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ブルータス時計ブランド学 Vol.91〈ブレゲ〉の「トラディション」

  • 2026.10.11
ブルータス時計ブランド学 Vol.91〈ブレゲ〉の「トラディション」

〈ブレゲ〉の「トラディション」とは

初代考案のヘリテージを現代に色濃く受け継ぐ

王侯貴族や著名人の顧客が多かったアブラアン-ルイ・ブレゲはフランス革命の際、迫害を恐れ、故国スイスに逃れた。そして1795年にパリに戻った彼は、工房を再興する運営資金を調達するために翌年、価格の4分の1を前金制とする予約販売制度(スースクリプション)を考案。専用の時針だけが備わる、極めてシンプルで、それゆえ信頼性が高く量産にも向く懐中時計を製作した。

その「スースクリプション・ウォッチ」のムーブメントは、後に左右対称構造へと進化。1799年には、時分針が備わるオフセットダイヤルが与えられ、さらにケース背面に大きな時針をむき出しに設置して、明かりがない中でも針に触れることで時を知れる「モントレ・ア・タクト(触覚時計)」を生み出すに至った。

これらの懐中時計からインスピレーションを得て、2005年に誕生したのが「トラディション」である。オフセットダイヤルの下側、シンメトリーに構築されたムーブメントをあらわにした独創的なスタイルは、リリース当時、「ブレゲのアバンギャルド」と喧伝された。大胆でありながら、奇をてらったとは感じられないのは、メゾンのヘリテージをきっちりと受け継いでいるからだろう。

外装においても、初代から多くのシグネチャーデザインを継承している。細身の胴の先端近くにリングが備わるブレゲ針、流れるような筆致のブレゲ数字、19世紀当時と同じ仕組みの手動マシンで装飾を手彫りするギヨシェ、ケースサイドに溝を刻んだコインエッジなどなど。ムーブメントとデザインに、メゾンの伝統(tradition)が息づく。「トラディション」は、さまざまな機構的バリエーションも展開し、現在の〈ブレゲ〉を代表するコレクションへ成長を果たした。

トラディション 7037

アイコニックな“ブレゲ ブルー”に染まる

2006年に登場した自動巻きモデルの新装は、表面にあらわになったムーブメントの地板とブリッジ、そしてストラップにはブランドカラーであるブルーをまとわせた。オフセットダイヤルは、高温で焼成する伝統的なグラン・フーエナメル製。そこに配した針とアラビア書体のブレゲ数字は、いずれも初代考案の意匠を受け継ぐ。

また右下で時をカウントするテンプのブリッジには、やはり初代が発明した耐衝撃機構「パラシュート」を装備。ダイヤルの左側には、60秒をカウントするたびに0位置に瞬時に戻るレトログラードミニッツを配し、真下に備わるゼンマイを収めた香箱にはメゾンを象徴するギヨシェ彫りを施した。

38mm。自動巻き。18KWGケース。7,612,000円。

トラディション 7037
ケースバック側もブルーに染まる。ローターは、初代が発明した自動巻き機構「ペルペチュエル」で用いた錨型の分銅を模す。3時位置から上に伸びるパーツは、レトログラード機構を司るラックギア。
トラディション 7037
ダイヤルやさまざまなムーブメントのパーツが幾層にも重なり、豊かな立体感と奥行き感が創出された。ストラップは、テキスタイル調のラバー製。
トラディション 7037
ケースサイドに溝を連続させるコインエッジは、メゾンのシグネチャーの1つ。別名フルート装飾。初代ブレゲが18世紀後半から用い、当時は懐中時計を取り出す際の滑り止めとして機能していた。

Information

BREGUET / ブレゲ

創業:1775年
創業地:フランス パリ
HP:www.breguet.com/jp

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