1. トップ
  2. 住まい
  3. 新築で“設計士の忠告”を無視して「透明の大窓」を設置→入居3日目で30代夫婦が払った「15万円の代償」【一級建築士は見た】

新築で“設計士の忠告”を無視して「透明の大窓」を設置→入居3日目で30代夫婦が払った「15万円の代償」【一級建築士は見た】

  • 2026.9.29
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

「朝カーテンを開けたら、隣のリビングで朝ごはん中のご家族と目が合ってしまって…」

そう話すのは、1年前に郊外の住宅地に地元の工務店で注文住宅(3LDK・延床約93㎡/土地約118㎡、約4,300万円)を建てたFさん(30代女性・会社員、夫と二人暮らし)です。結婚2年目の共働き夫婦で、子どもはいません。

家を建てるとき、Fさんはリビングの東側に、朝日を入れるための幅2.5mの掃き出し窓(床まである大きな窓)を付けることを希望しました。ただ、この窓の位置は隣の土地との境界から80cmしか離れておらず、3m先には隣家のリビングの窓が向かい合っていました。

設計士からは「この位置は境界から80cmです。境界から1m未満のところに隣の家を見通せる窓を付けると、民法で目隠しを付ける義務があります。透明の大きな窓をこの向きに付けるのはおすすめしません。型板ガラスにするか、高窓にするか、外に目隠しを付けてください」と、はっきり止められていました。型板ガラスとは表面に模様があって向こうが透けて見えないガラス、高窓とは壁の高い位置に付ける窓のことです。

それでもFさんは「部屋が暗くなるのも、フェンスの圧迫感も嫌」と押し切り、夫も同意したのです。

民法が決めている、窓と境界の「1m」

民法第235条は、境界線から1m未満の場所に、他人の宅地を見通せる窓や縁側(ベランダを含む)を設ける人に対して、目隠しを付ける義務を課しています。距離は、窓のいちばん隣地に近い点から境界線に向かって、直角に測ります。

どんな窓でも当てはまるわけではありません。開ければ隣の家が見える引き違い窓は目隠しの義務の対象になり、開けることができないすりガラスの窓は対象にならない、と判断した裁判例があります。また、その地域に別の慣習があるときは、慣習のほうが優先されます(民法第236条)。

ここで注意したいのは、建築確認との関係です。建築確認とは、家を建てる前に、建築基準法に合っているかを役所や検査機関が審査する手続きです。ただし民法の目隠しの義務は、隣人どうしの間の決まりなので、この審査の対象には入りません。だから、目隠しのない透明の窓のままでも家は建ってしまいます。そして建ったあとで、隣の家はこの条文を根拠に、目隠しを付けるよう求めることができるのです。

引っ越して3日目の朝

引っ越して3日目の朝、Fさんがカーテンを開けると、3m先の窓の向こうで隣家の家族が朝食をとっていて、小さな子どもと目が合いました。その日から、お互いの家はカーテンを閉めたままになりました。

1週間後、隣家の方が菓子折りを持って訪ねてきました。そして「目隠しをお願いできませんか」と、丁寧に切り出したのです。

光は通して、視線だけを切る

Fさんは隣家の方に謝り、建ててもらった工務店に相談しました。

ガラスを型板ガラスに替える方法もありましたが、それでは朝日の入り方が変わってしまいます。そこで、窓の外に光を通す縦のルーバーフェンス(高さ1.8m・幅3m)を立てることにしました。ルーバーフェンスとは、斜めの羽根板を並べたフェンスのことで、羽根の角度で外からの視線を切りながら、光と風は通します。費用は約15万円でした。

窓は、隣の家の中から決める

朝日の入るリビングは、一日の始まりを明るくしてくれます。目隠しも工夫次第で、光を残したまま視線だけを切ることができます。

一方で、境界から1m未満の窓には法律上の義務があり、隣の家の暮らしに直接触れます。だからこそ、設計のときに、隣の家の窓との位置関係を確かめておくことが欠かせません。

・境界から1m未満のところに隣を見通せる窓を付けると、目隠しを付ける義務がある(民法第235条)
・設計のときに隣家の窓の位置を図面に書き入れ、向かい合う窓は、高窓・型板ガラス・窓の位置をずらす、といった方法で避ける ・建ったあとに目隠しを付けるなら、ルーバーやフェンスで、光を通しながら視線を切る方法がある
・隣から目隠しを求められたら、早めに話し合う。放っておくと関係を悪くする

窓の位置を決める前に、その窓から隣の家の何が見えるかを、図面で確かめてみてください。

参考:
民法(第235条・第236条)(e-Gov法令検索)
目隠しの設置請求(全日本不動産協会)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ