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永野さんがセレクト! 私的ヒーロームービー6選

  • 2026.7.16

大の映画好きとして知られ、自身の映画紹介番組も絶賛放送中の芸人・永野さんが、愛するヒーロー作品を教えてくれました。ユニークな視点から語られる魅力に注目です!

今回、永野さんが好きなヒーローとして挙げてくれたキャラクターには、「狂気と悲しみがある」という共通点がある。

「たとえば、バットマンは、大金持ちで、信じられないくらい広い家に住んでいて、ハンサムで…と一見すると恵まれている。それなのに、自分の財力を投資して、バットスーツを纏い、生身で犯罪者など悪と戦うようになる。じゃあ、一体何のためにやっているのかといえば、おそらく、少年時代に両親が強盗に殺されるという辛い体験をしたことでできた心の傷が癒えない自分のためだと思うんですよね。バットマンと対比されやすい存在としてスーパーマンがいますが、バットマンが陰でスーパーマンは陽かというと、そうでもなくて。スーパーマンも、滅亡の危機に瀕していた惑星クリプトンから両親の手でロケットに乗せられて地球にたどり着いた、いわばエイリアン。その時点で絶対に孤独ですよね。人類を救ったからといって何かもらえるわけでもないのに、役割を放棄しないところも、よく考えると不思議です」

いわゆるスーパーヒーローではない存在にも、同様の傾向が見てとれるという。

「『狼よさらば』のチャールズ・ブロンソン演じる主人公ポール・カージーにも、何か似た狂気を感じますね。自分の家族が襲われて人生が一変しますが、実際の加害相手に復讐するわけではなく、そいつに似た街のチンピラをやっつけるという…(笑)。『燃えよドラゴン』のリーも、潜伏捜査のために武術トーナメントに参加しますが、その背景には自殺に追い込まれた妹の復讐があって。妹が酷い目に遭っている時点で一生気が晴れないだろうに、ちゃんと任務をこなそうとするのは、大切な人を失った自分の心との闘いなんだろうなと。ヒーローはみんな、自分の心の影みたいなものを消すために、ヒーローでいる感じがするというか、そうしないとアイデンティティが保てないのかもしれないなと。子どもの頃は単純にカッコいいと思っていたけど、今は悲しみを背負った人というイメージなので、なりたいとは思わなくなりました」

『ウォッチメン』に登場するロールシャッハも、お気に入りのヒーローの一人だという。

「バットマンたちとは少し違っていて、映画を観た後にコミックスも読みましたが、思想が偏っていて、自分の正義に取りつかれている。貧しい家庭で育ち、親から虐待を受けるなど壮絶な過去を持っていて、悪者に対して“さすがにそれはダメだよ”というくらいまで非合法な暴力をふるっちゃう。こちらはストレートなコンプレックス解消が背景にある気がしますね。以前、とあるメイクさんと何日か仕事でご一緒したことがあって。その間、僕がずーっと文句ばっかり言っていたら、『永野さん、ロールシャッハみたいですね。彼は自分の哲学でずっと文句を言っているんですよ』と言われたことがあります。あとでウィキペディアで調べてみたら身長まで一緒でした(笑)」

作品の登場キャラクターにとどまらず、演じる俳優のヒーロー性に惹かれるケースも。

「『ミッションインポッシブル』シリーズの主人公イーサン・ハントは、ヒーローしすぎていて、目立って仕方ないし、もはやスパイじゃないですよね(笑)。演じるトム・クルーズ自身も、エンターテイナーとして、何かに取りつかれているヒーローだと感じます。ゆっくりとキャリアを積んでいい立場のはずなのに、バイクで崖から飛び降りたり、飛行機にしがみついたりしていますから。一体何に駆り立てられているのか、すごく気になりますよ」

ヒーローよりもヴィランのほうが、実は思考回路自体は理解しやすいのでは、と分析。

「『バットマン』のジョーカーは、目に見えて狂っているけど、その理由が明白ですよね。『ダークナイト』のヒース・レジャー版の“サイコパス気持ちいい!”感や、『ジョーカー』のホアキン・フェニックス版の社会的弱者になったことが背景にあったりとか。『ダークナイト』が大ヒットした時なんて多くの人がジョーカーカッコいい! と思ったけど、誰もバットマンがカッコいいとは言っていなくて(笑)。でも、実は一番謎めいているのは自分でバットモービルまで作っちゃうバットマンだし、そういう悲哀も含めて好きですね。過去の辛い体験や埋まらない心の穴を埋めるために、ジョーカーのような劇場型犯罪者になるなどめちゃくちゃな方向に進むのではなく、世直しをはかるのがヒーローのいいところだし、グッときて泣けちゃいます。もしかすると、今回挙げた彼らが特別なわけではなく、ヒーローはみんなどこかに、信念に近い狂気みたいなものを持っているのかもしれません」

そんなヒーローの気持ちに、共感できるところもあるという。

「ヒーローの場合は人助けですが、“そうしていないと自分を保てない”という気持ちは、ちょっとわかります。たとえばバットマンは、幼少期のコウモリにまつわる悲劇を忘れないためにバットスーツを着ていますが、僕もラッセン時代にフロアディレクターに鼻であしらわれたことを忘れないように、ずっと赤いパンツと青いシャツを着ていますから(笑)。また、ヒーローが正義でい続けようとする理由の一つに、ナルシシズムとか見栄みたいなところもあるのかなと。多くの大人は、自分にダメな部分があっても“それが人間じゃん? そんな僕って愛らしいでしょ?”みたいな方向に進んでいくものですが、ヒーローは“僕だけは違う、選ばれたんだ”という気持ちがあり、ある種強迫観念に苛まれているからこそ、自分の道を進み続けている気もしますね。だから、『僕が君のヒーローになるよ』みたいなことを軽々しく言うヤツは、本当、よくないですよ(笑)」

独自の視点でヒーロームービーを語ってくれた永野さん。映画好きが高じて、今年の春からMCを務める『永野映画CHANNEL』が放送されている。

「自分の心が動いたもの、みんながあまり観ていなそうなもの、そして、“自分はこういう人間です”というのが伝わるものが、セレクトの軸になっています。“これを観ると絶対良い効果が生まれます”という作品だけをお届けしていて、かつてリリースされた、小泉純一郎さんがセレクトしたエルヴィス・プレスリーのコンピレーションアルバムじゃないですけど、“よかれと思って”精神でやっています(笑)。番組の肝は僕の解説。今は、誰かの採点をもとに観る作品を選び、自分の感想を持つ人が少ない時代ですが、たとえ点数が低くても面白い作品はたくさんあって。僕が魅力を喋ることで、その映画に触れる人が増えるなど援護射撃ができれば、番組をやる意味があるんじゃないかなと。共感してくれる人が少しでもいたとしたら嬉しいですね」

ダークナイト
『ダークナイト』

DCコミックスの人気ヒーロー、バットマンの誕生をクリストファー・ノーラン監督が描く。ゴッサム・シティに現れた、ヒース・レジャー演じる史上最悪の犯罪者ジョーカーに、バットマンやゴードン警部補、新任地方検事のハービー・デントらが立ち向かう。デジタル配信中 権利元:ワーナー ブラザース ジャパン Blu-ray&DVD発売中 発売・販売元 :ハピネット・メディアマーケティング

BATMAN and all related characters and elements are trademarks of and Ⓒ DC Comics. Ⓒ 2008 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』

大ヒットスパイアクション『ミッション:インポッシブル』シリーズの8作目。これまであまり語られてこなかったイーサン・ハントの過去が明かされる。小型プロペラ機にしがみつくなど、回を追うごとに難易度が上がる、トム・クルーズ自身による迫力のスタントシーンも大きな話題を呼んだ。4K Ultra HD+Blu-ray ¥7,590 発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング

© 2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ウォッチメン
『ウォッチメン』

ケネディ大統領の暗殺やキューバ危機など、歴史的事件の裏側に存在し、“監視者”と呼ばれてきたウォッチメンたちをめぐる物語。ウォッチメンの一人、エドワード・ブレイクが何者かによって殺されてしまったことで、かつて仲間であった顔のない謎の男が真相解明のため調査に動き出す。アルティメット・カット版Blu-ray ¥2,075 発売・販売元:ハピネ ット・メディアマーケティング

WATCHMEN and all related characters and elements are trad emarks of and ⒸDC Comics. Watchmen Ⓒ2009 Warner Bro s. Entertainment Inc., Paramount Pictures Corporation and L egendary Pictures. Ⓒ 2019 Paramount Pictures.

『狼よさらば』

愛する家族と幸せに暮らしていた開発技師のポール・カージーだったが、チンピラ3人によって妻を殺され、娘も暴行を受けたことで、廃人同然になってしまう。ある日、友人に誘われた射撃場で拳銃を握ったことをきっかけに、やり場のない怒りのはけ口として街のチンピラを殺すため、夜の街を徘徊するようになる。そんな彼を世間は“私立警察”というニックネームで呼び、ヒーロー扱いする。

燃えよドラゴン
『燃えよドラゴン』

香港裏社会の支配者であるハンが主催する武術トーナメントに、秘密情報局の承諾を得て単身参加することとなったリー。実は、ハンの手下に妹を殺され、復讐に燃えていた。ブルース・リーの代表作であり、映画史上最も鮮烈なカンフー映画として愛されている。デジタル配信中 権利元:ワーナー ブラザース ジャパン Blu-ray&DVD発売中 発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング

Enter the Dragon Ⓒ 1973, Renewed Ⓒ 2001, Warner Bros. En tertainment Inc. All rights reserved.

スーパーマン 劇場版
『スーパーマン 劇場版』

滅亡の危機に瀕していた惑星クリプトンから地球に脱出させられた赤ん坊は、クラーク・ケントと名付けられる。新聞社デイリー・プラネットに入社した彼は、正義と真実を守るため、スーパーマンに変身。次々と事件を解決していく。デジタル配信中 権利元:ワーナー ブラザース ジャパン 4K ULTRA HD&Blu-ray ¥6,589 発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング

SUPERMAN and all related characters and elements are trad emarks of and ⒸDC Comics. Ⓒ 2011 Warner Bros. Entertain ment Inc. All rights reserved.

永野

ながの 芸人。1974年9月2日生まれ、宮崎県出身。映画や音楽に造詣が深い。永野さんが世に知らしめたい名作映画をお届けする『永野映画CHANNEL』(BS-TBS)が毎週日曜22時~放送されている。 7月は『ヒッチャー』『シリアル・ママ』『ロストボーイ』をラインナップ。

写真・内田紘倫(The VOICE/永野さん) 取材、文・重信綾

anan 2503号(2026年7月8日発売)より

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