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英王室メンバーのみが着用できるチェック柄、「バルモラル・タータン」の歴史

  • 2026.10.6
Tim Graham / Getty Images

イギリスのロイヤルファミリーは毎年8月に休暇をとり、スコットランドのアバディーンシャーにあるバルモラル城に滞在します。その間、チャールズ国王が着用することが多いのは、「バルモラル・タータン」のキルトです。グラナイト(花崗岩)をイメージした色だというグレーが基調のタータンは、100年近く前から「イギリスの君主が所有する柄」とされており、着用が認められるのはロイヤルファミリーと、王室が使用を認めた人だけに限られています。

スコットランドの伝統的な装いといえば、タータンのキルトを挙げる人が多いでしょう。ですが、知名度の高いその民族衣装には、ほとんどの人にとって「選んではいけない柄」があるのです。

「バルモラル・タータン」のキルトを身につけ、ダイアナ妃とともにスコットランドのスポーツイベントに出席したチャールズ皇太子(当時)、1982年撮影 John Shelley Collection/Avalon / Getty Images

ショートブレッドの缶からブランケットまで、至るところで目にする赤が基調の「ロイヤル・スチュワート・タータン」とは異なり、バルモラル・タータンは購入したり、商業目的で複製したりすることができない柄になっています。ロイヤルファミリーのメンバー以外に着用が認められているのは、バルモラルで君主に仕えるバグパイプ奏者だけです。

この規則が知られるようになったのは、国王ジョージ6世が即位したすぐ後の1937年。衣料品を取り扱うスコットランドのある企業が王室に問い合わせたところ、次のような回答を得たことが明らかになりました。

「(このタータンは)国王陛下と王室が個人的、私的に所有するものであり、いかなる状況においても、他者による着用や購入は認められません。したがって、一般的な販売を目的として製造することも、許可することはできません」

国王エドワード8世(中央)と弟のヨーク公爵(右、後の国王ジョージ6世)、1936年撮影 Print Collector / Getty Images

バルモラル・タータンに特徴的なのは、柄の配置と色使いです。歴史家のピーター・マクドナルド氏はその色調について、「異なる比率の白と黒の糸を用いて作ったグレーの撚糸を使い、バルモラル城の近くを流れるディー川の周辺地域、ロイヤル・ディーサイドに見られる花崗岩の色を再現したものです」と説明しています。

7歳の誕生日にキルトを着用したチャールズ皇太子(当時)、1955年撮影 Bettmann / Getty Images

バルモラル・タータンの起源は、1852年に妻のヴィクトリア女王とともにバルモラル城を購入したアルバート公のアイデアにあると言われています。アルバート公は1853年ごろ、夏の休暇でバルモラルに滞在中、灰色の花崗岩が描き出す風景から、そのパターンの着想を得たとされます。

ですが、スコットランド・タータン登記所によると、歴史家たちの研究から、この柄(またはそれによく似た柄)は、1850年にはすでに使われていたことが判明しています。ロイヤルコレクションに含まれる肖像画のなかにも、それを裏付ける作品があります。

エリザベス女王、2014年撮影 WPA Pool / Getty Images

とはいえ、ヴィクトリア女王とアルバート公が初めてバルモラルを訪れたのは、1848年でした。アルバート公はそのときに、後にこのデザインを生み出すことにつながるインスピレーションを得ていたのかもしれません。

ただ、バルモラル・タータンの衣服をまとったロイヤルの姿が最初に記録されたのは、19世紀後半になってからのことです。ドイツの画家カール・ハーグが1853年に発表した肖像画に描かれたエドワード王子とアルフレッド王子(ヴィクトリア女王夫妻の息子たち)が、バルモラル・タータンのキルトを着用しています。

ヴィクトリア女王もまた、スコットランド滞在中には、ドレスの上にこのバルモラル・タータンの生地をショールのように羽織るなどして愛用していました。

フィリップ殿下、2002年撮影 Tim Graham / Getty Images

いっぽう、マクドナルド氏によると、1936年にバルモラル・タータンの色調をより明るいトーンに変更したうえでそのデザインを正式に登録し、同時にバルモラル城のバグパイプ奏者に着用を認めることとしたのは、国王エドワード8世だったといいます。

コーンウォール公爵夫妻(当時)、2006年撮影 JEFF J MITCHELL / Getty Images

現在、キルトと聞いて最初に思い浮かべるロイヤルといえば、それはチャールズ国王でしょう。幼いころからスコットランドで行事に出席するときには、キルトを着用してきました。そして、その柄の名の由来となったバルモラルで過ごす夏の休暇中は、今も「バルモラル・タータン」を愛用しています。

From TOWN&COUNTRY

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