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「なんだよ、もう無くなったのかよ」ローストビーフを山盛りに取った父親。だが、料理人が追加分から変えた提供方法

  • 2026.9.23

楽しみにしていた朝食会場で

夏休みに少し奮発して、家族で温泉旅館に泊まった。

朝食はバイキング形式で、なかでも人気なのがローストビーフだった。

前の晩、仲居さんから「朝は料理人が切ったものを出していますよ」と聞いていたので、私も楽しみにしていた。

翌朝、妻と娘を席に残し、私はトレイを持って料理の並ぶカウンターへ向かった。

私のすぐ後ろには、小学生くらいの男の子と、その父親が並んでいた。

ローストビーフの大皿が見えてきたところで、男の子が父親の袖を引いた。

「お父さん、あれ食べたい」

すると父親が私の横から少し身を乗り出した。

「すみません、先に取ってもいいですか。子どもが楽しみにしてて」

少し戸惑ったものの、私は場所を譲った。

「あ、どうぞ」

父親は「すみません」と言いながらトングを手に取ると、肉を何枚も皿へ重ね始めた。

「これくらいあればいいか。ほら、席に持っていこう」

皿にはかなりの量が盛られていた。男の子と父親が席へ戻ったあと、大皿に残っていたのはほんの数枚だった。

私が一枚取ると、後ろに並んでいた人たちも順番に取り、すぐに大皿は空になった。

さらに後ろにいた年配の女性が、空の皿を見て苦笑いした。

「あら、間に合わなかったわ」

「すぐ追加が出るといいですね」

私ももう少し食べたかったので、年配の女性と一緒にカウンターのそばで少し待つことにした。

数分後、先ほどの父親が一人で戻ってきた。

空の大皿を見るなり、眉をひそめる。

「なんだよ、もう無くなったのかよ」

近くにいた料理人が、すぐに顔を上げた。

「申し訳ありません。ただいま次の分を切っていますので、少々お待ちください」

「子どもがまだ食べたいって言ってるんだけどなあ」

父親はそう言いながら、もう一度空の皿をのぞきこんだ。

次から変わったローストビーフの出し方

ほどなくして、料理人が新しく切ったローストビーフを運んできた。

ただ、今度は大皿へまとめて置かず、小皿に一人分ずつ盛り始めた。

「お待たせしました。まずは並んでいる皆さまに、一皿ずつお渡ししますね」

穏やかな口調でそう言って、先頭の人から順番に手渡していく。

年配の女性も一皿を受け取ると、ほっとしたように笑った。

「よかった。今度はいただけたわ」

「お待たせしてすみません」

料理人も笑顔で返した。

そのあと、先ほどの父親が料理人に声をかけた。

「すみません、もう一皿もらえます?」

料理人は父親だけを責めることなく、変わらない調子で答えた。

「もちろんです。ただ、おかわりは一度皆さまに行き渡ってからお願いしてもいいですか」

父親は列を見て、一瞬黙った。

「…ああ、分かりました」

そう答えると、いったん席へ戻っていった。

私も一皿を受け取り、妻と娘の待つ席へ戻った。

娘がローストビーフを見て、ぱっと顔を明るくした。

「パパ、それ今切ったやつ?」

「そう。ちょっと待ったけど、ちゃんともらえたよ」

誰かを強く注意するのではなく、料理の出し方を変えて全員に行き渡るようにする。あのときの料理人の対応が、今でも印象に残っている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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