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タワマンを8,200万で購入も「300万円多く払ったのに…」1年後、結婚5年目の共働き夫婦を襲った“大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2026.9.30
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※ChatGPTにて作成(イメージ)

「眺めのために300万円多く払ったのに、目の前に35階建てのマンションが建ったんです。南の窓から見えるのは、いまは隣の建物の壁です」

そう話すのは、4年前に新築のタワーマンション22階(3LDK・76㎡、約8,200万円)を買ったJさん(30代女性・会社員、夫と二人暮らし)です。夫とは結婚5年目の共働きです。

Jさん夫婦が選んだ南向きの部屋は、同じ間取りでも北向きで低い階の部屋より約300万円高く、その差額は眺めの値段でした。部屋の南側には平面駐車場があり、その先に街並みが広がっていました。

契約の前には、重要事項説明も受けています。そこでは「南側の駐車場は商業地域なので、建物が落とす影を制限する『日影規制』が、原則としてかかりません。将来、高い建物が建ち、眺望や日照が変わる可能性があります」と説明されていました。

それでも、この眺めに住みたいと思っていたJさん夫婦は「すぐに何かが建つわけではないだろう」と説明を聞き流し、南向きの部屋に決めました。

商業地域は、原則として日影規制の対象外

土地には、都市計画で「用途地域」という使い方の区分が決められています。住宅向け、商業向け、工業向けなどです。

日影規制は、高い建物が周りの土地に落とす影の時間を、一定の範囲に抑える建築基準法の決まりです。規制がかかる区域は、住宅地などの中から自治体が条例で指定します。商業地域や工業地域などはこの区域に指定できないため、原則として日影規制の対象外です。

ただし例外として、商業地域に建つ建物でも、高さが10mを超え、その影が近くの規制の対象区域(たとえば隣り合う住宅地)に落ちる場合は、その区域に落ちる影について規制がかかります(建築基準法第56条の2第4項)。一方で、同じ商業地域の中に落ちる影は、対象になりません。

商業地域は、建物の大きさや高さの制限も住宅地より緩やかな場合が多く、平面駐車場や低い店舗が並ぶ土地は、法律の上では、いつ高い建物が建ってもおかしくありません。眺め(眺望)も法律で直接守られてはおらず、隣に建物が建つこと自体は、一般的には止められません。

どの区域が対象で、何時間までの影が認められるかは、自治体によって異なります。手前の土地の用途地域や日影規制の指定は、市区町村の都市計画図で確かめ、分からない点は建築指導課などの担当窓口に問い合わせると確実です。

1年後に看板、4年後に壁

購入から約1年後、南の駐車場に35階建てのマンションを建てる計画の看板が立ちました。距離は約50mです。

事業者の説明会では、建物の影がどこに何時間落ちるかを示した「日影図」が配られました。近くの住宅地に落ちる影は、規制の範囲に収まる計画でした。一方、Jさんのマンションは同じ商業地域にあるため、影が落ちても規制の対象外だという説明でした。

今年の夏にそのマンションが完成し、リビングの南の窓から見える景色は、空と街並みではなく、隣の建物の壁になりました。日影図によれば、冬場は日が入る時間も大きく減る見込みです。

「私が南向きにしようと言ったから」と落ち込むJさんに、夫は「二人で決めたことだから」と声をかけました。一時は売ることも考えましたが、二人は今もこの部屋に住み続けています。

眺めは、手前の土地の用途地域で買う

高層階からの眺めは、毎日の暮らしを豊かにしてくれます。目の前が公園や、高さの制限が厳しい住宅地なら、その眺めは長く続きやすくなります。

一方で、商業地域にある平面駐車場や低い建物の土地は、いつか高い建物に建て替わる可能性があります。だからこそ、眺めのためにお金を上乗せする前に、手前の土地の用途地域を確かめておくことが欠かせません。

・商業地域や工業地域は、原則として日影規制の対象外
・例外として、高さ10mを超える建物の影が規制の対象区域に落ちる場合は、その影に規制がかかる(建築基準法第56条の2第4項)
・眺めは法律で直接守られていない
・対象区域や規制の内容は自治体で異なる。都市計画図で確かめ、分からない点は建築指導課などの窓口へ

眺めに惹かれた部屋を見つけたら、景色の手前にある土地の用途地域を、都市計画図で一度調べてみてください。

参考:
日影規制の取扱い(横浜市)
建築基準法(第56条の2・別表第四)(e-Gov法令検索)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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