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給料日のたびにこぼしていた俺の本音と、財布の奥に残る1枚の明細

  • 2026.10.13
ハウコレ

送別会の前に封筒へ足された5000円。その金額がどこから回ってきたのか、俺は一度も考えたことがありませんでした。妻の書き添えは、短い言葉だけでした。

テーブルの上で、妻が家計ノートのページを押さえたまま俺を待っていました。ノートの隣には、ページを開いた通帳が3冊。どこから見ればいいのか分からず、手前の1冊を引き寄せました。

財布にしまった1枚の明細

半年ほど前、玄関のトレイにATMの明細が1枚置かれていました。妻が出がけに置いていったものらしく、残高の欄には、思っていたよりずっと大きな数字が印字されていました。

うちには、それなりに余裕がある。そう受け取った俺は、明細を折りたたんで財布のカード入れにしまいました。妻に聞けばすむ話です。けれど、家のお金を何も知らないと認めるようで、切り出せないままでした。

家計について聞いても、妻の返事は決まっていました。

「大丈夫、ちゃんと回してるから」

その言葉と明細の数字が、頭の中で1つにつながっていきました。

家の外側にいるような給料日

給料日には、妻が茶封筒をテーブルに置くのが決まりでした。中身は毎月3万円。余裕があるなら、どうして俺だけ封筒なのか。家のことを任せきりにしている自覚はありながら、封筒を受け取るたびに、家の外側に置かれているような気がしていました。

その日も、封筒を財布にしまいながら口が動いていました。

「今月も小遣い制か」

言い終えて息を吐いたことは、自分でも分かっていました。ソファでスマホを眺めていると、台所から妻が通帳とノートを抱えて戻ってきました。

「ちょっと座って」

スマホを置いて、テーブルの向かいに移りました。

同じ数字が並んでいた通帳

「これ、うちの全部」

生活費の通帳から順にめくり、積立の通帳を開いて、向かいの妻を見ました。並んだ残高を見ても、何のために貯めているのかは分かりませんでした。

「これ、何の積立?」

「車検と、部屋の更新料。来年まとめて出るから」

余裕だと思っていた数字の行き先は、とっくに決まっていたのです。ノートを引き寄せてページを戻すと、先月のところに送別会の5000円の行。封筒に足されていた分でした。同じ月の妻の欄には、送別会へとだけ書き添えてありました。

毎月こぼしていた言葉を、妻はこのノートを付けながら聞いていたことになります。気づくと、頭を下げていました。

「ごめん。俺、あの紙だけ見て決めつけてた」

「私も、大丈夫しか言ってこなかったから」

妻は、あの紙が何なのかを聞いてきませんでした。

そして...

次の給料日から、封筒を受け取る前にノートを開くようにしています。積立の欄を指で確かめてから、封筒を財布に入れる。それだけの手順ですが、あれからため息は出ていません。

あの明細は、今も財布のカード入れの奥にあります。何の紙だったのかを妻に話すきっかけは、まだつかめていません。

(30代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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