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インパクト抜群の『とうもろこしぬぐぞう』が生まれるまで。デビュー前に描き続けたスケッチを見せてもらいました。【夢眠ねむの絵本作家に会いたい!・9】

  • 2026.7.8

大人もこどもも、幸せな瞬間を

夢眠ねむ(以下夢眠) はらしまさんはデビュー作が『とうもろこしぬぐぞう』で、2作目が『ピーちゃんとナッツくん』なんですね。

『とうもろこしぬぐぞう』 はらしままみ/作・絵 ポプラ社 1320円
『ピーちゃんとナッツくん』 はらしままみ/作・絵 ポプラ社 1430円

はらしままみ(以下はらしま) はい。1作目の2年半後に出しました。でも、制作は同時期なんです。

夢眠 あっ、同時期に。でもこれ、『ぬぐぞう』と同じポプラ社ですよね。同じ出版社で、2冊同時に進めてたんですか?

はらしま そうなんです。最初に『ぬぐぞう』を売り込んだときに、「もう1作見せてください」ってサクッと言われまして(笑)。
「急いで考えなくちゃ」っていろいろ作ってみた中から、「あ、これだったら見せられる」となったのが、しかけ絵本の『ピーちゃんとナッツくん』でした。2作目も『ぬぐぞう』のような力強い野菜シリーズで行くのかなと思いきや、「違うパンチを見せましょう」ということになりまして。
『ぬぐぞう』を進めながら、同時に『ピーちゃんとナッツくん』も作り始めたので、これも『ぬぐぞう』と同じく、制作に約5年かかっているんです。
このお話のきっかけになったのは、息子の保育園の運動会で、先生がゴールに飛び込んでくる子を、手を広げて迎えて抱きしめるのを見たことです。自分の子じゃなくてもすごく大事にしてくれる、愛情を注いでくれているその様子が、見ていてとてもうれしくて。

夢眠 あ、これですね。「おててを ひろげて……」「ピーナッツ! ぎゅっぎゅの ぎゅうー」。

はらしま そうです、そこです。「ぎゅうー」って子どもを抱きしめる瞬間って、大人にとってもすごく幸せだし、子どもも幸せになれる、そんな時間だと思うんです。こういうぎゅっとしてもらえる瞬間、あったかいスキンシップの時間をたくさん作りたいと思って、描いた絵本です。
実際に図書館の読み聞かせで『ピーちゃんとナッツくん』を読ませてもらったら、お父さんとお母さんとお子さん、家族みんなでぎゅうーってしてるところが、目の前で見られたんです。幸せな時間と空間が本当に生まれている、この絵本を描いてよかった、と心から思いました。

家族の思い出の絵本

夢眠 はらしまさんは、小さい頃にも絵本は読んでいたんですか。

はらしま 「あかちゃんのほん」(まついのりこ/作 )という文字のない絵本を、母がいつもオリジナルの言葉をつけて読んでくれていました。お出かけのときに一緒に持っていったり、おうちでも読んでくれて、今でも本棚にあるんですけど。

あかちゃんのほん 1集セット 『おたんじょうび』 まついのりこ/作 偕成社 550円
あかちゃんのほん 1集セット 『おはよう』 まついのりこ/作 偕成社 550円
あかちゃんのほん 1集セット 『あめふり』 まついのりこ/作 偕成社 550円

夢眠 うわあ、素敵!

はらしま 家族にとって、思い出の絵本です。「お出かけするといつも、あれを読んでたんだよねえ」って。

夢眠 幸せな記憶ですね。

はらしま はい。そんな体験もあって、誰かにとってそういう存在になる絵本を自分も作れたらいいなあって。ずうっと覚えてもらえるような本になれたらいいなって、いつも思っています。

夢眠 はらしまさんは、お子さんが大きくなってから絵本作家デビューされていると思うんですけど、我が子から何か反響はありました? 制作中に「どう?」とか、見てもらったりするんですか。

はらしま 『ぬぐぞう』のときは「こういうポーズをとって」とか「ジャンプして!」とか、いろいろ頼みました。「ここにタオルを巻いて」とか。

夢眠 ポージングモデルをやってもらった。

はらしま だけど、「それ、ママがやって」って言われたりとか。

夢眠 でもママは描く側だから、やれないから(笑)。

はらしま そうそう。「ぜーんぶ ぬげた!」の場面とかは、子どもに何度もジャンプしてもらいました。だけど、「もうモデルはやらないから」って、すでに言われてます(笑)。

夢眠 いや、でもきっと内心、誇りに思ってるのでは。だってママが絵本作家って、格好いいですよねえ。しかも、絵本だけでなく会社員のお仕事もしていますからね。

はらしま いえいえ、ゆっくり、ゆっくりやっています。

強すぎる?「ぬぐぞう」のインパクト

はらしま 絵本づくりにあたっては、編集者さんに「悩みながら、しっかり困って下さい」って言われています。「悩んでしっかり困る。考えるということが大事」「目の前に子どもがいると思って作ることを忘れないように」って。なので、「これは2歳の子に、わかるかな?」「この構図でわかるかな?」と何度も考えながら、その都度描き直しています。絵本作家になるには、「絶対にあきらめないで作り続けること、自信がなくても見せることが大事」ということも、一番最初に言われました。

夢眠 私、本当に失礼なんですが、『とうもろこしぬぐぞう』を読んだときに、作者の方がまさかこんなに優しい女性とは思ってなくて。勝手に、もっと破天荒な方なのかと。

はらしま 初めてお会いする方には「男性かと思ってました」って、よく言われます。「ちょっと『ぬぐぞう』とはつながらない」とか(笑)。どちらかと言うと『ピーちゃんとナッツくん』の方が私っぽいって言われたり。

夢眠 思います、思います。でも私、『ぬぐぞう』がデビュー作ですごいよかったなと、勝手に思ってます。誰目線なのかわからないですけど(笑)。

はらしま でも私も、よかったと思って。「『とうもろこしぬぐぞう』を作りました」って挨拶すると、「あ、知ってます」と言ってもらえることが多くて、本当にありがたいです。

頼りになるのは「子ども先生」

夢眠 ぬぐぞうは格好いいですよね、尊敬できる感じで。私も理想の男性のように見ていますから。でもそれはもう、こうして何百枚も描いて、その中で一番素敵な方が選ばれて。

はらしま (絵本には出てこないけれど)ぬぐぞうの家族構成とかも、考えました。

夢眠 え~っ、それ見たい!

はらしま (スケッチを見せながら)ぬぐぞうがいて、お母さん、お父さん、妹、弟、という5人家族で。あとは友だちとかも描いてみました。

夢眠 あ、友だち、『やさいで チャチャチャ』(Gakken)勢もちょっといますね。メモもいろいろ書かれてますね、「とうもろこしぬぐぞうは、なぜぬぐのか」(笑)。「何が格好よさか」。

はらしま 絵本を作るときにまず、「なぜこの本を描くのか」って自問自答するんです。「この主人公の性格は?」「特技は?」「苦手なことは?」とか、書き出して分析して。
「ぬぐぞうはなぜぬぐのか」「気持ちがいいお風呂に入ってみたかったんだ」みたいに。喜怒哀楽はそれぞれこういう表情でと、試しに描いてみたりとか。

取材に持ってきてくれたたくさんのスケッチ

夢眠 めっちゃわかります。私もこういう書き方します。いや、でもこのレベルの試作を、こんなにたくさん作っていることがすごいです。本当に素晴らしい。

はらしま 作っている最中に、絵本ワークショップで「子ども先生」に見てもらうんですよ。実際の子どもさんの反応を見るんです。「よくわかんない」と言われたり、「面白い」って言ってもらえたりとか、いろんなときがあって。「あ、反応がちょっと薄いな」と思ったら、そこから作り変えたりとか。児童館で試しに読み聞かせしてみたら、赤ちゃんがハイハイで前進してきてくれたりとか。そうやっていろんなお子さんの反応を確かめながら、作っているところもあるので。

夢眠 ちゃんと読者の意見が入ってる、生かされてるってことですね。いやあ、すごいです。今日は本当にありがとうございました。

夢眠ねむ
ゆめみねむ/2019年、下北沢に予約制の書店「夢眠書店」をオープン。U-NEXT kids「ねむるま えほん」の企画監修・選書を担当。著書に『本の本』(新潮社)『夢眠書店の絵本棚』(ソウ・スウィート・パブリッシング)など。一児の母。

はらしままみさん

1983年東京都生まれ。明治大学商学部商学科卒。「パレットクラブスクール」「チャブックス」などで絵本を学び、2021年に『とうもろこしぬぐぞう』でデビュー。同作は第14回MOE絵本屋さん大賞・新人賞第2位、絵本ナビプラチナブック。一児の母。

『ピーちゃんとナッツくん』のためし読み動画

『やさいでチャチャチャ』の読み聞かせ動画

撮影/大森忠明 ヘアメイク/光野ひとみ 編集協力/原陽子

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