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「ここだけ塗れば…」は大きな間違い?元自動車メーカー担当が教える、車の傷をDIYで直してはいけない“意外な場所”

  • 2026.10.8
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

車に小さな擦り傷を見つけると、「ここだけ塗料を塗れば直せそう」と考えることもあるでしょう。

筆者はかつて大手自動車メーカーで、自動車の塗装ラインの構築に携わり、塗装面の品質検査も経験しました。そこで見てきたのは、車の塗装が単に「色を付ける作業」ではないということです。

塗る前には表面を整える工程があり、塗装後には乾燥が必要です。完成した塗装面も、色むらや異物、凹凸がないか細かく確認していました。見た目を整えるだけでなく、防錆や耐久性など塗膜本来の性能を発揮させるためにも、それぞれの工程には意味があります。

では、小さな傷をDIYで直す場合は、どこまで対応できるのでしょうか。塗装工程に携わった経験をもとに、補修が意外と難しい理由と、プロに相談したほうがよい傷の目安を紹介します。

「塗るだけ」では終わらないのが車の塗装

完成した車体だけを見ていると、その下に何層もの塗膜があることはほとんど分かりません。しかし実際には、車種や色によって仕様は異なるものの、鋼板をサビから守り密着性を確保する下塗り、表面を整えて上塗りとのつながりを良くする中塗り、ボディカラーをつくるベースコート、表面を保護するクリアコートなど、それぞれ異なる役割を持った塗膜が重なっています。

だからこそ、同じような擦り傷に見えても、表面のクリアコート付近だけについた傷と、その奥まで削れた傷では対応が変わります。

傷の上からそのまま塗料を載せても、削れてできた段差は残ったままです。まず傷んだ部分を研磨し、荒れた塗膜や段差をならしてから、新しい塗装を載せられる状態に整えます。深く傷んでいれば下地から作り直すこともあります。

筆者が品質検査をしていたときも、下地処理の状態は仕上がりにそのまま表れていました。ライトで照らされた車体がラインを流れる中、姿勢や見る角度を変えながら塗面を確認します。正面から見ただけでは分からない違和感に、角度を変えたことで気づくこともありました。

小さな傷であっても、「少し塗れば終わり」とはいかないのが塗装の難しいところです。

DIYでは「直す」より「どこまで目指すか」が重要

DIYで補修するとき、筆者ならまず「元通りにしたいのか、それとも傷を保護して目立ちにくくできればよいのか」を考えます。

たとえば、点状の飛び石傷や小さな塗装の欠けで、へこみや大きな変形がない場合は、タッチアップペイントで露出した部分を覆う方法があります。

一方で、補修した場所が分からないほどきれいに戻そうとすると、難易度は一気に上がります。

筆者が塗装品質を見ていたときも、塗面のわずかな凹凸や色むらを確認していました。DIYでも塗料を盛りすぎれば補修部分だけが盛り上がり、反対に研磨しすぎれば周囲の正常な塗膜まで削ってしまいます。ほこりなどが残った状態で塗れば、それが新たな凹凸になることもあります。さらに、同じカラーコードの塗料でも、塗り方や元の塗装状態、塗料の厚みによっては色がそろって見えない場合があります。

「塗れたから成功」ではなく、どの程度の仕上がりを求めるのかを決めておくことが、DIYでは重要だと感じます。

筆者なら「大きさ」より深さと素材を見る

車に傷がついたとき、つい「何cmくらいあるか」に目が向きます。しかし、塗装工程を知る筆者なら、それだけではなく「どこまで深く傷んでいるか」「傷の先に何の素材があるか」も確認します。

たとえば金属製のボディで、塗膜を突き抜けて鋼板まで露出している傷は注意が必要です。塗膜による保護を失った金属はサビる可能性があり、腐食が進むと傷の周囲や塗膜の下まで影響が広がります。塗膜が浮いたり剥がれたりすれば、最初は小さかった傷でも補修する範囲が広がりかねません。金属まで達した傷であれば、見た目が小さくても早めにプロへ相談したほうがよいでしょう。

一方、バンパーのような樹脂製品は、塗装が剥がれて素材が露出しても、樹脂そのものがサビることはありません。ただし、深く削れていたり、亀裂や変形があったりすれば、塗料を載せただけで元の形に戻すことはできません。

また、バンパー周辺には安全装置や運転支援に使うレーダーセンサーを備えた車種もあります。センサー前方を不適切に補修したり、塗装を重ねたりすると、レーダー信号が弱まったり拡散したりして、周囲の車両や障害物を正しく検知できなくなる可能性があります。そのため、センサー周辺の傷は自己判断で補修せず、プロに相談したほうがよいでしょう。

車の傷は、見えている面積だけでは補修の難しさを判断できません。DIYで済ませるか迷ったら、傷の深さや場所、素材、変形やサビの有無を確認したうえで、「少し目立たなくできればよいのか」「見た目や機能まで元の状態に近づけたいのか」を考えてみてください。


筆者:jaco

大手自動車メーカーで、自動車の塗装ラインの構築に携わった。車体の塗装面に色むらや異物がないか、品質検査を行った経験もある。現在はITエンジニア兼Webライターとして、ものづくりの現場で得た経験を生かして執筆している。趣味はキャンプ、登山、旅行。フリーランス時代には年間50泊ほどのキャンプを楽しみながら、アウトドアやIT系の記事を執筆していた。


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