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「かわいいね」の一言だけが返ってきた→愛犬の写真に込めた俺の「会いたい」は、届いていなかった?

  • 2026.10.7
ハウコレ

ドアを開けた瞬間、こいつは俺より先に彼女のもとへ駆けていきました。足もとに落とされたのは、この1か月、寝床から一度も離さなかったものです。

エレベーターの止まる音がするたびに、愛犬は玄関まで走っていき、ドアの前に座り込むようになりました。彼女が仕事で来られなくなって、1か月。その小さな背中を見ているのは、俺だけでした。

ソファの下から出てきたもの

付き合って2年になる彼女は、以前は休みのたびにこの部屋へ来ていました。初めて来た日に持ってきてくれたのが、黄色いアヒルのおもちゃです。中の鳴き笛が鳴ると、こいつは今でも耳を立てます。

掃除機をかけていると、ソファの下からピンク色の靴下が片方だけ出てきました。彼女が前に脱いだまま、忘れていったものです。つまみ上げた途端にこいつが飛びついてきて、口から離そうとしません。アヒルには見向きもせず、靴下をくわえたまま玄関のほうへ運んでいきました。

そのままでは飲み込みかねないので、靴下を固く結んで、おもちゃ代わりにしました。それからずっと、こいつの寝床にはピンク色のおもちゃの結び目があります。

写真だけで伝わると思っていた

ラグの上で結び目をくわえて寝そべる姿を撮って、彼女に送りました。添えたのは「最近これがお気に入り」だけです。

見れば分かると思っていました。自分の靴下だと気づいてくれれば、こいつが会いたがっていることも伝わる。本当は、会いたいのは俺も同じでした。ただ、仕事が山場だと聞いていたので、言葉にすることはできませんでした。俺が言えば、彼女は無理をしてでも来ようとするはずです。それで困らせるのが怖くて、犬の写真に全部を任せていました。

返ってきたのは「かわいいね」の一言でした。気づかなかったのか、気づいても返す余裕がないのか。どちらでも構わないふりをして、スマホをソファに伏せました。

しばらくして届いたのは、「次の休み、行ってもいい?」というメッセージでした。「待ってる」と打って、すぐに送りました。その下に続けたい言葉はいくつかあったのに、どれも打たないまま画面を閉じました。

結び目を拾い上げた彼女

チャイムが鳴ると、こいつは俺より先に廊下へ飛び出していきました。ドアを開けると、彼女の足もとに靴下を落として、尻尾を振っています。

拾い上げた彼女は、裏返した靴下の結び目の先をしばらく見ていました。

「このおもちゃ、どうしたの?」

声がいつもより少し硬いことに、そこで気づきました。

「それ、君の靴下。ソファの下から出てきてから、こいつが離さなくて」

アヒルはソファの隅で寝てるよ、と付け足すと、彼女は靴下を握ったまま顔を上げました。

「写真のとき、言ってくれればよかったのに」

「忙しそうだったから、会いたいって言いにくくて」

口に出してみると、こいつのことではなく、自分のことを言っていました。彼女は黙ってしゃがみ込み、結び目をこいつの前に差し出します。あの写真を受け取ってから今日まで、彼女が何を考えていたのかは、聞けないままです。

そして...

彼女が帰ったあと、玄関の横のカレンダーに、次に来る日の印をつけました。こいつは今日も、エレベーターの音がするたびに玄関へ走っていきます。印をつけた日は、まだ少し先です。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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