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「あんたに渡すものはない」。実の姉が父の遺産を独占……世帯年収360万・年金暮らしの76歳男性を襲った老後資金の危機

  • 2026.7.21

親の面倒をみてくれていたきょうだいが親の死後、遺産は全て自分のものだと主張したら……?東京都で年金暮らしをする76歳の男性は、遠方に住む姉が亡き父の預金を勝手に自分名義に変えていたことで、相続する予定だった遺産がわずか12分の1に減ってしまったと言います。それでも、姉との争いを避けた結果、老後の生活設計は狂い、家庭内にも大きな溝が生じる事態に。その身に起きたリアルな相続トラブルを、男性が後悔とともに教えてくれました。

回答者のプロフィール

ママテナ編集部マネーチームは2026年4月、インターネット上で「お金にまつわるトラブル」について、エピソードを募集するアンケートを実施しました。今回紹介するエピソードは、そのアンケートに寄せられたものです。回答者である76歳男性のプロフィールは以下の通り。

回答者本人:男性(76歳)
居住地:東京都
同居家族の構成:妻(72歳) ※別居の子どもあり(長男48歳、長女45歳)
回答者の職業:無職(年金暮らし)
配偶者の職業:無職(年金暮らし)
回答者個人の年収:約264万円
現在の世帯年収:約360万円(年金のみ)
住居形態:戸建て(分譲・建売住宅)
現在の金融資産状況:普通預金約200万円、定期預金約300万円、個人向け国債約100万円

「姉が面倒をみるから」と口を出さずにいたら……父の預金1200万円がわずか100万円に

東京都で妻と2人、年金暮らしをする76歳の男性。退職金は住宅ローンと子どもの教育費でほとんど使い切ってしまい、現在は貯蓄を取り崩さないよう、毎月の年金で生活をやりくりしています。

そんな男性が明かしてくれたのは7年前、父親の他界を機に起きた実の姉との遺産相続トラブルです。

長年一人暮らしだったという父親。亡くなる直前の約2年間は、男性の姉が遠方に住みながらも、認知症を抱える父親の預金通帳やキャッシュカードを預かり、生活費の引き出しなどを代行してくれていました。男性も妻も「姉が面倒をみるから」と、口は出さずにいたと言います。

そんな中、父親が死去します。父親の預金の総額は1200万円ほどで、遺産の相続人は姉と男性の2人のみ。1200万円の遺産はそれぞれが半分ずつ相続することになる……そう男性は信じていました。

ところがフタを開けてみると、総額1200万円あったはずの父親の預金はたったの100万円に。残りの1100万円は、姉が既に姉名義の口座に移していたのです。

自分には600万円もらう権利がある、そう主張した男性ですが、姉からは「父から生前に生活費や介護のお礼としてもらう約束だった」と言われてしまいます。さらに、姉は「約束が優先される。あんたに渡すものはない」と一歩も譲りませんでした。

男性は「姉がそこまでするとは思わなかった」と愕然。それでも、母親が亡くなってから、姉がずっと父親の世話をしてくれていたことを考えると、弁護士への相談や訴訟へはどうしても踏み切れませんでした。

結果的に男性は通帳に残っていた100万円の半分にあたる50万円を受け取り、遺産分割協議書にサイン。その後、姉とは完全に絶縁状態になりました。

妻には「あなたが訴訟を起こさないから」と責められ……狂った老後設計と夫婦の亀裂

もともと想定していた600万円の遺産相続。それがなくなったことで、男性夫婦の老後設計は大きく狂ってしまいました。

男性自身の認知症リスクに備えたサービスや、妻の膝の手術費用を貯蓄から捻出せざるを得なくなり、予定より5年も早く貯蓄を取り崩さざるを得ない状況に。

さらに、相続トラブルに端を発した家庭内の不和も男性を苦しめたと言います。

妻からは「あなたが訴訟を起こさないから」と責められ、夫婦間の雰囲気は悪化。孫への入学祝いや子どもに渡す帰省費用も削らざるを得ず、子ども世代との関係にもひずみが生じてしまいました。

「自分がもっと父の財産に関心を持っていれば」という深い後悔と、「姉は長年父の面倒を見てくれた。そこまでして争うべきか」という迷い。そんな相反する二つの感情で、男性の胸の内は引き裂かれていました。

妻から「なぜ弁護士に頼まないの」と責められるたびに、情けなさと申し訳なさで押しつぶされそうだったと振り返る男性。「これで家族がバラバラになる」と考えると、夜も眠れないほど追い詰められていたと当時の苦悩を明かしました。

精神的に限界を迎えた男性は心療内科へ。一方、妻は無料の法律相談会へ足を運び…

精神的に限界まで追い詰められた男性は、かかりつけ医に相談し、心療内科でカウンセリングを受けることに。さらに知人に話を聞いてもらったり、地域の年金者組合の集まりで体験を共有したりすることで、同じ境遇の人々の存在を知り、少しずつ心が軽くなっていきました。

最終的には「姉を恨み続けるより、今ある年金でどうやって幸せに暮らすかを考えよう」と前向きになれたと言います。

一方の妻は、なんとかお金を取り戻そうと、市の無料法律相談会へ足を運びました。ところが、そこで弁護士から告げられたのは「証拠があれば遺留分侵害額請求は可能だが、時効(相続開始から1年以内)を過ぎている」という非情な現実でした。

それを聞き、深く絶望したという妻。それでも「相続が発生したらすぐに行動すること」を新たな学びに変えたと言います。

前に進んだ男性夫婦はエンディングノートを作成。自分たちの遺産は公正証書遺言で明確に分けることを決意しました。結局、父親の遺産600万円は戻りませんでしたが、それぞれが心の整理をつけたことで、夫婦関係もだんだんと修復されていきました。

「情」や「家族だから」は通用しない。相続トラブルの経験者として、同じように悩む友人に伝えていること

もし、今の自分であればどう行動するか。男性は「もしもの時のために」と、父親の生前から家族会議を開き、財産の管理状況を全員で共有するよう促すだろうと、考えを明かします。

「父が認知症になる前に、成年後見制度や家族信託の話を持ち出します」と男性。さらに「相続が発生した瞬間に、迷わず弁護士に相談し、遺留分侵害額請求の手続きを時効前に開始します」と続けます。

当時は姉への情や遠慮を感じていた男性。ただ現在は、あのとき自分の妻との老後を守ることを優先しておけばよかった……との後悔を抱えているようです。

姉との相続トラブルを経て「お金の問題に『情』や『家族だから』は通用しない」ことを身をもって学んだ男性。「特に配偶者と自分の老後資金は、自分たちで守るしかない」と続けます。

夫婦でお金の話をこまめにし、頼れる専門家の存在を知っておくことが何よりの備えになる。そう実感した男性は今、自分と同じように相続トラブルで悩む友人に対しては「早めに動いて」とアドバイスを送っています。

 

(文:ママテナ編集部マネーチーム)
※この記事は、ママテナ編集部マネーチームが2026年4月、「お金にまつわるトラブル」をテーマに実施したアンケート(インターネット回答)に寄せられたエピソードを元に作成しています。
※写真はイメージで本文とは関係ありません。

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