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IHでも油は発火する 油の出火97件とNG5つ

  • 2026.10.2

揚げ物モードを使わない、少ない油や底の反った鍋で揚げる、加熱中にそばを離れる。IH(電磁調理器)の製品事故の記録388件をweboo編集部が1件ずつ読むと、使い方が原因とみられる162件のうち97件は鍋の油からの出火でした。天板の置きっぱなしやグリルの汚れを含むNG5つを、NITEや東京都などの呼びかけと合わせて紹介します。

寒くなると、鍋料理や揚げ物でIHクッキングヒーターを長く使う日が増えます。炎の出ない調理器ですが、熱しすぎた油は火がなくても燃え出します。
製品評価技術基盤機構(NITE)が公開している製品事故の記録から、品名が電磁調理器・IH調理器のもの388件を集め、weboo編集部で原因の書かれた部分を全件読みました。使い方が原因とみられる162件のうち、97件は揚げ物などで鍋の油から火が出た事故です。揚げ物モードを使っていない、油が少ない、鍋の底が反っている、加熱したまま離れた、といった条件が記録に繰り返し出てきます。使っていない天板の上で物が燃えた記録や、グリルの汚れから出火した記録もありました。
記録の中身を、NITE・東京都・消防局の呼びかけと照らし合わせ、IHでやりがちなNGを5つにまとめました。

IHの事故の記録388件 油からの出火は97件

使ったデータは、NITEが公開している製品事故の検索サービス「SAFE-Lite」の記録です。品名に電磁調理器・IH調理器とある記録(ビルトイン型・据置型・卓上型を含む)を対象にし、IH式の炊飯器、IH用の汚れ防止シートやなべは外し、品名が「電気こんろ」の記録は、調査結果からIHヒーター付きとわかるもの(3件)も含めて数えていません。1997年12月〜2025年12月に起きた388件です。
原因の結論から1件ずつ振り分けると、使い方が原因とみられるもの162件、原因がわからないか製品以外が原因とみられるもの152件、製品の不具合とみられるもの65件、長く使ったことによる劣化8件、製品と使い方の両方1件でした。
使い方162件の中では、揚げ物・炒め物などで鍋の油から出火した事故が97件と最も多く、天板に置いた物や鍋が熱せられた事故21件、グリルやオーブンの庫内から出火した事故20件が続きます。油の出火97件のうち66件は2014年までの記録で、最も多いのは2009年の13件です。2015年以降は31件でした。

この集計の読み方
・数えたのは、NITEが通知を受けて調べた製品事故のうち、SAFE-Liteの品名で拾えたものだけです。世の中のIHの事故の総数を表す数字ではありません
・どの原因に入れたかは編集部(weboo)が決めたもので、区分が「--」と空いている記録は、調査結果の最後の結論の言い回しを読んで振り分けています
・152件の多くは、焼損が激しい・製品を確認できないなどで、NITEが原因を特定できなかった記録です
・品名に「IH調理器」とだけある記録が多く、ビルトイン型か卓上型かは見分けられないものがあります
NITEは2009年7月の資料でも、2004〜2008年度に通知されたIHこんろの事故59件のうち18件が天ぷら油の発火で、その原因は、原因不明を除きすべて「誤使用や不注意」によるものだったとしていました。このあとのNG1〜5には、事故の記録に繰り返し出てきて、しかも国や自治体の資料が注意を呼びかけている使い方を選びました。並べた順番は件数とは関係がありません。

NG1|揚げ物を「揚げ物モード」以外のキーで揚げる

とんかつを少し揚げるだけだからと、いつもの「加熱」キーで油を温める。揚げ物モードのない左や中央のヒーターで揚げてしまう。
油の出火97件のうち48件は、揚げ物モード(揚げ物キー・揚げ物コース)を使わずに油を加熱していた記録です。加熱キーや手動コース、通常の加熱モードで揚げていたもののほか、揚げ物モードのないヒーターやラジエントヒーター側で揚げていた記録が含まれます。48件のうち26件は、油も少なかったと書かれていました。

見直すなら:揚げ物モードがある機種は必ずそのモード・そのヒーターで。
NITEは2025年9月の資料で、IHこんろには油の温度を一定に保ち、調理中の油が発火点(370度以上)に達しないようにする「揚げ物用の運転モード・コース」を持つ製品があると説明し、そのモードやコースがある製品では必ず使うよう呼びかけています。西宮市消防局も、揚げ物をするときは揚げ物モードを使うよう挙げています。
東京都が都内に住むIHの利用経験がある20歳以上の2,000人に聞いた調査(2022年10月)では、揚げ物コースがあると答えた1,109人のうち34.1%が揚げ物コースを使ったことがないと答えました。

NG2|少ない油や、底が反った鍋で揚げ物をする

油はもったいないので、小さな片手鍋やフライパンに底から1〜2cmだけ。長年使って底が少し反った鍋を、そのまま揚げ物に使う。
油の出火97件のうち、油が少なかったと書かれた記録は61件、付属以外・市販の鍋や底の反った鍋を使っていた記録は55件でした。後者のうち30件は、鍋底の反りやへこみ、凹凸がはっきり書かれています。揚げ物モードで加熱していたのに、少ない油や市販のフライパンで発火した記録もあります。
このほか、天板と鍋のあいだに市販の汚れ防止シートやカバーを敷いていたことが原因の一つとされた記録が6件、鍋底や天板の汚れが書かれた記録が6件と、件数は多くないもののありました。

見直すなら:油は取扱説明書の量を守り、底が平らな指定の鍋を使う。
NITEは2009年7月の資料で、鍋底に反りやたわみ、凹みがあると温度センサーが正確に働かず、油量が少ないと温度が急に上がってセンサーが正確な温度を測れないと説明しています。同じ資料の再現実験では、直径14cmの付属の平底の鍋に油600mlを入れて天ぷらモードで加熱すると油温は約200℃で保たれた一方、直径15cmの底に凹みがある鍋に油200mlでは、同じ天ぷらモードでも約6分で約360℃になり発火しました。
東京都も、指定の油量を守り、油が少ないと急な温度上昇で炎がなくても油から発火する恐れがあると書いています。鍋の種類や変形の状態によって温度を検知する機能が損なわれる可能性があるとして、適切な調理器具を使うよう求めました。

NG3|揚げ物の途中で「少しだけ」とそばを離れる

油が温まるまでの数分で洗濯物を取り込む。玄関のチャイムに出る。揚げ終わったあと、スイッチを切らずにテレビの前へ戻る。
油の出火97件のうち76件には、その場を離れた・目を離した・スイッチを切り忘れたと書かれています。約3分、約5分、約10分と、離れていた時間が短い記録も少なくありません。揚げ物のあと、残った油を凝固剤で固めるために温め直し、そのまま離れて出火した記録も4件ありました。

見直すなら:離れるなら加熱を止める。油の処理で温め直すときも同じ。
NITEは2009年の資料で、揚げ物の調理中はその場を離れないこと、離れるときはスイッチを必ず切ることを挙げています。東京都は、短い時間でも調理中は機器本体から離れず、やむを得ず離れる場合は調理を中断して機器を停止するよう助言しました。同じ調査では、調理中に本体のそばを離れることが「よくある」「たまにある」と答えた人が合わせて67.1%いました。
西宮市消防局は、廃油凝固剤を入れた使用済みの油を再加熱したまま離れて火災になった事例を紹介し、加熱中はその場を離れないよう呼びかけています。

NG4|使っていない天板に物を置きっぱなしにする

IHは平らで片づけやすいので、つい調味料のボトルや水切りかご、洗った鍋の置き場になりがちです。
記録を使い方以外の分類まで広げて読むと、天板に置いたままの物や鍋が熱せられた事故は42件ありました。このうち8件はIHの上に置いたカセットこんろが熱せられたもので(うち7件はボンベの破裂)、別の記事で詳しく扱っています。残る34件は、プラスチックの容器や紙パック、水切りかご、電気ポット、油の入った鍋などが熱せられた記録です。
34件のうち18件は、鍋がなくても熱くなるラジエントヒーター側で起きていました。外出中や就寝中、しばらくIHを使っていなかったときの記録が14件あり、室内でペットを飼っていたと書かれた記録も5件ありました(ペットがスイッチを入れたと考えられるとされたのは2件)。ただし20件は、NITEが原因を特定できなかった記録です。そのうち4件は、基板の腐食や部品の故障、内部への水の浸入で、意図せずヒーターに電気が流れたと推定されていますが、腐食や故障などが起きた原因は特定に至っていません。

見直すなら:トッププレートには調理器具以外を置かない(ラジエント側は特に)。
NITEは2025年9月の資料で、ラジエントヒーターはIHヒーターより高温になりやすく、鍋がなくても発熱するため、可燃物を放置しないよう特に注意が必要だとしています。IHヒーターの上でカセットボンベや缶詰などを誤って加熱すると破裂するおそれもあるとして、調理器具以外のものはトッププレートの上に置かないよう呼びかけました。
西宮市消防局も、ラジエントヒーターの上にチラシがあった状態でスイッチを押してしまい火災になった事例を挙げ、普段からIHの上や周りに燃えやすい物を置かないよう求めています。

NG5|グリルの受け皿の油をためたまま次も焼く

魚を焼いたあと、受け皿を洗うのは明日にして、そのまま次の日も焼く。受け皿に水を入れるタイプなのに、水を張り忘れる。
使い方に分類した記録の中で、グリル・ロースター・オーブンの庫内から出火した事故は20件でした(オーブン庫内の6件を含む)。そのうち17件は、受け皿や庫内に油や食品かすがたまったまま加熱したなど、手入れの不足が書かれています。購入後一度も庫内を手入れしていなかった、受け皿に水を入れていなかった(3件)、焼き網にアルミ箔を敷いて油がたまった、といった記録です。庫内で加熱したままその場を離れた・電源を切り忘れた記録も6件ありました。

見直すなら:グリルはこまめに掃除し、水を入れる受け皿には必ず水を。
NITEは2017年4月の資料で、IHこんろのグリルで手入れ不足のまま食品かすがたまった状態で使い、温度センサーが働く前に食品かすに火がついたとみられる事故を紹介しています。こんろの注意点としては、受け皿に水を入れる必要があるグリルは必ず水を入れて使うよう挙げ、水がないと受け皿にたまった油が過熱され、火が出ることがあると説明しました。2025年9月の資料でも、調理家電はこまめに掃除するよう求めています。
グリルや五徳の掃除に使える道具は、関連記事のダイソーのコンロ・換気扇掃除グッズもあわせて確認してください。

よくある質問

IHの汚れ防止シートは、揚げ物のときも敷いていい?

東京都の調査では、汚れ防止シートを使っている人は16.3%でした。都の試験では、揚げ物コースで加熱すると、試した3種類のシートすべてで機器のエラーが出て加熱されませんでした。一方、火力最大のコースで、熱が伝わりやすい多層鍋にマイカ(雲母)製のシートを組み合わせ、取扱説明書の最少量(0.22L)の油を加熱すると、9分45秒後に煙が多く出て、11分10秒後に380℃で発火しています。東京都は、汚れ防止シートを使う場合はIHクッキングヒーターとシートの両方の取扱説明書に従うよう求め、NITEも注意喚起のちらしで、反ったり変形したりした鍋や汚れ防止シートを使うと温度センサーが正しく働かないおそれがあると説明しています。

卓上IHでも事故の記録はある?

品名に卓上型とある記録は34件で、うち17件は製品の不具合とみられるもの、14件は原因がわからないか製品以外が原因とみられるものでした。使い方が原因とみられたのは3件で、そのうち2件は、卓上IHをガスこんろの上に置いて使っていて、誤ってガスこんろに火をつけ底が焼けたという記録です。

IHで温めた汁物が噴き出すことはある?

沸かした湯や汁物が急に噴き出してやけどをした「突沸」とみられる記録は、使い方以外に分類したものを含めて10件あり、5件は重傷でした。とろみのあるシチューをかき混ぜずにふたをして加熱した、ふたを止め金具で閉めたまま味噌汁を温めた、といった記録があります。NITEは突沸の注意喚起のちらしで、みそ汁やカレー・シチューなどとろみのある食品は火力を弱めにし、よくかき混ぜながら温めるよう呼びかけています。

鍋の油から火が出たら

NITEが2009年の資料に添えた消防機関の資料(抜粋)は、燃えている油に水や水分の多い野菜を入れると炎が急に大きくなって危険だとし、燃えている鍋を屋外へ運び出したり投げ捨てたりするのも、やけどなど二次的な災害を防ぐ点から好ましくないとしています。そのうえで、濡らして軽く絞ったバスタオルやシーツで鍋全体をすき間なく覆う方法(あわてると鍋をひっくり返すおそれがあると注意)や、消火器を使う方法を挙げています。西宮市消防局も、高温の油に水をかけると炎が急激に広がり油が飛び散って大変危険だとして、天ぷら油の火災に有効な住宅用消火器を備えるよう呼びかけています。

まとめ 揚げ物の前にモード・油の量・鍋を見直す

出典 www.nite.go.jp

IHでやりがちなNGと、見直したいことをまとめます。
・揚げ物を「揚げ物モード」以外のキーで揚げる → 揚げ物モードがある機種は必ずそのモード・そのヒーターで
・少ない油や、底が反った鍋で揚げ物をする → 油は取扱説明書の量を守り、底が平らな指定の鍋を使う
・揚げ物の途中で「少しだけ」とそばを離れる → 離れるなら加熱を止める。油の処理で温め直すときも同じ
・使っていない天板に物を置きっぱなしにする → トッププレートには調理器具以外を置かない(ラジエント側は特に)
・グリルの受け皿の油をためたまま次も焼く → グリルはこまめに掃除し、水を入れる受け皿には必ず水を
1997年12月〜2025年12月に起きたIHの事故の記録388件のうち、使い方が原因とみられる162件の6割近い97件が鍋の油からの出火でした。揚げ物を始める前に、ヒーターの揚げ物モード、油の量、鍋の底の3つを確かめ、使い終わった天板には何も置かない習慣をつけておきましょう。

数字の出どころ:2026年10月2日時点でNITE SAFE-Liteに載っていた記録をもとに、weboo編集部が1件ずつ数えました。NITEが発表した集計ではありません。揚げ物モードの有無、使える鍋、必要な油の量、汚れ防止シートを敷いてよいかは機種ごとの違いが大きい部分です。揚げ物の前に、お手元のIHの取扱説明書の該当ページを見ておきましょう。

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