1. トップ
  2. エンタメ
  3. ネタバレなしで「スパイダーマン」最新作をレビュー!「大いなる力には大いなる責任が伴う」の“責任”にはピーター・パーカー自身の幸せも含まれていた…!

ネタバレなしで「スパイダーマン」最新作をレビュー!「大いなる力には大いなる責任が伴う」の“責任”にはピーター・パーカー自身の幸せも含まれていた…!

  • 2026.8.2

トム・ホランド演じるスパイダーマンの最新作『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』が公開!世界を救うために、すべての人の記憶から自分の存在を忘れられるという究極の選択をしたピーター・パーカーの新たな奮闘を描きだす。本稿では、アメコミ評論家として最新アメコミ情報の発信や映画パンフレットなどへの寄稿、さらに東京コミコンのステージディレクターも務め、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の日本語吹替版の監修も手掛ける杉山すぴ豊による、ネタバレなしのレビューをお届けする。

【写真を見る】 日本版主題歌「Brand New」を手掛けたMrs. GREEN APPLEがトム・ホランドとパチリ!

サム・ライミ監督による名作『スパイダーマン2』を彷彿とさせる展開!

正直『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)の後に新たなスパイダーマン映画を作るというのは大変だったと思います。というのも『ノー・ウェイ・ホーム』は歴代スパイダーマンが集結するという超イベント映画でした。これを超える興奮を提供できるのか?そしてMJやネッドとの別れという衝撃をどう引き継ぐのか…?

世界から存在を忘れ去られたピーター・パーカー。ひとりでNYの街を守るため、日々戦っていた [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL
世界から存在を忘れ去られたピーター・パーカー。ひとりでNYの街を守るため、日々戦っていた [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL

しかしそれは杞憂に終わりました。『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』は嬉しくなるようなスパイダーマン映画の快作に仕上がりました。歴代スパイダーマン映画はどれも好きですが、個人的にはそのなかでも上位に来るぐらいの傑作だと思います。

トム・ホランド版のスパイダーマンはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の中でお話が展開します。従ってスパイダーマンはほかにもヒーローたちがいる世界でのルーキー的立ち位置でした。特にアイアンマン/トニー・スタークが彼の師匠的な位置づけです。1作目の『スパイダーマン:ホームカミング』(17)はトニー・スタークも出てくるからなおさらその傾向が強い。そして2作目の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19)ではある意味その師匠が残した負の遺産を彼が後始末する話です。『ノー・ウェイ・ホーム』ではようやくトニー・スターク色から脱しますが、別バースのスパイダーマンたちが兄貴のように現れます。繰り返しになりますが、先輩ヒーローたちがいるなかでトム・ホランドのスパイダーマンは弟的に奮闘します。

これはもともとMCUでスパイダーマンを立ち上げる時に、ケヴィン・ファイギ(マーベル・スタジオの社長でMCUの仕掛人であるプロデューサー)が言っていましたが、「スパイダーマンはほかのヒーローと絡ませるとおもしろい」という視点から来ているものだと思います。その楽しさは確かにずっと味わせてくれました。ただこのやり方は、いつまで経ってもトム・ホランドのスパイダーマンがヒーロー界の小僧なんですね。

クモの糸?ピーターの身体に変化が起きる… [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL
クモの糸?ピーターの身体に変化が起きる… [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL

それが今回の『ブランド・ニュー・デイ』ではようやくそのポジションから脱却しました。従って過去作以上にトム・ホランド演じるスパイダーマン/ピーター・パーカーの物語にフォーカスしているんです。個人的には歴代スパイダーマンの中で僕が最も好きな『スパイダーマン2』(04)に似ています。この作品では、ピーターとしての悩みがスパイダーマンとしての機能に影響するとか、果たして自分はスパイダーマンなのか?ピーターなのか?というアイデンティティの問題が描かれドラマに深みを与えていましたが、この『ブランド・ニュー・デイ』も同じようなことが起こります。

杉山すぴ豊いわく、『スパイダーマン2』を彷彿とさせるとか! [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL
杉山すぴ豊いわく、『スパイダーマン2』を彷彿とさせるとか! [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL

ハルク、パニッシャー、謎に包まれたMCUヒーロー…彼らとの対比で、スパイダーマンとは何者か?が浮かび上がる

MJとピーター、かつて恋人だった2人はどうなるのか? [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL
MJとピーター、かつて恋人だった2人はどうなるのか? [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL

なによりも感心したのがMJとの関係です。『ノー・ウェイ・ホーム』であれだけ胸が張り裂けるような別れがあって、僕らも心をえぐられたわけですが、それが本作の冒頭10分ぐらいであっさり解決したらどうしようかと(笑)。しかしここは安易な展開にはなりません。いままで以上にピーターに焦点が当たっていると書きましたが、トム・ホランド版が大事にしてきたほかのキャラとの共演の楽しさも健在です。予告などでわかるとおり、ハルク/ブルース・バナー、パニッシャー/フランクが登場。そしてもう一人、“あるMCUヒーロー”が出てきます。ただしこれらのキャラがすべてスパイダーマン/ピーター・パーカーとは対照的な人物。だから彼らとの対比で、スパイダーマン/ピーター・パーカーとはなにか?が浮かび上がってきます。

身体の変異に対応すべく、ブルース・バナーのもとを訪ねたピーター [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL
身体の変異に対応すべく、ブルース・バナーのもとを訪ねたピーター [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL

ブルース・バナーはピーター同様、遺伝子に対する外的影響で超人になった。しかしブルースはその遺伝子を抑えて生きようとしている。予期せぬパワーを得た時に怪物になるかヒーローになるか?暴走するハルクとの戦いでそれが見えてきます。なおスパイダーマンはアメコミヒーローのなかでも比較的華奢な方、それに対してハルクは巨人です。見た目も対称な2人の戦いは絵的にもおもしろいです。フランクはその正体を隠さず過激な自警団活動を行っています。あくまで匿名であろうとするスパイダーマンとここが違います。今回そのことを巡って、2人が会話するシーンがあるのですが、ここでのフランクのセリフがすばらしい!

ジョン・バーサル演じるパニッシャーとスパイダーマンの関係に注目! [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL
ジョン・バーサル演じるパニッシャーとスパイダーマンの関係に注目! [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL

“あるMCUヒーロー”は、スパイダーマンに身の丈にあった活躍を諭します。要は世界征服の陰謀に立ち向かったり宇宙人対策はスパイダーマンの仕事ではないということです。スパイダーマンはあくまでNYの街を守るヒーローなんだと。そう今度のスパイダーマンの戦いの場所は異星でもなく外国でもなく、ホームタウンであるNYです。舞台が小さくなると地味な映画になる?と思われるかもしれませんが、そんなことはありません!NYの街を舞台にこれぞスパイダーマンという華麗かつしなやかなアクションが展開します。

トム・ホランド版スパイダーマンも10年経った…。もうルーキーヒーローではいられない!

本作の監督デスティン・ダニエル・クレットンは『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(21)でMCUにマーシャルアーツ(格闘)映画の楽しさを持ち込んだ人です。このセンスが活きています。『ノー・ウェイ・ホーム』が夜の戦闘シーンだったのに今回は昼の戦いが多い。いままで以上に鮮やかな青と赤のスパイダースーツが映えます。

今回のヴィランの一つであるザ・ハンド。忍者集団でコミックではデアデビルとかウルヴァリンの敵のイメージが強いですが(この秋発売されるPlayStation 5のゲーム「Marvel’s Wolverine」にも登場)、本作でスパイダーマンと対決します。なぜザ・ハンドがスパイダーマンの映画に?と思ったのですが、これはもう素敵な見せ場を作るためだけでしょう(笑)。悪い意味ではなく、スパイダーマンとザ・ハンドという身体能力の高い同士だからこそ出来るアクロバティックなファイトシーンはワクワクします。

忍者集団、ザ・ハントとスパイダーマンのバトルシーンも見どころ [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL
忍者集団、ザ・ハントとスパイダーマンのバトルシーンも見どころ [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL

その一方とにかくパワーで押しまくるハルクとの一戦も見どころ。スパイダーマンがちょこまか動いてハルクを翻弄するのは見ていて楽しいです。さて…『ブランド・ニュー・デイ』最大の謎はセイディー・シンクが演じる役柄です。これはもうお楽しみですが、まずコミックの知識がない人でも十分理解できるというか、超魅力的なキャラです。そしてアメコミ好きの方ならビックリするでしょう。ピーターと彼女の関係がさらにこの物語を盛り上げます。それにしてもセイディー・シンク、ドラマ「スレンジャー・シングス 未知の世界」のマックス役の時は愛らしい女の子だと思いましたが、本作ではぐっと成長して妖艶さがあります。

「成長」といえば、トム・ホランドも大人になりました。彼がスパイダーマン役でデビューしたのが2016年のMCU映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』です(本作でネッドがスパイダーマンの資料を壁に貼り付けていますが、そのなかに“スパイダーマンが登場したのは2016年”というメモがあるのは、このことを差しています)。

もう10年経っている。ということはピーターもあのころから10歳年を重ねました。

もうルーキーヒーローではいられません。そう今度の『ブランド・ニュー・デイ』は大人になったピーター、一人前になったスパイダーマンの冒険なのです。スパイダーマンのテーマである「大いなる力には大いなる責任が伴う」が本作にも生きていますが、その「責任」のなかに、自分に対しての責任=自分が幸せであること、も含まれている。そんなことを感じさせてくれるスパイダーマンでした。

『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』は公開中! [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL
『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』は公開中! [c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL

スパイダーマン映画は、主人公が軽口をたたくという設定があるので会話のやりとりがおもしろい。なので機会があったら日本語吹替版もお薦めです(わたくし、杉山すぴ豊も監修のお手伝いをしています)。そしてこの日本語吹替版のエンディングに、Mrs. GREEN APPLEの「Brand New」が流れます。本作を観た後の気持ちとこの曲はとてもマッチングしています。このスパイダーマンがTVアニメかドラマだったとしてら、こういうエンディング主題歌になるだろうなというぐらいピッタリでなのです。

[c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL
[c]2026 CPII. All Rights Reserved. [c]& TM 2026 MARVEL

ポスト・クレジットのおまけシーンもあります。これまた、「ええ!?」となるでしょうが、次にスパイダーマンとどういう形で会えるか楽しみに待ちましょう。

この夏は劇場で「GO!SPIDEY!GO!」です。

文/杉山すぴ豊

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ