1. トップ
  2. エピソード
  3. 「こっち、もう少し早くお願いできる?」混雑で焦っていた従業員。だが、年配のお客様の一言に救われた瞬間

「こっち、もう少し早くお願いできる?」混雑で焦っていた従業員。だが、年配のお客様の一言に救われた瞬間

  • 2026.8.8
「こっち、もう少し早くお願いできる?」混雑で焦っていた従業員。だが、年配のお客様の一言に救われた瞬間

客足が途切れない催事場

学生の頃、百貨店のバレンタイン催事で、短期のアルバイトをしたことがあります。

二月の売り場には、色とりどりのチョコレートが並び、朝から大勢のお客様が訪れていました。

特に混雑していたのが、会計とラッピングを行うレジです。

私の前には長い列ができ、会計を終えても、次から次へと商品が運ばれてきました。

「次のお客様、どうぞ」

箱を包装紙で包み、リボンを結び、手提げ袋に入れる。

何度繰り返しても、列はなかなか短くなりません。

慣れない作業に加え、お客様を待たせている焦りもあり、次第に指先がうまく動かなくなっていきました。

隣で会計を担当していた先輩も、余裕をなくしているようでした。

「こっち、もう少し早くお願いできる?」

強く責められたわけではありません。

それでも、失敗してはいけない、早くしなければならないと思うほど、手元がぎこちなくなりました。

列の方から聞こえてくる小さなため息にも、胸が縮むようでした。

思いがけない言葉

しばらくして、年配の女性が私のレジの前に立ちました。

私はいつものように頭を下げました。

「大変お待たせいたしました」

女性が購入したのは、小さなチョコレートの箱でした。

私は包装紙の端がずれないように注意しながら包み、リボンを結びました。

時間がかかっていることが気になり、女性から急かされるのではないかと身構えていました。

ところが、商品を渡すと、女性は笑顔でこう言ったのです。

「忙しいのに、丁寧に包んでくれてありがとう」

予想していなかった言葉に、私は思わず顔を上げました。

女性は続けて、

「大変だと思うけど、頑張ってね」

と声をかけてくれました。

その日、私は早くすることばかりを考えていました。

待っているお客様に迷惑をかけているのではないか、周囲の足を引っ張っているのではないかと、ずっと不安だったのです。

そんな中でかけられた優しい言葉に、張りつめていた気持ちが少しだけ緩みました。

「ありがとうございます」

そう返すと、声がわずかに震えていました。

女性はもう一度微笑み、手提げ袋を持って人混みの中へ歩いていきました。

その後も、レジの列が途切れることはありませんでした。

忙しさも変わらず、作業に追われる時間が続きました。

それでも、先ほどまでのような焦りは少し和らいでいました。

目の前の商品を、一つずつ落ち着いて包もう。

そう思いながら、次のお客様を迎えました。

隣にいた先輩も、女性が去ったあと、小さな声で言いました。

「優しいお客様だったね」

私も黙ってうなずきました。

忙しい時ほど、何気ない一言が心に残ることがあります。

あの日にかけてもらった「ありがとう」と「頑張ってね」という言葉を、私は今でも時々思い出します。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ