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「あら、起きた。よく寝てらしたわね」特急で目を覚ますと知らない女性に囲まれていた。思わぬ提案に困惑した瞬間

  • 2026.9.25
「あら、起きた。よく寝てらしたわね」特急で目を覚ますと知らない女性に囲まれていた。思わぬ提案に困惑した瞬間

目を覚ますと、知らない3人に囲まれていた

定年して2年目の春、平日の昼に特急の指定席を取って、一人で出かけた。

車内は空いていて、窓側の僕のまわりにもほとんど人はいなかった。

窓の外を流れていく田んぼを眺めているうちに、いつの間にか眠ってしまったらしい。

にぎやかな笑い声で目を覚ますと、近くに知らない年配の女性が二人座っていた。

前の列の2席がこちら向きに回され、さらに僕の隣にも女性が一人座っている。いつの間にか、僕を含めた向かい合わせの4人席のような形になっていた。

「あら、起きた。よく寝てらしたわね」

「え…あの」

状況がのみ込めずにいると、目の前の女性がにこにこしながら言った。

「せっかくだから、一緒にお話ししましょうよ」

3人は昔の職場の仲間で、久しぶりに旅行へ出かけるところだという。

「お一人なの?どちらまで行くの?」

僕が短く答えると、隣の女性も身を乗り出した。

悪気はなさそうだった。ただ、目を覚ましたら突然知らない3人の輪の中にいた僕は、どう反応すればいいのか分からない。

愛想笑いを浮かべながら、聞かれたことにだけ答えていた。

検札に来た車掌さんが気づいたこと

しばらくすると、後ろの扉から車掌さんが検札にやってきた。

僕が切符を差し出すと、車掌さんは向かい合わせになった座席を見てから、僕と女性たちを交互に見た。

「こちらは、皆さまお連れさまですか?」

女性の一人が「あ、違うんです」と答えた。

僕が困ったように車掌さんを見ると、気をつかってくれたのかすぐに声をかけてくれた。

「向かい合わせではないほうがよろしいですか?」

「はい。できれば…」

すると車掌さんは女性たちに、穏やかな口調で伝えた。

「では、前のお席を元の向きに戻しましょう。座席を回すときは、周りのお客さまにもひと声かけてくださいね」

女性たちは一瞬顔を見合わせたあと、「あら、ごめんなさい」と席を立った。

前の2席が元の向きに戻ると、窓の外をゆっくり眺められる、最初の静かな空間に戻った。

降りる直前、手渡されたもの

降りる駅が近づき、僕が荷物をまとめて立ち上がると、通路側にいた女性が声をかけてきた。

「さっきはごめんなさいね。よかったら、これ」

差し出されたのは、みかんが1つだった。

僕が礼を言ってホームへ降りると、3人は窓の向こうから手を振っていた。

その晩、もらったみかんを食卓に置いて妻に話した。

「目が覚めたら、知らない人たちと4人席みたいになっててさ」

「それで、何て言われたの?」

「一緒にお話ししましょうよ、って」

妻は吹き出しながら、みかんを半分に割った。

少し困った出来事だったけれど、思い返すと、なんともにぎやかな春の一日だった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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