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「仕事より俺を優先しろ」と送ってきた彼を、私は1週間放置した

  • 2026.10.4
ハウコレ

ドアノブにかかっていた保冷バッグと、「ありがとう」から先が続かなかった私の返信。優先されなかった彼が怒っているのか、諦めたのか、答えの想像ばかりが膨らんでいきました。

頬に当たっていたのはキーボードでした。ビデオ通話の画面はいつの間にか終了していて、その下に彼からの1行だけが残っていました。展示会まで、あと5日という夜のことです。

「仕事より俺を優先しろ」の1行

「仕事より俺を優先しろ」。2年付き合ってきて、こんな言い方をされたのは初めてでした。通話の途中で寝落ちした自覚はあります。それでも、担当する展示会の準備で、この1週間は自分の食事すら後回しにしていた時期。画面を見つめたまま、返信を打っては消しました。結局送ったのは「今週は展示会の準備で無理。終わったらちゃんと話そう」。既読はすぐについたのに、返事はありませんでした。彼は料理人で、仕事終わりに必ず声だけでも聞かせてくれる人。その彼が、優先という言葉を選んだこと。翌日からの私は、彼のアイコンが光るたびに画面を伏せるようになっていました。

ドアノブにかかっていた保冷バッグ

3日目、終電で帰ると、玄関のドアノブに見覚えのない保冷バッグがかかっていました。中にはラップに包まれたおにぎりが3つと、まかないの煮物。チャットを開くと「ドアノブに袋かけといた」の一言だけ。「ありがとう。でも今は本当に余裕がないの」と返し、既読がつくのを見届けて、スマホを裏返しました。うれしくなかったわけではありません。ただ、おにぎりを食べながら考えていたのは、これも優先しろの続きなのかということでした。食べさせて、会わせて、自分の言うことを聞かせたいのだろう。そう決めつけたまま、レンジの音だけが部屋に響いていました。

展示会が終わった日

会場の撤収を終えて、ブースの写真を1枚だけ送りました。返事は「お疲れさま」だけ。それ以上は何もなく、私も何も足しませんでした。同僚とのねぎらいの食事を断り、まっすぐ自宅へ。優先されなかった彼が怒っているのか、それとも諦めたのか。改札を抜けるまで、答えを想像しては打ち消していました。玄関の前で足を止めたのは、また同じ保冷バッグがかかっていたからです。今度は中身の上に、メモ用紙が1枚のっていました。

そして...

「俺を優先しろって言い方は間違えた。プライベートを優先しろって言いたかった。まずは寝て」。彼の字でした。私が寝落ちした画面の向こうで、彼が何を見ていたのか。その時初めて、聞いてみたくなりました。「明日、店が終わったら会える?」と送ると、既読より先に着信が鳴りました。保冷バッグは洗って、彼に返すつもりです。ただし、今度は私が何か詰めてから。

(20代女性・イベント運営)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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