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通るのは1割以下。年間100本以上の新番組を企画するNHKプロデューサーたちの苦悩とは?

  • 2026.10.9

「コンテンツ制作局・新領域」。斬新で実験的な番組が生まれ続けるNHKで、新番組開発に特化したチームだ。所属するのは少数精鋭のプロデューサーたち。年間100本以上の企画を提案しては、編成の厳しいジャッジを受け、その多くをボツにされる彼らの苦悩とは。

初出:BRUTUS No.1037「NHKのつくりかた」(2025年8月16日発売)

photo: Jun Nakagawa / text: BRUTUS

NHK番組『○○で一番面白い話』『擬人化ドラマ 被告人パンダ』『NOフカシTV』『世界ない!ない!アンケート』
BRUTUS

話を聞いた人

profile

NHK専任部長・杉浦大悟
BRUTUS

杉浦大悟(NHK専任部長)

すぎうら・だいご/1999年入局。『所さん!大変ですよ』『解体キングダム』『ギョギョッとサカナ★スター』『名将たちの勝負メシ』などを立ち上げる。


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NHKプロデューサー・三日市篤史
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三日市篤史(NHKプロデューサー)

みっかいち・あつし/制作会社を経て2012年に入局。『サラメシ』『チコちゃんに叱られる!』『不可避研究中』『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』などを立ち上げる。


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NHKプロデューサー・田中涼太
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田中涼太(NHKプロデューサー)

たなか・りょうた/2004年入局。『日本人のおなまえ』『金曜日のソロたちへ』『光秀のスマホ』『宇宙の人気番組~新銀河紀行 驚異の地球文明~』などを立ち上げる。


――今回は日々企画を練っている皆さんにその極意を……。

杉浦大悟

僕らも『ドキュメント72時間』みたいな、かっこいい取材を受けたかったですよ。毎月20本近い企画を編成に提案しては、ボツにされているチームとして紹介されるのではなく。

田中涼太

ショムニみたいな(笑)。

杉浦

でも、それぞれがこれまでいい番組をたくさん立ち上げてきたスタッフたちです。「新領域」は簡単に言えば新しい番組の立ち上げを行っている部署。その中に、ゴールデンプライム帯のレギュラー番組に特化したチームが24年の8月にできました。

私が専任部長を務め、田中さんや三日市さんのようなプロデューサーが4名、ほかにディレクターが7名で合計12名ほど。とにかくひたすら提案を書くのが仕事です。面白そうなことを取材して、企画を書く。例えば三日市さんは毎日1本企画を書く人として知られています。

三日市篤史

書くだけだったら……。

杉浦

そしてひと月に1回ほど、みんなで企画を持ち寄り、精査したものを編成に提案する。しかし通らない。9割は通らない。20本持っていって1本も通らないこともあります。

三日市

1時間で20本。エレベーターピッチのようなものです。

田中

かなり準備をした提案が、5秒で却下されることもあります。

杉浦

それでもこれまでに7本が実際に番組として放送されました。一番新しいのは25年8月19日に放送される『世界ない!ない!アンケート』。日本のテレビや雑誌などのメディアが行ったことがないような海外の土地を、現地の方へのアンケート取材を基に訪ねてみるという番組です。アンケート×紀行という新しい掛け合わせで作りました。

田中

自分が企画したのは『被告人』シリーズ。名古屋局に勤務時代に制作した『被告人 名古屋』が最初です。市町村を擬人化して、名古屋が被告人、訴えるのは周囲の市町村、法廷ドラマの中で地域の情報も楽しく知れるという番組でした。

三日市

あの番組はドラマにしたところが大きなブレイクスルーですよね。どうやって思いついたんですか。

田中

自分は気乗りしない仕事を振られそうなときに、代わりにやりたい仕事を自分で作らないと!と追い込まれて思いついたりもします(笑)。『被告人 名古屋』は、当時、名古屋の北にある小牧市を訪れる機会があり、「名古屋コーチン発祥の地 小牧」と刻まれたモニュメントを見かけて、面白いなと。そんな話題がいくつか集まってきて、これは番組にできると思いました。

『虎に翼』にも使われた名古屋市市政資料館を個人的に訪ねたときに何かのロケで使えたらいいなと思っていたので、それが法廷ドラマという発想にも繋がりました。

三日市

自分は『天下一運動会』という番組を企画しました。運動会って、基本的には戦略を立てずにぶっつけ本番で挑むものだと思いますが、この番組では玉入れや綱引きなどの競技を、戦略を立てたくなるルール設定にして、頭脳戦の要素のあるゲームショーにしました。編成が世界に向けて発信できる番組を求めていることもあり、運動会という日本ならではの要素で勝負した番組でした。

NHKプロデューサー・三日市篤史、NHK専任部長・杉浦大悟、NHKプロデューサー・田中涼太
左から/NHKプロデューサー・三日市篤史、NHK専任部長・杉浦大悟、NHKプロデューサー・田中涼太。

斬新な企画を生み出すプロデューサーの頭の中

杉浦

実際の企画書は中身まではお見せできないんですが……A4で3枚くらいで、番組の趣旨やキャスティング、予算の規模などをまとめています。編成からよく言われるのは「新しいフォーマット」「見たことがない演出」「新鮮な切り口」。しかもそれを毎週放送するために最低でも30本は持続できること、です。でも、テレビの歴史もこれだけ長い中で、なかなか難しい。

田中

自分は普段から、気になったことをとにかくメモしています。例えば……「合法的に壊す映像」。何かを壊す映像だけを延々と観ていたいなと。「川いい(かわいい)ね」。これは川の番組を作れないかと思い、タイトルだけで止まりました(笑)。

三日市

自分はビンゴが好きなので、常にビンゴとの掛け合わせで考えています。あとは日常のことに1、2割増しで感動するようにしている。娘の高校の校長先生のスピーチが上手すぎるとか。コンポートってこんなに簡単に作れておいしいんだとか。

杉浦

歩いているときもアイデアが出やすいですよね。

三日市

僕も自転車は乗らないようにしています。歩きたいから。

――これまでに通らなかった企画で、どうしてもリベンジしたいものはありますか。

杉浦

全部です!(笑)

田中

言えば通りますか⁉

杉浦

通らなかった企画も形を変えていつか番組になるかもしれないので、具体的にはなかなか言えませんが、例えば公開収録の番組はいつかやってみたいですね。

三日市

自分は視聴者と時間や感情を共有する生放送をやってみたい。テレビだからできるようなものを。

田中

自分は高齢者の恋愛リアリティショーをやりたいとずっと提案していて、Netflixで『あいの里』がスタートするずっと前から……。地域の魅力や人生ドキュメントの要素を合わせればうまくできるのでは……と思っているのですが、まだ実現には至っていません。

杉浦

我々は今番組開発に特化したチームにいますが、今回お話ししたようなことは、NHKのプロデューサーは全員考えているはずです。

三日市

ボツになっても書き続けるということを託されている部署ですから、ありがたいことです。

杉浦

あ、会社に媚びたね!

三日市

媚びて企画が通るなら、苦労しません……(泣)。

このチームが1年間に企画した番組

NHK番組『○○で一番面白い話』
『○○で一番面白い話』  総合/2025年1月26日に『レギュラー番組への道』内で初回放送/ある地域の「超ローカルな面白い話」を集めた架空の配信サイト「Omoshiro」をゲストが楽しむ。第1弾は「茨城県・牛久市」、第2弾は「東京都・東村山市」。
NHK番組『NOフカシTV』
『NOフカシTV』  総合/2025年1月26日に『ドキュメント20min.』内で放送/見ることができない、不可視(=フカシ)にNOを突きつけ、未知の世界の映像化に最新技術で挑戦。深海1,000mに暮らすカニや、ボウリングのピン目線で見る球など。
NHK番組『擬人化ドラマ 被告人パンダ』
『擬人化ドラマ 被告人パンダ』  総合/2025年3月23日に『レギュラー番組への道』内で放送/ドラマ×情報バラエティという新感覚の番組。動物たちを擬人化し、人気者のパンダをライオンやゾウが訴える法廷ドラマ仕立てで、動物の特徴や生態が紹介されていく。
NHK番組『天下一運動会』
『天下一運動会』  総合/2025年4月13日に『レギュラー番組への道』内で放送/武井壮率いる赤組と中田花奈率いる白組がルールにひねりが加えられた「玉入れ」と「リレー」で対決。運動や頭脳のスペシャリストたちはどんな作戦で競技に挑むのか。
NHK番組『フェイククイズ アリエル?』
『フェイククイズ アリエル?』  総合/2025年4月29日放送/NHKの最新テクノロジーと美術制作力を駆使して、新たに撮影した映像で1985年のトレンディドラマを本気で再現。そこに入れ込まれた「フェイク」を知識や推理で見破っていくクイズ番組。
NHK番組『マップタイムトラベル』
『マップタイムトラベル』  総合/2025年4月30日放送/地図を遡ることで地理の謎に迫る。第1弾のテーマは「山手線」。ARの立体地図や高さ16mの巨大地図を駆使して、山手線が縦長の理由や名前の由来などを、縄文時代まで遡りながら解き明かす。
NHK番組『スルー・ザ・ミラー ~え、そう思ってたの⁉~』
『スルー・ザ・ミラー 〜え、そう思ってたの⁉〜』  総合/2025年6月15日に『レギュラー番組への道』内で放送/マジックミラーが置かれた部屋に案内された杉浦太陽。鏡の向こうで杉浦がいるとは知らない知人たちが本音を語っていく。
NHK番組『世界ない!ない!アンケート』
『世界ない!ない!アンケート』  総合/2025年8月19日放送予定/住民たちへのアンケートだけを頼りに、日本のガイドブックやテレビが取り上げていない海外の場所を訪ねる。第1弾の舞台はセルビアの小さな村。田中プロデューサーもセルビアに行ってロケを敢行。
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