1. トップ
  2. エピソード
  3. 「来月には20万円返すから」と約束した兄。だが、会社に行くふりが発覚し問い詰めた結果

「来月には20万円返すから」と約束した兄。だが、会社に行くふりが発覚し問い詰めた結果

  • 2026.9.25

「来月返す」をくり返した兄

私には少し年の離れた兄がいる。去年の春から、兄に頼まれるたびに少しずつお金を貸してきた。

最初は数万円だった。

「悪い。今月ちょっと足りなくてさ。給料が入ったら返すから」

「この前の分も、まだ返ってきてないよね?」

そう言うと、兄は気まずそうに目をそらした。

「分かってるよ。本当に今だけ。悪いけど、もう少しだけ頼む」

断ればいいと思いながらも、そのたびに「今回だけ」と思ってしまった。何度かに分けて貸した金額は、気づけば合わせて40万円になっていた。

さすがに不安になり、私は兄に返済の話をした。

「ねえ、40万円、このままにはできないよ。いつ返せそう?」

兄は少し黙ってから答えた。

「分かってる。40万円のうち20万円は来月返すから。もうちょっと待って」

けれど翌月になっても、振り込みはなかった。

もう一度聞くと、兄はまた同じように言った。

「ごめん。来月には20万円返す。今度こそ何とかするから」

私はその言葉を信じようとした。

兄は実家で暮らしていて、毎朝スーツを着て家を出ていたからだ。仕事には行っているのだから、しばらく待てば返してもらえるだろうと思っていた。

ところがある平日の昼、用事で出かけた先の公園で、兄を見かけた。

スーツ姿のままベンチに座り、膝に鞄を置いてぼんやり前を見ていた。

仕事の休憩中なのかとも思ったが、どうしても気になった。

その日のうちに母へ聞いてみると、母は少しためらってから口を開いた。

「実は最近、会社から兄あての封書が何度か届いてたの。それで何かあったのか聞いたら……もう辞めたって」

「え?じゃあ、毎朝出かけてたのは?」

「私も会社に行ってると思ってたのよ」

驚いて、しばらく言葉が出なかった。

お金を返せないこともショックだったが、会社を辞めたことを隠し、毎朝出勤するふりをしていたことにも戸惑った。

一人で兄と話しても、また「来月返す」で終わってしまう気がした。そこで週末、父へ電話をした。

貸した金額が40万円になっていること。20万円を翌月返すと二度言われたこと。それでも一度も返済されていないこと。そして、兄がすでに会社を辞めていたこと。

父は途中で口を挟まず、最後まで聞いていた。

「分かった。日曜に一度、みんなで話そう。怒るだけじゃ何も決まらないからな」

父が兄の前に置いた紙とペン

日曜の午後、実家の居間で父と兄がテーブルを挟んで向かい合った。私は父の隣に座り、貸した日付と金額を控えていた手帳を持っていた。

兄は落ち着かない様子で、何度も膝の上で手を組み直していた。

「ちゃんと返すつもりはあるんだよ。来月には半分くらい…」

また同じ言葉が出てきて、思わず私は兄を見た。

すると父が静かに言った。

「だが、そうやって先延ばしにしてるんだろ」

兄は口を閉じた。

私は手帳を見ながら続けた。

「うん。でも、まだ一度も返してもらってない」

「…ごめん」

兄は小さな声で言った。

父はそこで責め立てず、少し間を置いてから聞いた。

「仕事は、もう辞めたんだな?」

兄はうつむいたまま、うなずいた。

「……うん」

「どうして黙ってた?」

しばらく沈黙が続いた。

「言えなかったんだよ。仕事もなくなって、お金も返せなくて…。家にいたら何を聞かれるか怖くて、朝になると、とりあえずスーツ着て出てた」

「じゃあ、昼間はずっと外にいたの?」

私が聞くと、兄は力なくうなずいた。

「仕事を探したり、公園にいたり。自分でも何やってるんだろうって思ってた。ほんとに、ごめん」

父はしばらく何も言わなかった。

やがて棚から便せんとボールペンを出し、兄の前に置いた。

「返すつもりがあるのは分かった。でも、返せない約束を何度しても仕方ないだろう」

兄は黙って紙を見た。

「まず仕事を探す。そのうえで、給料が入ったら毎月いくらなら返せるのか、自分で考えなさい。『来月何とかする』じゃなくて、できる約束をしろ」

兄はしばらく考えたあと、私を見た。

「仕事が決まって最初の給料が入ったら、その次の月から毎月2万円ずつ返す。それなら……できると思う」

私は少し迷ったが、うなずいた。

「分かった。ただ、難しくなったときは黙らないで。返せないなら返せないって、ちゃんと連絡して」

「うん。本当にごめん」

兄は便せんに、仕事が決まり最初の給料が入った翌月から、毎月2万円ずつ返すことを書いた。

父は内容を確認すると、私に紙を渡した。

「これはお前が持っておきなさい」

「うん。ありがとう」

それからしばらくして、兄は次の仕事を見つけた。

最初の給料が入った翌月から、約束どおり毎月2万円が私の口座に振り込まれるようになった。

振り込みの日には、兄から短いメッセージが届く。

「今月の2万円、振り込んだ。確認しておいて」

まだ40万円すべてが返ってきたわけではない。それでも、以前のように「来月返す」という言葉だけで終わらず、兄が約束した額を実際に返し始めたことに、私は少しほっとしている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ