブル)のような音声コンテンツから本に入る方法もありますよね。最初から最後まで通して読むことだけが読書ではない、と知っていただけたらうれしいです」

読書を始める前の時間も、本との出会いを楽しむ大切なプロセスだ。

「たくさん読むこと自体を目標にする必要もありません。『今週末は本屋さんに行って、1冊だけでも好きな本を見つけてみよう』と考えるだけでもいいですね。自分にとっての“究極の1冊”を探しに書店へ行く。そんなところから、読書を楽しんでもらえたらと思います」

【コツ2】スマホを置いて、昔好きだった本や漫画を読む

SNSを開けば次々と情報が流れ、メッセージの返信や通知にも追われる現代。読書に集中したいときは、まずスマートフォンから物理的に距離を置くことが有効だという。

「今のSNSは、同じ話題がタイムラインに流れ続けたり、返さなければいけない連絡が多かったりして、疲れてしまうこともありますよね。なかなか集中できないときは、まずスマートフォンを置いて、物理的に距離を取ってみてください。

さらに気分を切り替えたいときは、昔読んでいた本や漫画を開くのもおすすめです。当時は気づかなかったことに気づいたり、今の自分との違いを感じたりすることもある。過去に読んだ作品だからこそ、負担なく物語の世界に入れるのも魅力です。日常から少し離れる時間が、自分の心を休めるきっかけになると思います」

【コツ3】内容が入ってこない日は、別の本を読んでみる

「本を読みたいのに、内容が頭に入ってこない」というときは、本の難易度やジャンルが、その日の自分のコンディションと合っていないのかもしれない。三宅さんは、その日の体調や気分に合わせて読む本を選んでいるという。

「新しい知識を取り入れたり、海外の知らない作家の作品を読んだりするのは、元気なときのほうが向いています。一方で、すごく疲れているときは、小説や漫画など、自分が好きなジャンルを選びます。私は歴史ものが好きなので、ある程度の予備知識があり、すっと世界観に入れる作品なら、負荷なく読めるんです。

読書が進まないときは、『自分の集中力が足りない』と考えるのではなく、その日の自分に合う本を選べているかを見直してみるといいと思います」

読む本を変えるだけで、読書はもっと身近になる。元気な日は新しいジャンルに挑戦し、疲れた日は安心して読める作品を選ぶ。そんな柔軟さも、読書を続けるコツだ。

【コツ4】読書時間は無理に作らず、読むタイミングや場所を決める

「まとまった読書時間が取れない」という人には、生活の中で、本を読むタイミングや場所を決める方法がおすすめ。

「お風呂にスマートフォンではなく本を持ち込むと、スマートフォンの誘惑がないので意外と集中できるのでおすすめ。私は20〜30分ほど、湯船に浸かりながら読むことがあります。

また、通勤や移動の時間を『本を開く時間』と決めておくのも効果的。毎日必ず同じ時間を確保しようとするよりも、生活の中で自然に読める場所を見つけることが大切です。読書をする場所やタイミングを決めておくと、義務感を持たずに習慣化しやすくなりますよ」

移動中は安全を優先し、お風呂では無理のない範囲で。自分の生活に合わせて、読書を取り入れやすい場所を探してみよう。

【コツ5】心に残った1〜2文だけメモする

読んだ内容を覚えておきたいときは、最初から完璧な読書ノートをつくる必要はない。三宅さんがおすすめするのは、印をつけることと、短いメモを残すことだ。

①面白い箇所に線や付箋をつける

「新書や人文書などを漠然と読んでいると、『自分はいま何を読んでいるんだろう』となりがちです。そんなときは、『面白いと思ったところに印をつけよう』と考えながら読むだけでも、内容が頭に入りやすくなります。実際にラインマーカーで線を引いてもいいですし、細めの付箋をつけておくのもおすすめです。後から振り返りやすくなり、読んだ内容が自分の中に残りやすくなります」

②面白かった1〜2文をスマートフォンに残す

「『面白かったな』『覚えておきたいな』と思った箇所を、スマートフォンのメモに1〜2文だけ残しておきます。短くメモするだけでも記憶に残りやすくなりますし、後から日記を書くときや、仕事のアイデアをまとめるときにも役立ちます。読後の感想を何ページも書こうとせず、まずは心に残った言葉をひとつ記録する。それくらいの気軽さで十分です」

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三宅香帆さん推薦。シーン別に読みたい3冊

①人間関係で気持ちが落ち込んだとき

新潮社

山本文緒『自転しながら公転する』(新潮文庫)

「主人公が、実家のこと、職場、恋愛など、いくつもの悩みを抱えながら進んでいく小説です。『人生って、こんなふうにいろいろなことが重なっていくよね』と共感できる部分があり、落ち込んだ気持ちに寄り添ってくれる作品だと思います。私自身も何度も読み返している、大好きな1冊です」

②仕事のやる気を出したいとき

©小学館

高殿円『上流階級 富久丸百貨店外商部』(小学館文庫)

「百貨店の外商部で働く女性が主人公のお仕事小説です。忙しく働き、人と向き合い、買い物を通してさまざまな価値観に触れていく物語の中に、生き方や仕事についての視点も描かれています。仕事のモチベーションが下がってしまったときに読むと、もう一度、自分の仕事や日々の生活に向き合うエネルギーをもらえるはずです」

③寝る前の10分にリラックスしたいとき

集英社文庫

『本当はちがうんだ日記』著・穂村弘/集英社文庫

「短い文章で、ふっと笑える魅力的なエッセイです。寝る前に1編だけ読む、という過ごし方にもぴったり。深く考えすぎずに読めて、少し気持ちをゆるめてくれるので、ベッドサイドに置いておく本としておすすめです」

まとめ:大人になったからこそ楽しめる、自由な読書を

読書に対して、「学校で強制的に読まされた」という苦い記憶を持っている人もいるかもしれない。けれど、大人になってからの読書には、決められたルールも義務もない。

「大人になってからの読書は、何を読んでも、いつ読んでも自由です。途中でやめてもいいし、同じ本を何度読んでもいい。小説でも漫画でも、音声で聴いてもいい。本が1冊手元にあれば、自分のペースで楽しめます。忙しい人にこそ、読書を“勉強の時間”ではなく、ゆっくり自分と向き合うための心地よい時間として取り入れてもらえたらうれしいです」

読書は、たくさん読むことを競うものではない。その日の自分に合う1冊を選び、ほんの数ページでも本を開く。そんな小さな習慣から、読書を心地よい味方にしてみて。

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お話を伺ったのは……

三宅香帆(みやけ・かほ)さん

1994年生まれ、高知県出身。文芸評論家。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。リクルート勤務を経て独立。京都市立芸術大学非常勤講師。2025年、著書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)で「新書大賞2025」を史上最年少で受賞。主な著書に『人生を狂わす名著50』(新潮新書)、『「好き」を言語化する技術』(ディスカヴァー携書)、新書『推したちとどう生きるか』(新潮新書) など。

新潮新書


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