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フェラーリが取り組む「未来への教育」。知の集積を地域へ、次の世代へ

  • 2026.10.13

私費で学校の創設をするなど、エンツォ・フェラーリは教育を重要視した。その志を受け継いで広がる、技術教育の最前線を紹介する。

photo: Ferrari S.p.A. / text: Tsuzumi Aoyama

次世代メカニック育成プログラム「フェラーリ・テック・タレント」の授業の様子、ジョン・エルカーン フェラ−リ会長
BRUTUS

FERRARI TECH TALENT

世界の現場で育てる、未来のメカニック

「ファクトリーというものは、機械と壁と、そして人から成り立っている。けれど私にとってフェラーリとはなによりも“人”そのものなのです」。創業者エンツォ・フェラーリは、生前そう語った。

クルマというモノを超えて、人こそがフェラーリの本質である。そう創業者が示した哲学は、創業から80年近い歳月を経た今も、世界各国の現場に脈打っている。

その思想を体現するのが、フェラーリが世界で展開する次世代メカニック育成プログラム「フェラーリ・テック・タレント」だ。15歳から25歳までの、自動車整備士を志す若者を対象とした、体験・教育型のプログラムである。世界各地の正規ディーラーで、プロのメカニックによる実演ワークショップやオープン・デーが開催される。座学中心のインターンシップを超え、現場の空気を体感できるのが特徴だ。

次世代メカニック育成プログラム「フェラーリ・テック・タレント」の授業の様子
世界52市場で展開される「フェラーリ・テック・タレント」。日本でも全国11ヵ所の正規ディーラーや、フェラーリのレースカーが走るサーキットで『ディーラー・オープン・デー』を開催。

マラネッロには、世界の整備士たちが集う〈フェラーリ・トレーニング・センター〉がある。2006年に設立された施設で、世界52市場・1,500名超の技術者を訓練する拠点だ。米国、英国、中国、そして日本にもサテライトセンターが置かれ、地域に合わせた研修を提供中。「テック・タレント」は、その世界的なネットワークの最若手版、いわば“入口”にあたる。

日本でも2025年から26年にかけて、第2弾の『ディーラー・オープン・デー』が開催された。広島、東京、横浜、福岡、長野、神戸、札幌、名古屋、大阪。全国11ヵ所の正規ディーラーで、若き挑戦者たちが集った。1,100名を超す志願者の中から選ばれた203名が、晴れてフェラーリ整備の現場という最高の教室へ足を踏み入れたのだ。

修了証にはフェラーリ現CEOのベネデット・ヴィーニャが直筆でサイン。エンツォが大切にした“人”を育てる文化は、今、世界中で芽吹いている。

『ディーラー・オープン・デー』
受講した整備士を志す若者たちには、修了証が渡される。

M-TECH

世代と地域をつなぐ、フェラーリが作る教育拠点

物語は1945年に遡る。エンツォ・フェラーリの願いで、マラネッロに自動車整備士を育てる職業学校が設立された。その名も〈アルフレード・フェラーリ職業学校〉。校名は、彼の早世した愛息に由来する。

創業者の教育への熱意は社内の人材育成だけにとどまらず、地域の若者へ向かった。これが産業全体の未来につながると、エンツォは信じていた。

その遺志を、今新たな形で受け継ぐ計画が動きだしている。フェラーリは2025年11月19日に〈M-TECH〉の構想を発表した。「M」はマラネッロ、「TECH」は技術的職業を意味する。〈スクーデリア・フェラーリ〉創立100周年に当たる2029年の完成を目指す、新世代の教育拠点だ。ジョン・エルカーン会長は、発表の場で「教育は未来への鍵である」と語った。

ジョン・エルカーン フェラr−リ会長
建築模型を地元の生徒たちに示す、ジョン・エルカーン会長。

マラネッロのヴィニョーラ通り沿いの旧工場跡地、32,000m2の敷地に4階建ての校舎が建設され、総投資額は5,000万ユーロを超える。設計はローマの建築事務所〈ラビックス〉が手がける。

〈M-TECH〉はエンツォが残した既存の〈アルフレード・フェラーリ職業学校(生徒約700名)〉を含む3つの教育機関を統合する形で造られる。高校から大学、社会人の継続教育までを1ヵ所に集める、巨大な学びのエコシステムの構築が狙いだ。40以上の教室と研究所、さらに500席の講堂、カフェテリア、図書館も併設。これらは地域住民にも開放される。

〈アルフレード・フェラーリ職業学校〉のCG画像
新進気鋭の建築事務所である〈ラビックス〉が作成した建物のCG画像。ガラスの透明なファサードと緑の中庭が、地域社会に開かれた教育拠点としての姿勢を語る。2029年完成予定。

資金の一部は、昨夏に開催された「Tailor Made Daytona SP3」のチャリティオークションから捻出された。落札額は2,600万ドル。世界中のフェラーリスタの熱意が、新時代の教育の礎となるのだ。

創業者が80年以上前にまいた種は、今、息子の名を冠した教育拠点を基盤とし、次の世代へ向けて走りだす。

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