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妻「着くまで40分かかって大変でした…」約9,000万円のタワマン購入→台風の夜、1歳の子と妻が直面した“真っ暗な現実”【一級建築士は見た】

  • 2026.10.4
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「台風で停電した夜、1歳の子を抱いて、非常灯だけがともる階段を33階まで上ったんです。着くまでに40分かかり、大変でした…」

そう話すのは、3年前に新築のタワーマンション33階(3LDK・71㎡、約9,000万円)を買ったMさん(30代女性・会社員、夫と子ども1人との3人暮らし)です。結婚4年目で、子どもは1歳になります。

購入時の説明会では、「停電したとき、非常用発電機が動かすのは非常用エレベーター1台と非常灯、消防設備です。給水ポンプは対象外なので、断水します」と説明を受けていました。夫は「非常用の設備があるなら安心だね」と受け止め、Mさんもそれ以上は気にしませんでした。家には、水も簡易トイレも備えていなかったのです。

台風が来た日、夫は出張で家にいませんでした。夕方に地域一帯が停電し、Mさんは保育園から子どもを抱いて帰ってきて、動かないエレベーターの前で立ち尽くしたのです。

非常用電源は、まず「逃げるため」の設備

高さ31mを超える建物には、非常用エレベーター(火災のときに消防隊が使うエレベーター)と予備電源を設けることが、建築基準法で義務づけられています。ただし、非常用発電機の主な役目は、火災のときに消火設備や非常灯、非常用エレベーターを動かすことです。停電のあとも暮らしを続けるための設備ではありません。

給水ポンプが非常用発電機につながっていない建物では、停電すると高層階で水が出ず、トイレも流せなくなります。停電時に非常用エレベーターを住民が使えるかどうかも、建物ごとの運用で決まります。

2019年の台風19号では、川崎市のタワーマンションで地下の電気設備が水につかり、停電でエレベーターや給水設備が長い期間使えなくなりました。この被害を教訓に、国土交通省と経済産業省は2020年、「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」をまとめています。

ガイドラインでは、電気設備を浸水のおそれが少ない高さに置く、出入口に止水板(水の浸入を防ぐ板)を設けるといった対策が示されました。新しいタワーマンションでは、電気室を上の階に置いたり、止水板を備えたりする例が増えています。ただし、地域一帯が停電したときに何が動くかは、非常用発電機につながる設備しだいで、物件ごとに違います。

非常灯の階段に、住民の列

Mさんのマンションでは、発電機の燃料に限りがあるため、非常用エレベーターは消防隊のために残され、住民は使えませんでした。階段では、荷物を抱えた住民が列になって上っていたといいます。

Mさんは1歳の子を抱いて、10階ごとに踊り場で休みながら上り、40分かけて33階にたどり着きました。部屋は真っ暗で、蛇口をひねっても水は出ず、トイレも流れません。

出張先の夫に電話すると、「水はある?」と聞かれました。家にあったのは、500mlのペットボトルが2本だけです。その夜は、隣の住戸の人に分けてもらった液体ミルクを子どもに飲ませました。

復旧まで2日、その後に決めたこと

電気は翌々日の朝に戻り、水も同時に出るようになりました。出張から戻った夫は、備蓄の買い出しと収納の整理を引き受けました。

備える量は、国の目安を参考にしました。首相官邸のホームページでは、飲料水は1人1日3リットルを目安に3日分、大きな災害に備えるなら1週間分の備蓄が望ましいとしています。農林水産省の「災害時に備えた食品ストックガイド」も、食品は最低3日分〜1週間分×人数分を目安とし、乳幼児のいる家庭には、ミルクを作る水を多めに備えるよう勧めています。

トイレについては、経済産業省が、携帯トイレなどを1人35回分(7日分)備えるよう呼びかけています。Mさんの家では、まず3日分をそろえ、1週間分を目標に買い足しているところです。あわせて管理組合に確かめると、各階の防災倉庫にも水と簡易トイレの備蓄があることが分かりました。

高層階の備えは、「下りない前提」で

タワーマンションは、地震や風に強く設計されています。浸水への対策も進み、非常用の設備は避難と消防のために大切な役目を果たします。

一方で、停電のあとの暮らしを支える設備は、物件によって違います。だからこそ、高層階ほど「部屋から下りない前提」の備えが欠かせません。

・非常用発電機で給水ポンプやエレベーターが動くかは物件ごとに違う。購入前や入居後に管理会社に確かめる
・電気室の場所や止水板の有無など、浸水への対策も確かめておく
・水は1人1日3リットルを目安に最低3日分、トイレは1人1日5回分を目安に備える。できれば1週間分
・管理組合の備蓄や防災倉庫の場所を確かめておく

次の休みに、非常階段の扉が階段側から開くか(オートロックの仕様など)を管理会社に確認した上で、可能なら自分の階まで階段で上ってみてください。

参考:
災害が起きる前にできること(首相官邸)
災害時に備えた食品ストックガイド(農林水産省)
トイレ備蓄 忘れていませんか(経済産業省)
「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」をとりまとめました(国土交通省)
タワーマンションの災害時の対策に関する質問主意書(衆議院)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している


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