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「海軍はこの戦争をできません!」『開戦前夜』で描かれる白熱の“机上演習”シーンと、石井裕也監督が池松壮亮らキャスト陣に込めた想い

  • 2026.8.3

池松壮亮ら実力派キャストの共演で、『舟を編む』(13)などの石井裕也が監督、脚本、編集を務め、実在した「総力戦研究所」と日米開戦への流れを描く映画『開戦前夜』(公開中)。このたび、模擬内閣で海軍大臣に任命された村井和正(岩田剛典)による白熱の“机上演習”を収めた本編映像が解禁され、あわせて、石井監督が今回のキャスティングに込めた想いを明かすコメントも到着した。

【写真を見る】豪華キャストが隅々まで!池松壮亮、仲野太賀ら錚々たる俳優陣の演技合戦が見もの

【写真を見る】豪華キャストが隅々まで!池松壮亮、仲野太賀ら錚々たる俳優陣の演技合戦が見もの [c]2026 ポニーキャニオン/東京テアトル/NHKエンタープライズ/RIKIプロジェクト
【写真を見る】豪華キャストが隅々まで!池松壮亮、仲野太賀ら錚々たる俳優陣の演技合戦が見もの [c]2026 ポニーキャニオン/東京テアトル/NHKエンタープライズ/RIKIプロジェクト

2025年8月に放送されたNHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」のドラマパート(前後編計98分)は、猪瀬直樹のノンフィクション「昭和16年夏の敗戦」を原案として創作された。個々人の戦争への恐れや抗いを押し流し、開戦へと向かった昭和16年夏の「世の中の空気」をより鮮明に描き出していたが、この作品のテーマをより深く伝えるべく製作された138分の完全版が映画『開戦前夜』だ。

1941(昭和16)年4月、真珠湾攻撃の8か月前。日本中のエリートたちが集められた「総力戦研究所」。彼らがデータから導き出したのは、アメリカに対する「圧倒的な敗北」という衝撃のシミュレーション結果だった。原爆投下以外のほぼすべてを的中させていた彼らの見解は採用されることなく、日本は勝ち目のない戦いへと突き進んでいく。それは一体なぜなのか。国を灰燼に帰した“空気”の正体とは?80年以上前の物語が、いま、あなたの理性を揺さぶる。

主人公は、摸擬内閣での「内閣総理大臣」宇治田洋一(池松壮亮) [c]2026 ポニーキャニオン/東京テアトル/NHKエンタープライズ/RIKIプロジェクト
主人公は、摸擬内閣での「内閣総理大臣」宇治田洋一(池松壮亮) [c]2026 ポニーキャニオン/東京テアトル/NHKエンタープライズ/RIKIプロジェクト

この知的なサスペンスに血を通わせるのは、日本映画界を代表する実力派俳優たち。主演の池松を筆頭に、仲野太賀、岩田剛典、中村蒼、三浦貴大、國村隼、佐藤隆太、江口洋介、佐藤浩市といった面々が、歴史の分岐点に立った人物たちの葛藤を表現。単に役を演じることを超え、当時のエリートたちが抱いた焦燥や無力感をむき出しの熱演で体現した。

1941年(昭和16年)4月、内閣直属の機関である「総力戦研究所」には、政府、軍、民間から選りすぐられた日本の未来を担う若き精鋭たちが集められ、アメリカをはじめとする諸国との総力戦の可能性を探る目的で模擬内閣を結成し、戦争の行方をシミュレーションした。

今回公開されたのは、模擬内閣で海軍大臣に任命された村井(岩田)が、「海軍としてこの戦争をできない」と意を決し訴えかける場面から始まる、机上演習の様子が収められた本編映像だ。この衝撃の発言に、陸軍大臣を務める高城(中村)は「貴官はそれを海軍内でも言えるのか」と声を荒げるが、村井は「言えるわけがありません。ですが、私が海軍大臣であれば、事実から目を背けることはできません」と応戦する。

村井は戦争の長期化、そして戦争に耐えうる工業力と燃料の不足を主張するが、これに対し陸軍側は「ならば短期戦にすればいい」と反論。しかし、村井は「終わらせ方も考えずに戦をするのは無責任」と応じ、議論はさらに激しさを増していく。行き詰まりかけた議論のなか、避戦を訴える企画院総裁の峯岸(三浦)らに対し、高城は「戦わずして屈服することに恥ずかしさはないのか」と苛立ちをぶつける。開戦派の声が強まるなか、その矛先は次第に、模擬内閣で内閣総理大臣に任命された宇治田(池松)へと向かう。「総理もなにか発言してください」と詰め寄る声が飛び交うなか、収拾がつかなくなる様子で映像は締めくくられている。

「内閣書記官長兼情報局総裁」樺島茂雄(仲野太賀)と語り合う宇治田洋一 [c]2026 ポニーキャニオン/東京テアトル/NHKエンタープライズ/RIKIプロジェクト
「内閣書記官長兼情報局総裁」樺島茂雄(仲野太賀)と語り合う宇治田洋一 [c]2026 ポニーキャニオン/東京テアトル/NHKエンタープライズ/RIKIプロジェクト

主人公の宇治田を演じる池松を筆頭に、仲野、岩田、中村、三浦と同世代の実力派キャスト陣が競演した本作。公開された本編映像からも、彼らが繰り広げる演技合戦に期待が高まるが、こうした年齢の近い俳優陣をキャスティングした背景について、石井監督は次のように語る。

「当時の総力戦研究所は、官、民間、軍から集められた中堅エリートの“梁山泊”になっていたそうです。それにならい、今作でもいろいろな出自の中堅俳優を集め、独特なチーム感を作ろうと考えました」。

宇治田役に池松が決定し、司会進行のような役どころを仲野にオファーした背景としては、同世代の役者のなかでも長年切磋琢磨してきた両者の関係性が決め手の1つになったという。さらに梁山泊的なムードを生み出すため、総力戦研究所の一員を演じるキャストとして、岩田、中村ら30代の同世代俳優たちが20人以上集結。石井監督は「個々の能力はもちろんですが、チームとしていろいろな力が生み出せるような座組を作ったつもりです。皆さん重い題材そのものも背負ってくれる俳優たちです。信頼できる人にしかお声がけしていません」と振り返る。

『開戦前夜』は公開中 [c]2026 ポニーキャニオン/東京テアトル/NHKエンタープライズ/RIKIプロジェクト
『開戦前夜』は公開中 [c]2026 ポニーキャニオン/東京テアトル/NHKエンタープライズ/RIKIプロジェクト

さらに机上演習シーンの撮影については、「極端に言えば、本物の戦争をしているような緊迫感を作ろうと試みました」と狙いを明かし、「誰かが発言して、それを皆がふむふむと聞いている、というような平板な議論ではなく、彼らだけが時代に先行して戦争を開始し、彼らだけが国の未来の姿を見てしまう、ということです」と説明する。

石井監督の狙いどおり、撮影を通してチーム感は徐々に高まっていったといい、「撮影前に何度もリハーサルを重ねて、俳優同士が切磋琢磨したり励まし合ったりしながら強い絆を作っていました」と当時を振り返っている。そんなスタッフ、キャストらがただならぬ熱量を込めて挑んだ本作。まさにいまの時代にこそ、大スクリーンで観てもらいたい。

文/山崎伸子

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