1. トップ
  2. エピソード
  3. 「財布を忘れてしまったの」会計前に困り果てた常連客。後日、商品を預かった私に、届いた短い手紙とは

「財布を忘れてしまったの」会計前に困り果てた常連客。後日、商品を預かった私に、届いた短い手紙とは

  • 2026.8.8
「財布を忘れてしまったの」会計前に困り果てた常連客。後日、商品を預かった私に、届いた短い手紙とは

会計直前に気づいた忘れ物

スーパーでレジのアルバイトをしていた頃のことです。

毎週ほぼ同じ曜日、同じ時間帯に来店される、高齢の女性のお客様がいました。

初めのうちは会釈を交わすだけでしたが、何度もレジを担当するうちに、少しずつ言葉を交わすようになりました。

「今日はずいぶん冷えますね」

「そうね、この野菜、今夜のおみそ汁に入れるの」

会話といっても、ほんの数十秒ほどです。それでも、お客様がいらっしゃると、私も自然に声をかけるようになっていました。

ある日、その方がいつものように買い物かごを持って、私のレジに並ばれました。

商品を読み取り終え、金額をお伝えしたときです。

お客様はバッグの中を何度か探したあと、困ったように手を止めました。

「財布を忘れてしまったの」

バッグの中身を確認しても、財布は見つかりません。

お客様は申し訳なさそうに、かごの中の商品へ目を落としました。

「いったん家に戻ります。商品は売り場に戻しておいてください」

自宅はそれほど遠くないそうですが、せっかく選んだ商品をもう一度集め直すのは大変そうでした。

そこで私は、少し待っていただくようお願いし、店長に事情を伝えました。

預かった買い物かご

店長に確認すると、短時間で戻られるのであれば、商品を一時的に預かってもよいとのことでした。

冷蔵品だけは別の場所で保管し、そのほかの商品はかごに入れたまま、レジの奥へ移すことになりました。

私はお客様に戻り、こうお伝えしました。

「商品はこちらでお預かりします。慌てずに取りに戻ってください」

すると、お客様はほっとしたように息をつきました。

「すみません。最近、忘れ物が増えてしまって…」

とても落ち込んでいる様子だったため、私は特別なことではないというつもりで答えました。

「財布を忘れる方はほかにもいらっしゃいますよ。商品はそのままにしておきますので、大丈夫です」

お客様は何度も頭を下げてから、自宅へ戻っていかれました。

一時間ほどすると、財布を手にしたお客様が再び来店されました。

預かっていた商品を確認してもらい、今度は無事に会計を終えることができました。

「商品を戻さずに済んで、本当に助かりました」

そう言ってくださったため、私は「間に合ってよかったです」と答えました。

私にとっては、その場でできる対応をしただけでした。

後日渡された小さな封筒

数日後、そのお客様が再びレジに来られました。

会計を終えると、バッグから小さな封筒を取り出し、私に差し出しました。

「この前のお礼です。品物ではないので、受け取ってください」

中に入っていたのは、短い手紙でした。

そこには、財布を忘れて恥ずかしくなり、しばらく買い物へ行くのも嫌になりそうだったことが書かれていました。

そして最後に、こう添えられていました。

「いつも普通に声をかけてもらえるので、また安心して買い物に行けます」

手紙を読んで、私は以前から交わしていた何気ない会話も、お客様にとっては楽しみの一つだったのだと知りました。

商品を預かったこと以上に、失敗を責めたり、慌てさせたりしなかったことがうれしかったのかもしれません。

レジでの短いやりとりでも、相手の気持ちを少し軽くできることがある。

その手紙は、接客を続けるうえで大切なことを改めて考えるきっかけになりました。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ