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「信じてくれないなら無理」と送ってきた彼を、私は信じませんでした。

  • 2026.10.1
ハウコレ

返信は来ないまま時間だけが過ぎ、次に彼が現れたのは私の玄関先でした。差し出された封筒の中身を読んでも、私はすぐに言葉を発することができませんでした。

彼の部屋のテーブルに置かれたスマホが、短く光りました。浮かんだのは、「みほ」という知らない名前と「来週の件、お待ちしています」の1行。私は箸を止めないまま、見なかったことにしました。

見なかったことにした通知

付き合って1年半になる彼は、ここ数か月、休みの日の予定を教えてくれなくなっていました。「用事がある」「また今度」。聞けば答えてくれた人が、言葉を濁します。その変化に、私は理由をつけないようにしていました。理由をつけた瞬間、想像が1つの方向にしか進まない気がしたからです。あの通知を見た日も、私は普段どおりに食器を洗い、普段どおりに帰りました。帰りの電車で何度も彼とのトーク画面を開いては、閉じる。それを繰り返しているうちに、最寄り駅を乗り過ごしてしまいました。

「みほって誰」と打つまで

次の休みも、彼は「用事がある」とだけ言いました。その用事が終わったころを見計らって、私は自分の部屋からメッセージを送りました。「日曜、誰と会ってたの」。既読はすぐについたのに、返信までにはずいぶん間がありました。「友達。ごめん、また今度話す」。また今度。その言葉を何度目に受け取ったのか、数えるのをやめていました。私は打ち込みました。「みほって誰」。送信してから、消したくなりました。でも、消したところで彼はもう読んでいる。しばらくして届いたのは、1行だけでした。「信じてくれないなら無理」。

信じない、と決めるほうが楽だった

説明はありませんでした。誰なのかも、何の用事なのかも。あるのは、信じるか信じないかを私に委ねる1行だけ。私は画面を見つめたまま、返信を打てずにいました。信じるとは、何を信じることなのか。名前も知らない人との「来週の件」を疑わずにいられる自分を、私は思い描けませんでした。だから打ちました。「無理なら、それでいい」。送った直後に既読がつき、そのまま何も返ってきませんでした。翌日も、その次の日も。私は彼の名前をトーク一覧の下のほうへ押しやるように、ほかの友人との会話ばかり眺めて過ごしました。

そして...

彼が私の部屋のドアの前に立っていたのは、あの1行から10日ほど経った休みの日でした。手には白い封筒。「これ、渡したくて」。中に入っていたのは、聞いたことのない会社名の入った採用通知でした。日付は、私が「無理なら、それでいい」と送った翌週。彼は封筒を見つめたまま、「先に言えばよかった」と言いました。私は、それだけでは足りないと思いました。「疑ったこと、消えないよ」。そう言うと、彼は小さくうなずきました。信じなかった私が正しかったのか、今もわかりません。ただ、封筒を受け取った手を、私はすぐには下ろせずにいました。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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