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「私のせいです」と繰り返す入社1年目の後輩に、私がかけたのは3年前に上司からもらった言葉だった

  • 2026.10.7
ハウコレ

会議を休んだ理由は打ちかけて消し、送ったのは短い謝罪だけ。返ってきた注意の文面に、3年前に上司から言われた言葉を思い出していました。

後輩のデスクから、同じボタンを何度もクリックする音が続いていました。のぞき込んだ画面の中で、取引先に送るはずのフォルダは空になっていました。定例会議が始まるまで、あとわずか。

「私のせいです」と繰り返す後輩に

消えたのは、その日のうちに取引先へ届ける約束のデータです。入社1年目の後輩が、整理の途中で誤って削除してしまいました。

「私のせいです」

後輩は同じ言葉を繰り返し、マウスから手を離そうとしませんでした。

「誰のせいかは後でいい。まず直そう」

そう口にしてから、それがもともと自分の言葉ではないことを思い出しました。

履歴をたどって1つずつ戻すしかなく、会議には間に合いそうにありません。

「でも、先輩が会議に出られなかったら……」

「大丈夫。こういうときは、まず直すのが先だから」

後輩まで席を外せば、チームの報告が1つ抜けてしまう。そう考えて後輩を会議へ送り出し、自分だけが残りました。

3年前に上司がくれた言葉

取引先への送信を終えたのは、会議室から戻ってくる足音が聞こえ始めた頃でした。上司へのメッセージを開き、事情を打ちかけては消しました。理由を書けば、後輩の失敗を報告する文になってしまいます。送ったのは「すみません」だけでした。

返ってきた2通のうち、「何かあったなら、まずどうするか考えるのが先でしょ」という文面を、2度読み返しました。

入社1年目のとき、見積書の数字を間違えたまま取引先へ送ってしまったことがあります。上司の席で「私のせいです」と頭を下げると、上司は責めるより先にこう言いました。

「誰のせいかは後でいいよ。まず直そう」

一緒に取引先へ電話をかけ、部長への報告でも「私の確認不足もあったので」と、私一人の失敗にしなかった上司。きっと本人は、あの日のことを覚えていないのでしょう。

「はい。すみません」

「でも、間に合ってよかったです」

取引先への送信が間に合ったことだけは、伝えておきたかったのです。

叱られても、後輩の名前は出さなかった

席に戻ってきた後輩には、「会議のことは気にしなくていいから」とだけ伝えました。会議に出ないと決めたのは自分で、後輩の名前を出せば、その判断まで後輩に背負わせてしまう気がしたからです。

1週間がたった日、上司が私のデスクまで来ました。

「さっき、あの日のこと聞いたよ。理由も聞かずに注意して、ごめんなさい」

頭を下げた上司を見て、椅子から立ち上がり首を横に振りました。

「いえ、会議に出なかったのは事実なので」

「事情があったなら、なんで言わなかったの?」

「会議に出ないと決めたのは、私なので」

後輩が話したのだと、そこで分かりました。後輩に渡したあの言葉が上司からもらったものだとは言わないまま、パソコンの画面に向き直りました。

そして...

次の定例会議の前、グループチャットに後輩の「すみません、会議に少し遅れます」が届き、すぐ下に上司の「了解。何かあった?」が並びました。

画面を閉じて、後輩と書いた復元手順のメモを、共有フォルダの1番上に置き直しました。あの言葉を最初にくれたのが誰なのか、上司にはまだ話していません。

(20代女性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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