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親の「できること」まで奪っていない? 「先回り介護」を見直すサービス選び

  • 2026.9.21

親の「できること」まで奪っていない? 「先回り介護」を見直すサービス選び

「親のために」と思ってしていることが、実は親子を苦しめる原因になっているかも! 介護では、先回りして世話を焼くことが、必ずしもよい結果につながるとは限らないのです。これまで当たり前とされてきた介護の常識が、いま大きく変わりつつあります。介護のプロ・川内潤さんの新刊『介護前夜の教科書 親と自分の人生を壊さないための備え』(講談社刊)からお届けする第1回は、介護サービスについて。

Q. 介護サービスはたくさん使った方がいい?

A. 本当に必要なものだけを適切に使う

「お金さえあれば、手厚い介護サービスを受けさせてあげられるのに」。そう考えていませんか? あるいは、高級な老人ホームに入居させることが、子としての「最高の贈り物」だと思い込んではいないでしょうか。もちろん、お金があるに越したことはありません。しかし、さまざまな現場を見てきた私からお伝えしたいのは、「子が世話を焼くほど、かえって親が不幸になることもある」という意外な側面です。本人ができることまで、先回りして奪ってしまうことがあるためです。

ある親子のケース

かつて、月100万円もの費用をかけ、母親のために24時間365日体制で実家にヘルパーを依頼した長男がいました。彼の願いはただ一つ、「お母さんを絶対に転ばせないこと」。骨折して寝たきりになるのが一番かわいそうだからと、ヘルパーに料理、洗濯、掃除、買い物のすべてを「先回り」して代行させたのです。その後、お母さんは日中の活動が減り、一日をソファでぼんやり過ごすことが多くなったといいます。

これは、高いお金を払って、親の「生活の質」をわざわざ引き下げてしまった悲しい例です。支援を増やす一方で、本人が担っていた役割や、自分で体を動かす機会まで減らしていなかったか、振り返る必要があるといえるでしょう。

同じことは「良かれと思って」行うバリアフリー化にも言えます。家の中を段差一つないフルフラットにリフォームすれば、確かに家での転倒は防げるかもしれません。しかし、それは同時に「足を上げ下げする」という日常の筋トレの機会を奪うことでもあるのです。外に出れば、必ず段差があります。家の中を過保護にすると、皮肉にも外で転倒するリスクを高め、結果として寝たきりへのカウントダウンを早めてしまう。もちろん、必要があれば、適切な工事をすべきです。しかし、まだ元気で動けるうちからバリアフリー化をしてしまうのは、ちょっと待った、ということです。大切なのは、「危険をゼロにすること」ではなく、「その人らしい生活を保つこと」です。

かえって親を老け込ませてしまう

確定申告の時期、税務署の窓口で領収書を広げ、熱心に話し込む高齢者の姿をよく見かけます。「大変そう。誰か代わってあげればいいのに」という声も聞こえてきそうですが、私はその姿を、とても「美しい」と感じます。社会との接点を持ち、自分で役割を果たす機会は、心身の活力を保つ一助になると思うからです。「面倒だから」と子がその役割を取り上げてしまうことは、かえって親を老け込ませてしまう気がしてなりません。

本来、介護サービスとは「その人がその人らしく生きるための補助」。たとえば、「もう歳で、準備や片付けが大変だから」と諦めていた書道を、デイサービスの助けを借りて再開した方がいました。すると、その方はみるみるうちに元気になっていったのです。好きなことに没頭する、その瞬間に生まれる喜びは、決してお金で買えるものではありません。適切なサービスによって、その人の人生がふたたび輝き出すことにこそ、本当の価値があるのだなと思いました。

では、親にとって適切なサービス、必要な支援を、どう判断すればいいのでしょうか。私は、まず家族の意見をケアマネジャーに伝え、その上で、ケアマネジャーが親と話し合って決めていくことをおすすめしています。どこまで本人の力でできるのか、必要なサポートの度合いを見極めるには、プロの目が必要です。

同じような状態でも、人によっては、ヘルパーやサービスを使うと、気疲れしすぎて生活の質が落ちるケースもあります。豪華な設備や手厚すぎる代行サービスが、必ずしも幸せな最期を約束するわけではありません。たとえ、子からは不便に見えても、慣れ親しんだ環境で、自分の足で立ち、自分の頭で考える。親の「不自由な自由」を尊重し、一歩引いて見守ることが大切です。

「心配だから、あれもこれもしてあげたい!」という親孝行の気持ちは、とてもよくわかります。しかし、その「良かれと思って」行う先回りの配慮が、時として親の自立心を摘み取ってしまうこともある——。その事実を、どうか心の片隅に留めておいてください。

POINT

・やること▶必要な支援だけをプロに依頼する
・やらないこと▶親ができる役割まで奪わない

※この記事は、『介護前夜の教科書 親と自分の人生を壊さないための備え』川内潤著(講談社刊)の内容を、ウェブ記事用に再構成したものです。

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