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中村勘九郎さんインタビュー「人を惹きつける熱と華。江戸の風をまとう心意気」

  • 2026.10.7
Setsuo Sugiyama

ジャケット/114,400円(ワイズフォーメン/ヨウジヤマモト) シャツ/44,000円(ヨウジヤマモト プールオム/ヨウジヤマモト)

父の思いを継ぎ三役に挑む

江戸時代の芝居小屋にタイムスリップしたような熱気を味わえる「平成中村座」。その発端は、勘九郎さんの父、十八代目中村勘三郎さんが19歳のときに唐十郎さんのテント芝居を見て衝撃を受けたことでした。

「いつか、歌舞伎の原点のような賑わいのある小屋を」という思いを実現したのは2000年。45歳だった勘三郎さんは、「夢が建った」と喜んだそうです。

「父が遺してくれた大きな財産で、僕にとっても宝物です。歌舞伎は幅広いジャンルがあることも魅力の一つですが、平成中村座という空間は、時代物、世話物、舞踊、なんでも合うんです。4年前には、宮藤官九郎さん作の『唐茄子屋 不思議国之若旦那(とうなすや ふしぎのくにのわかだんな)』を上演し、新作にも合うことがわかり、もう無敵の劇場だなと思いました(笑)」

今回も胸が躍る演目が並ぶなか、勘九郎さんは第一部で『仮名手本忠臣蔵』「九段目」の大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)を初役で勤めます。

「父はNHK大河ドラマ『元禄繚乱』で大石内蔵助(おおいしくらのすけ)を演じていますが、中村屋で大星由良之助を勤めるのは祖父(十七代目勘三郎)以来です。『忠臣蔵』は08年の平成中村座で、A~Dの4つのプログラムを通して全段上演し、いろいろな役を経験させていただいた思い出が強く残っています。ですので、初めての大星を平成中村座でやらせていただけることは嬉しいです。『四段目』の大星への憧れもありますし、その威厳や家老としての風格をもって勤めたいと思います」

続いて、息子の勘太郎さんと長三郎さんとの親子三人では初の『連獅子(れんじし)』です。

長男の勘太郎さんは急に背が伸び、勘九郎さんの背丈を超えました。「このとき、僕と踊っていた父の気持ちが今回わかるかもしれません(笑)」と勘九郎さん。 2007年新橋演舞場。十八代目勘三郎と勘九郎・七之助兄弟による『連獅子』 SHOCHIKU Co.,Ltd.

「平成中村座での『連獅子』も初めてなんです。舞台と客席が密接した空間で三人一緒に毛を振ったらどんなことになるのか、僕も楽しみです。父との『連獅子』を通して、仔獅子の精神はもちろん、先輩と踊るときの礼儀、踊りの基礎、そういうものを教わりました。息子たちにも同じように伝えていきたいです。

不思議なのですが、父と踊っていると“あ、今日はお父さん、いつもと違ってここでは足を踏まないだろうな”と感覚的に伝わり、そのあとで“ここだ”と思ったところで踏むと、弟(七之助)も含めて三人がぴったり揃うんですよ。DNAを感じるというより、もう気持ち悪い域です(笑)」

そして、第二部で挑むのが『助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)』の助六。「自分が演じるとは思っていなかったお役」と明かします。心が変わったのは、勘三郎さんの七回忌追善が行われた18年の歌舞伎座。

「松嶋屋のおじさま(片岡仁左衛門)の助六に白酒売(しろざけうり)で出させていただき、その格好よさ、台詞術、華やかな雰囲気を肌で感じ、挑戦したいと思い始めました」助六では、仁左衛門さんからの教えを「忠実に表現しなければいけない」と真剣な眼差し。

「歌舞伎の教えはある種の伝言ゲームです。だからこそ、初役のときに習った教えは絶対に大切にしないといけません。時代とともに変わっていくこともありますし、回を重ねるごとに自分の色が出てくることも歌舞伎の面白さですが、最初に教わった根本を正しく後輩へ伝えていくことは、教わった側の使命です。

松嶋屋のおじさまは、80歳を超えたいまも歌舞伎の前線で戦われています。そのおじさまに教えていただけるのだから、命がけで吸収したいです。しかもおじさまは十月の歌舞伎座に出演されているのに、千穐楽を終えたあとの三日間、白酒売に出てくださる。こんなにありがたいことはありません。きっと父が悔しがっています。父は60歳のときに平成中村座で助六をやりたいと言っていましたから。僕の肉体を通して、その夢を実現できるように精一杯勤めたいと思っています」

[今月の裏話]

人を楽しませる、 夢の国と夢の劇場

およそ25年ぶりにカリフォルニアのディズニーランドを訪れたという勘九郎さん。そこであらためて感じたのは、歌舞伎との共通点。

「ウォルト・ディズニーのみんなを楽しませたいという精神やイマジネーションの力は、平成中村座に通じますし、“歌舞伎だな”と思います。また、エンターテインメントの世界に限らず、日常にイマジネーションがあるだけで、どれだけ人間が豊かになるか、その大切さも実感しました」

そして、ミッキーマウスに重なったのはお父様の姿。

「ミッキーがお客さまと写真を撮ったりするグリーティング姿は、楽屋の出待ちをしてくださっているファンの方に笑顔で歩み寄っていく父とそっくりなんです(笑)。ショーでもミッキーマウスが登場すると、圧倒的に盛り上がりますしね。二人ともスーパースター。父もディズニーランドが好きで、一緒に行くと普段の3倍速で歩いていくので、ついていくのに必死でした。

ディズニーランドは働いているキャストの方々のパワーもすごい。平成中村座も負けずに、出演者とスタッフが一丸となってお客さまをワクワクドキドキさせたいと思っています!」

カリフォルニアのディズニーランドでご家族と。僕も父のように3倍速で歩いていたら、振り向くと家族は誰もいなくて……。必死についていこ うと思わせる力は僕にはまだなかったです(笑)。「平成中村座には隠れミッキーならぬ、 “隠れ勘三郎”がいますので、 皆さん、探してください !」 Nakamura Kankuro

なかむらかんくろう〇1981年生まれ。十八代目中村勘三郎の長男。86年1月歌舞伎座『盛綱陣屋』の小三郎で初お目見得。87年1月歌舞伎座『門出二人桃太郎』兄の桃太郎で二代目中村勘太郎を名乗り初舞台。2012年2月新橋演舞場『土蜘』土蜘の精、『春興鏡獅子』小姓弥生後に獅子の精などで六代目中村勘九郎を襲名。翌3月は平成中村座で襲名披露を行った。

[今月のおすすめ]

【平成中村座】十月大歌舞伎

幕開きは、成駒屋三兄弟の襲名時に作られた舞踊『初帆上成駒宝船』。第一部は『忠臣蔵』「九段目」と『連獅子』が続きます。第二部は勘太郎さんが初役で白井権八に挑む『鈴ヶ森』と『助六』。助六と揚巻を兄弟で勤めるのは戦後初。「誇らしく思っています。平成中村座から花川戸は目と鼻の先。土地や小屋のもつ力を借りて臨みます」と勘九郎さん。

HEARST

2026年10月1日(木)~25日(日)(第一部 11時〜、第二部 16時〜)

会場/浅草寺境内 本堂裏 仮設劇場

演目/
【第一部】
『初帆上成駒宝船』
『仮名手本忠臣蔵』九段目 山科閑居
『連獅子』
【第二部】
『御存 鈴ヶ森』
『助六曲輪初花桜』

出演/中村勘九郎、中村七之助、中村橋之助、
中村福之助、中村歌之助、中村勘太郎、中村長三郎、
中村芝翫、中村扇雀、中村鴈治郎、
片岡仁左衛門(23~25日のみの出演)ほか

料金/11,000円~36,000円

問い合わせ/チケットホン松竹 tel.0570-000-489(10時〜17時)

公演詳細はこちら

撮影=杉山節夫 ヘア&メイク=宮藤 誠、中村優希子(ともにFeliz Hair) スタイリング=木村厚志 取材・文=大木夏子 協力=松竹 編集=本田リサ(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年11月号より

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