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席次表で私を育てた人の欄だけが空白→プランナーに詰め寄った私が、伯母の台所で知ったこと

  • 2026.10.4
ハウコレ

「本人って、伯母がですか」。打ち合わせ室で聞き返した私に、担当者は理由を教えてくれませんでした。その足で向かった伯母の家の台所で、私は自分が呼んできた名前を思い出します。

式場から届いた席次表の校正紙を、テーブルの上で2回めくり直しました。新婦父、新婦母と印字が並ぶ列で、伯母の名前の上だけが白く空いています。5歳から高校を出るまで、私を育ててくれた人の欄でした。

「育ての親」と伝えたはずでした

父の海外赴任で両親が国を離れていたあいだ、私を預かってくれたのは母の姉でした。学校の面談も、運動会の弁当も、熱を出した日の迎えも、全部おばちゃんが来てくれた。初回の打ち合わせで担当のプランナーにもそう説明して、続柄の欄は育ての親だと分かる書き方にしてほしいと頼んであったのです。名簿を作った日には、おばちゃんにも一覧を見せています。

なのに欄は白いまま。同じ列に並ぶ夫の親族には、ひとり残らず続柄が入っています。親戚の1人、という扱いに見えました。披露宴でこの1枚を開いた人は、両親のあとに続柄のない名前を読むことになる。その場で写真を撮り、担当者へ送ります。

「伯母の続柄が入っていません。修正をお願いします」

返ってきたのは短い返事だけでした。

「こちらは最終のお打ち合わせでご説明させてください」

修正します、の一言がない。画面を伏せて、テーブルに置きました。

「ご本人からのご希望です」

打ち合わせ室に入るなり、校正紙を開いて空欄を指しました。

「伯母の続柄が抜けています」

「そちらは、ご本人からのご希望です」

担当者は席次表から目を上げずに言いました。

「打ち合わせで、育ての親と書きたいって伝えましたよね」

「はい。承っております」

「本人って、伯母がですか」

「申し訳ありません。事情は、伯母さまご自身からお伝えいただくお約束になっておりまして」

それ以上は、何を聞いても頭を下げられるだけでした。頼んだ本人が消したのなら、怒る相手を間違えている。そう分かっても、どうして私に黙っていたのかという方へ、矛先が移っていくだけでした。校正紙を鞄に戻し、そのまま伯母の家へ向かいました。

台所で聞いた、空けておいた理由

台所で夕飯の支度をしていたおばちゃんは、校正紙を見せると火を止めました。

「空けておいてって、私が頼んだの」

「なんで。育ての親って書きたかったのに」

「伯母と書けば、あなたを育てた日のことはどこにも残らない。母と書けば、あなたのお母さんから取ることになる。だから、あなたが呼ぶ名前で呼ばれるまで、空けておきたかったの」

私が呼んできた名前。おばちゃん、としか呼んでこなかった。母でも伯母でもない呼び方を20年以上そのまま使い続けて、それが何にあたるのか、一度も決めてこなかったのです。鍋の湯気の向こうで、おばちゃんは校正紙の空欄を指でなでていました。

「そこは、あなたが埋めて」

返事をしないまま、私は鍋の火をつけ直しました。

そして...

当日の謝辞で、私は原稿にない一言を足しました。

「席次表の空いたところは、私がずっと呼んできた名前のための場所です。おばちゃん、ありがとう」

親族席のおばちゃんは、テーブルの席次表に手のひらを重ねたまま、頭を下げていました。空欄のまま印刷した1枚を、今も引き出しに入れています。何も書かれていないのに、そこだけ字が濃く見える1枚です。引き出しから出すたびに、その空欄へ手のひらを重ねてみます。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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