1. トップ
  2. トレンド
  3. 「朝食抜き」で登校する生徒→“教員が手作りして提供”に反響…「何かしてあげたい」一方で元教員の見解は

「朝食抜き」で登校する生徒→“教員が手作りして提供”に反響…「何かしてあげたい」一方で元教員の見解は

  • 2026.9.16
undefined
出典元:photoAC(画像はイメージです)

朝食をとらないまま学校へ向かう子どもについて、話題になることがあります。なかには、朝食を食べてこない子どものために、教員が自ら食事を用意するといった取り組みが注目を集めることもあります。

子どもがお腹を空かせたまま一日を過ごすことを心配する一方で、「朝食の用意まで学校が担うべきなのか」「教員の負担が大きくなってしまうのでは」と疑問を感じる人もいるでしょう。

そもそも、朝食をとらずに登校する子どもは、学校現場でどの程度見られるのでしょうか。また、その背景にはどのような事情があるのでしょう。教員による朝食提供のあり方や、小学校教諭としての経験を持つ、風間千歌さんに詳しくお話を伺いました。

朝食をとらずに登校する子どもは珍しくない?元教員が感じた「変化」

---学校現場では、朝食をとらずに登校する子どもはどの程度いるのでしょうか。また、その背景にはどのような事情があると感じていましたか?

風間千歌さん:

「地域や学校、学年によって差はありますが、私が教員として現場に立っていた経験では、高学年になるにつれて朝食をとらずに登校する子どもが増える傾向があると感じていました。

3年ほど前に担任していた高学年のクラスでは、40人ほどの児童のうち、4~5人程度が朝食をとらずに登校していたと記憶しています。

その背景は一様ではありません。保護者が仕事のため早朝に家を出ており、子どもの朝食まで十分に目を配ることが難しい家庭もありました。また、前日の夜遅くまでゲームやスマートフォンを使用し、朝なかなか起きられず、朝食をとる時間がないまま登校する子もいました。そのほか、『朝は食欲がない』『食べたくない』といった本人の意思によるケースもあります。

私自身の実感としては、教員になった15年ほど前と比べると、朝食をとらずに登校する子どもは増えているように感じます。その背景には、単に家庭の意識の問題として片づけられない事情もあるのではないでしょうか。

保護者の働き方や生活時間、子どもの就寝時間の遅れなど、家庭全体に時間的・精神的な余裕がなくなっていることも影響しているように思います。朝食欠食という一つの現象だけを見るのではなく、その子どもや家庭がどのような生活を送っているのかまで含めて考える必要があると感じています。」

「何かしてあげたい」気持ちはあっても…教員が朝食を用意することへの懸念

---朝食をとらずに登校する子どものために、教員が自ら朝食を用意して提供する取り組みについて、元教員としてどのように考えますか?

風間千歌さん:

「目の前にお腹を空かせている子どもがいれば、『何かしてあげたい』と思う教員の気持ちには共感します。朝食をとらないまま登校すれば、体調がすぐれなかったり、授業中に集中しづらくなったりすることもあります。その意味では、朝食を食べられる環境をつくること自体には大きなメリットがあると思います。

一方で、『教員が手作りして提供する』という方法は、持続可能な取り組みなのかという点で疑問を感じます。朝食を作るためには早く出勤する必要がありますが、育児や介護などの事情でそれが難しい教職員もいます。また、勤務時間外であれば、善意による無償の負担になってしまいます。

さらに、一度始めた取り組みは継続を期待されやすく、担当できる教員がいなくなった際に『以前はしてくれたのに』と学校への不満につながるでしょう。加えて、食物アレルギーへの対応や衛生管理、万が一体調不良が起きた場合の責任など、食品を提供する以上は慎重に考えなければならない問題もあります。

子どもの生活を支えることは大切ですが、朝食の提供までを教員個人の善意や負担に委ねることは違うのではないでしょうか。家庭での対応が難しい場合には、行政や福祉、地域なども含めた仕組みとして支援することが必要です。教員が子どもの困りごとに気づき、必要な支援につなぐことはできますが、食事の提供そのものを恒常的な職務として担うことには慎重であるべきだと考えます。」

朝食をとれない子どもに学校は何ができる?「必要な支援につなぐ」役割も

---朝食をとらずに登校する子どもに対して、学校や教員にはどのような対応ができるのでしょうか。また、家庭ではどのようなことから取り組むとよいでしょうか?

風間千歌さん:

「学校や教員ができるのは、朝食をとることの大切さを伝え、子どもの生活状況を把握しながら、必要に応じて適切な支援につなげることだと思います。

実際、多くの学校では、養護教諭が保健だよりなどを通して保護者に生活習慣について情報を発信したり、栄養教諭が授業などで食事や栄養について子どもたちに伝えたりしています。私が勤務していた学校でも、栄養教諭が給食カレンダーや昼の放送、半年に1回ほどの栄養に関する授業を通して、朝食だけでなく3食をバランスよくとることの大切さを伝えていました。

ただし、学校がすべての子どもに朝食そのものを提供することは、人員や予算、衛生管理などの面から実現は困難です。朝食を取れない背景に、家庭の経済状況や保護者の心身の状態など、学校だけでは解決できない事情がある場合には、スクールソーシャルワーカーや自治体の福祉窓口などと連携し、必要に応じて児童相談所を含む専門機関につなぐことも必要でしょう。特に、朝食だけでなく日常的に十分な食事をとれていない場合には、早い段階で福祉的な支援を検討する必要があります。

毎朝立派な食事を用意しなければならないと考える必要はありません。忙しい朝には、バナナやシリアル、パンなど、無理なく用意できるものを活用し、子どもが少しでも食べて一日を始められる環境をつくっていくことが大切だと考えます。」

朝食をとれない背景まで含めて考えることが大切

朝食をとらずに登校する理由は、生活リズムや本人の食欲だけでなく、保護者の働き方など、それぞれの家庭によって異なります。風間さんが指摘するように、「朝食を食べさせない家庭」と一括りにして考えるのではなく、その背景にも目を向ける必要がありそうです。

また、お腹を空かせている子どもを支えることは大切ですが、その役割を教員個人の善意だけに委ねてしまえば、新たな負担や継続性、衛生管理などの問題も生じます。

学校が子どもの変化や困りごとに気づき、必要に応じて行政や福祉などの支援につなげること。そして家庭でも、無理のない範囲で子どもが何かを口にして一日を始められる環境を整えることが大切なのかもしれません。


監修者:風間千歌

小学校教諭として10年以上、公立小学校に勤務したのち、2人目の妊娠を機に退職。現在はフリーランスライターとして、教員経験を活かした教材制作や入試問題の解説のほか、育児・教育分野のウェブメディアで執筆やSNS運用を行っている。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ