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免許もないのに「ブレーキ早すぎない?」と言い続けた私→山道で対向車が現れ、言いかけた言葉を飲み込んだ

  • 2026.10.3
ハウコレ

「行けるでしょ」と言いかけて、私は止まりました。自分では1度も踏んだことのないペダルの話を、ここまでずっと続けていたことに気づいたからです。

出発して最初の信号で、友人のブレーキが早いと感じた瞬間、私は笑っていました。免許は持っていません。それでも助手席の経験だけは長くて、運転のことは分かっているつもりだったのです。

免許はないけれど、運転は分かっているつもりだった

父の車、元恋人の車、先輩の車。助手席には数えきれないほど乗ってきました。

「ペーパードライバーなのに大丈夫?」

「大丈夫だよ。普通に走るだけだから」

その「普通」が、物足りなく見えました。黄色信号で止まれば「ブレーキ早すぎない?」、右折で1台待てば「今の、行けたでしょ」、住宅街で「遅っ」。元恋人ならここは行っていた。父なら止まらなかった。そういう比較が、口から勝手に出ていました。信号待ちで隣の車が先に出れば窓の外を指して報告し、ダッシュボードを叩いて笑う。友人が「はいはい」と流すのを見て、まだ言える、と思っていたのです。

「行けるでしょ」と言いかけて止まった待避所

センターラインが消えて、道の両側が杉の斜面になっても、私の癖は止まりませんでした。

「そんなに減速する?」

「後ろ来たら迷惑じゃない?」

後ろに車がいないのは見えていました。それでも言った。友人は返事をせず、看板のたびに速度を落として、ハンドルを切る前にミラーを見ていました。

そのとき、前のカーブからワゴン車が出てきました。道は2台分ありません。友人はすぐにブレーキを踏んで、後ろを確かめてから言いました。

「ちょっと下がるね」

私は「行けるでしょ」と言いかけて、止まりました。どこへ行けるのか、自分でも分からなかったからです。友人はさっき通り過ぎた待避所まで、ゆっくり下がりました。私はそんな場所があったことにも気づいていませんでした。ワゴン車の運転手が手を上げて通り過ぎていくのを見ながら、私は膝の上のスマホを裏返しにしました。

父も元恋人も、きっと同じことをした

ここまでの1時間、私は何を言っていたのだろう。ブレーキが早い、行けたでしょ、遅い。全部、自分では1度も踏んだことのないペダルの話でした。父も元恋人も、たぶんこの道では友人と同じことをしたはずです。

それからは、口が開きませんでした。怖かったからではありません。看板で減速し、ミラーを見て、車間をあけて走る友人の横で、もう何を言っても、さっきまでの自分に返ってくる気がしたのです。

そして...

駐車場でサイドブレーキの音がしました。

「着いたよ」

うなずいて車を降り、自販機で缶コーヒーを2本買いました。1本を渡して、町を見下ろしながら言えたのは「帰りもよろしく」だけでした。何から謝ればいいのか、まだ整理がつかなかったのです。

帰りの山道で、私はひとことも口を出しませんでした。センターラインが戻り、市街地の最初の信号で止まったとき、やっと言えました。

「さっきまで、ごめん。あの待避所があったのも私、全然気づいてなかったのに。ずっと偉そうに言ってた」

友人は前を見たまま答えました。

「ほんとだよ」

「もう運転に口出ししないから許して」

いつもの口調に戻して、ダッシュボードを軽く叩きました。走り出した車の中で、この人の運転で来られてよかったと思いました。

謝りたかったのは、言いすぎたことだけではありません。分かったつもりで口を出していた自分が恥ずかしかった。そのことまでは、まだ言えていません。

(30代女性・販売職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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