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妻の車のために…“設計士の忠告”を無視してカーポート設置→隣から苦情が来て?夫が払った“痛い出費”【一級建築士は見た】

  • 2026.10.1
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出典:PIXTA(※画像はイメージです)

「妻の車のためにカーポートを付けたら、隣から雨水の苦情が…」

そう話すのは、3年前に郊外の住宅地に地元の工務店で注文住宅(4LDK・延床約96㎡/土地約144㎡、約5,150万円)を建てたHさん(30代男性・会社員、妻と子ども1人の3人暮らし)です。結婚4年目で、子どもは2歳になります。

家を設計しているとき、Hさんは屋根付きの駐車スペースであるカーポートを希望しました。ところが設計士からは、はっきり止められていました。「この土地の建ぺい率は60%です。家を建てると、あとから建てられる面積は約4㎡しか残りません。カーポートは法律上は建築物で、この面積に数えられるので、この土地には建てられません。あとから付けるのもおすすめしません」という説明でした。

建ぺい率とは、敷地の面積に対して、建物を建ててよい面積の割合のことです。144㎡の土地で60%なら、建物を真上から見た面積の合計は約86㎡までと決まっています。Hさんの家は、その枠をほぼ使い切っていました。

それでも3年後の春、送迎で毎日車に乗る妻のためにと、Hさんはインターネットで見つけた外構業者に、2台用のカーポート(工事費込みで約30万円)を頼みました。業者の担当者が「申請は皆さんしていませんよ」と言うのを信じ、設計士に止められていたことは、妻に伝えていませんでした。

カーポートは、屋根と柱のある「建築物」

カーポートは簡単な造りに見えますが、屋根と柱があり、地面に固定されています。そのため建築基準法では、家と同じ「建築物」として扱われます。

建築物である以上、建ぺい率の計算に入ります。柱だけで壁のないカーポートには面積を少なく数えてよい特例がありますが、それを使っても、2台用のカーポートの面積は10㎡以上になります。残り約4㎡の建ぺい率の枠(または 建築可能面積)には、どうやっても収まりません。

もう一つ、確認申請という手続きがあります。建てる前に、建築基準法に合っているかを役所や検査機関に審査してもらう手続きです。防火地域・準防火地域の外で、床面積10㎡以内の増築(後付け)なら申請は要りません。ただし市販の2台用カーポートは10㎡を超える可能性が高いので、基本的に申請が必要です。

申請をせずに建ぺい率を超えて建てれば、違反建築になります。市から「直してください」という是正の指導を受けることになります。

さらに、隣の土地との関係でも決まりがあります。民法第218条は、屋根の雨水が隣の土地に直接流れ落ちるような造りのものを設けてはならない、と定めています。

隣家の一言から、市の現地確認へ

設置から2か月がたった梅雨のころ、長雨が続きました。カーポートの屋根から落ちる雨水が、隣家の庭に流れ込むようになったのです。

隣家からは「雨だれがひどい」と苦情がありました。Hさんは「業者に相談する」と答えましたが、話がかみ合わないまま、隣家は市に相談しました。市役所で建物の法律を担当する建築指導課が現地を確認すると、建ぺい率の超過と、確認申請をしていないことが分かり、是正の指導が入りました。

市からの通知を開いたのは妻でした。妻はそこで初めて、設計士に「建てられない」と言われていたことを知ったのです。

撤去して、車はカバーで

Hさんは隣家に謝り、市の指導に従ってカーポートを撤去しました。撤去の費用は約5万円で、設置費と合わせて約35万円が消えたことになります。

妻からは「私のためにしてくれたのは分かる。でも、建てられないと知っていて隠したのは違う」と言われました。撤去の費用は、Hさんが自分で出しました。妻の車は、いまはボディカバーで覆っています。

後付けの前に、建ぺい率の残りを見る

カーポートは、雨の日の乗り降りを楽にし、車を守ってくれる設備です。敷地に余裕があれば、確認申請をして正しく建てることができます。

一方で、カーポートも建築物である以上、建ぺい率と確認申請の決まりは家と同じです。だからこそ、あとから付ける前に、敷地にあと何㎡建てられるのかを確かめることが欠かせません。

・カーポートは建築物として扱われ、建ぺい率の計算に入る。床面積が10㎡を超える増築(後付け)や新築の場合、また防火・準防火地域に建てる場合は、確認申請が要る
・新築のときにもらった確認済証(確認申請が通ったときに交付される書類)に、敷地面積と建築面積が書かれている。そこから残りの面積を計算してから注文する
・「申請は要らない」と言う業者には、そう言える根拠(面積と地域)を確かめる
・屋根の雨水は、自分の敷地の中で受ける。隣の土地に流れ落ちる造りは、民法第218条で禁じられている

カーポートのカタログを開く前に、新築のときの確認済証を一度出してみてください。

参考:
建築基準法(第6条・第53条)(e-Gov法令検索)
民法(第218条)(e-Gov法令検索)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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