1. トップ
  2. エピソード
  3. 「子どもがやったことなので気にしないで」靴のまま電車の座席を歩く3歳くらいの男の子。だが、注意しない母親に年配女性が見せたのは

「子どもがやったことなので気にしないで」靴のまま電車の座席を歩く3歳くらいの男の子。だが、注意しない母親に年配女性が見せたのは

  • 2026.9.25
「子どもがやったことなので気にしないで」靴のまま電車の座席を歩く3歳くらいの男の子。だが、注意しない母親に年配女性が見せたのは

昼の車内で、小さな靴が座席を歩いていた

平日の昼過ぎ、私は用事を済ませた帰りに電車に乗った。

車内は空いていて、向かいの長い座席にも人はまばらだった。

その座席では、三歳くらいの男の子が靴を履いたまま立ち上がっていた。

手すりにつかまりながら、座席の上をとことこと歩いている。水色の運動靴の底が触れるたび、紺色の座面には小さな汚れが残っていた。

隣に座る母親は、手元の画面を見たままだった。男の子は楽しそうに歩き、ときどき窓の外を指さしている。

しばらくすると、少し離れた席にいた女性が母親へ声をかけた。

「あの、靴は脱がせたほうがいいと思いますよ」

母親は顔を上げ、少し眉を寄せた。

「子どもがやったことなので、気にしないでください」

女性はそれ以上言わなかった。ところが、男の子がまた立ち上がって座席を歩き始めると、困ったようにもう一度声をかけた。

「でも、次に座る人もいますから…」

母親は今度は少し硬い声で返した。

「子どもがやったことなので、気にしないでください」

その瞬間、車内に気まずい空気が流れた。私もどうしていいか分からず、ドアの上の広告へ目を向けた。

年配の女性が、黙ってかばんを開けた

すると、男の子とは反対側の母親の隣に座っていた年配の女性が、かばんからウェットティッシュを取り出した。

そして男の子が歩いたあとの座面を、空いているところから静かに拭き始めた。

母親もそれに気づき、女性の手元を見る。

年配の女性は二枚目を取り出すと、男の子へやわらかく声をかけた。

「ここ、次の人も座るからね。お靴、脱ごうか」

男の子は少しだけ女性を見つめたあと、ぺたんと座った。そして自分で靴のベルトを外し、片方ずつ床に置いた。

「ぬいだよ」

「うん、ありがとう」

年配の女性が笑うと、母親は手元の画面を伏せた。

少し迷ったようにしてから、自分のかばんからティッシュを取り出し、まだ汚れが残っている座面を拭き始めた。

年配の女性は、その様子を見てから静かに言った。

「小さい子だもの。こういうこともあるわよ」

少し間を置いてから、母親が答えた。

「……すみません」

さっきまでの硬い声ではなかった。

次の駅に着くと、母親は男の子の手を引いて立ち上がった。そして降りる前に、年配の女性へ小さく頭を下げた。

その夜、私は姉に車内であったことを話した。

「お母さん、『子どもがやったことなので気にしないでください』って、言ったんだよ」

「それで、どうなったの?」

「隣にいた年配の人が、何も言い返さずに座席を拭き始めたの。そしたら、そのお母さんも一緒に拭き始めて」

姉は少し驚いた顔をした。

「そっか。怒られるより、そっちのほうが響いたのかもね」

強く言い返さなくても、相手の行動が変わることはある。あの日の年配の女性の静かな対応が、今でも印象に残っている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ