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50代男性「1枚ずつ見てほしい」2000年代の愛車を査定→他店より約25万円低くても売却に踏み切ったワケ

  • 2026.10.28
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

車を売るとき、買取金額は大きな判断材料になります。長く乗ってきた車なら、それまでの整備や手入れについても知ってほしいと思う方がいるでしょう。

その経緯を伝える資料の一つが、点検整備記録簿です。車を見ただけでは分からない過去の整備を、書類からたどれることがあります。

中古車の買取・販売を担当していた頃、私は、この記録簿をきっかけに、他店より低い提示額でも売却先に選んでいただいたことがありました。お客様が持参されたのは、新車だった頃から残していた記録でした。

「1枚ずつ見てほしい」

査定したのは、50代前半の男性が所有する、2000年代の国産スポーツカーです。

カスタムにかけたパーツ代は、約200万円でした。お客様は、車とともに保管してきた記録簿を持参され、こう希望されました。

「1枚ずつ見てほしいんです」

私が記録簿を開くと、お客様はすぐ横で、読み進める様子を見守っていらっしゃいました。

最初は少なからず緊張し、書類をめくる手元を強く意識しました。しかし、新車時から積み重ねられてきた貴重な記録です。オーナーの愛車への思いをしっかりと受け止めたい、という気持ちが勝りました。

記録簿には、点検や整備の履歴が残っていました。パーツが変更されている箇所では、納品書の内容と実際の装着品を照合しました。こうした確認に、約2時間かかりました。

車の状態を確認する仕事では、いま目の前にある車を見ることが欠かせません。同時に、そこに至るまで、どのような手入れを受けてきたのかも知りたいところです。この車には、それを確かめるための書類が残されていました。

パーツにかけた費用が、そのまま買取金額に加わるわけではありません。約200万円という数字は、あくまでパーツ代です。納品書は、装着内容を確認する資料として見せていただきました。

お客様は、確認している間もそばにいらっしゃいました。読み始めの緊張も、書類と車を確かめていくうちに、少しずつほぐれていきました。

新車時からの記録も、変更したパーツの納品書も残っている。その1枚1枚を、売却を相談する日に持ってきてくださったのです。

車を大切にしていたと伺うことはありますが、このときは、残してきた書類からもその思いが伝わってきました。

古い記録にも、残しておく意味がある

点検整備記録簿は、道路運送車両法第49条に基づき、点検の結果や整備の概要などを記録して車に備えておく書類です。点検・整備の年月日や、そのときの走行距離なども記載されます。

一般的な自家用乗用車では、記載の日から2年間の保存が定められています。国土交通省は、維持管理に役立つことから、可能な限り長く保存することも勧めています。過去の整備を確認したり、消耗部品の交換時期を判断したりするために使えるからです。

保存が義務づけられている期間を過ぎても、記録に残された情報は、以前の整備を振り返る資料になります。今回、新車時からの書類を確認できたことにも、そうした意味がありました。

日本中古自動車販売協会連合会も、初度登録からの記録が残っていれば、車の品質についての情報が得られると説明しています。記録があるから必ず査定金額が上がる、という意味ではありませんが、車の経緯を確かめる裏付けになります。

売却を考えている方は、手元の記録簿や整備の納品書を、査定時に用意しておくとよいでしょう。いつ、どのような整備をしたのかを、担当者と同じ書類を見ながら説明できます。今回のようにパーツを変更している車では、保管している納品書も装着内容を伝える手掛かりになります。

約25万円の差があっても

お客様によれば、他店の提示額は当店より約25万円も高額だったといいます。それでも当店への売却を決断された理由は、「自分がどれだけ車を大切にしてきたかを理解してくれる人に任せたかったから」というものでした。すぐ横で見守っていたのも、そのことが気になっていたからだったそうです。

そのお話を聞いて、最初の「1枚ずつ見てほしい」というお願いの意味が分かりました。約25万円の差があっても、任せる相手として選んでくださったことを、うれしく思いました。

最後に、お客様からもう一つお願いがありました。

「次の人に、これも渡してください」

一緒に確認していた記録簿のことでした。新車時から残してきた記録を、車とともに、次の持ち主へ引き継いでほしいというお願いです。

私が辿っていたのは「過去の履歴」でしたが、お客様が見据えていたのは「その車に乗る次の誰か」だったのです。託された車と記録の重みを、改めて噛み締めた出来事でした。任せていただいたからには、車も、その記録も大切に扱おうと思いました。


参考:
点検整備の種類/点検整備記録簿 (国土交通省)
中古車購入のノウハウ (日本中古自動車販売協会連合会)


ライター:三枝 雄太
自動車アフターマーケットや自動車流通の分野で長年、販売・買取、店舗運営、接客、スタッフ育成などに携わる。カー用品や車のカスタムにも幅広く関わり、現場で培った経験をもとに、クルマに詳しくない人にも伝わりやすい言葉で、カーライフや懐かしい車文化を紹介している。


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