1. トップ
  2. 「結婚したいのに、もう無理」8年続けたマッチングアプリをやめた34歳女性が見つけたもの

「結婚したいのに、もう無理」8年続けたマッチングアプリをやめた34歳女性が見つけたもの

  • 2026.7.2

あなたにとっての恋愛は「したいもの」ですか? それとも「していないと不安になるもの」ですか?

私たちが「常に恋愛しないといけない」ような気がしてしまう背景には、個人の感情だけでなく、社会の仕組みや文化、そして人間の本能的なシステムが複雑に絡み合っています。幼い頃から触れてきた映画やドラマ、音楽、小説などの多くで、恋愛は「人生の一部」として組み込まれていました。「恋人ができて一人前」というストーリーが社会のデフォルトとして埋め込まれているため、そこから外れている状態に対して、無意識のうちに「自分はどこか欠けているのではないか」と感じてしまうのは、仕方ないこと。

そこに、突如現れた“救世主”が、マッチングアプリでした。これさえ使えば、家から出なくても、異性を紹介してくれる友達がいなくても、恋愛ができる……! だけど、あれ。いつの間にか世間では「マッチングアプリ疲れ」というワードを耳にするようになりました。

■「人見知り」や「気を遣いすぎる人」にマッチングアプリは向かない?

登場したての頃のマッチングアプリは魔法のようなサービスに思えたものですが、今こうしてマッチングアプリが「恋愛のインフラ」として組み込まれてみると、私たちはそのメリットだけでなく、デメリットにも目を向けられるようになったように感じます。

マッチングアプリのメリット

・自宅にいながら気軽に恋愛のきっかけを作れる ・普段の生活では出会えないような新鮮な人と出会える ・出会いの可能性が無限にある ・価値観や条件を検索にかけられて便利 ・複数の相手と同時にやり取りができる

マッチングアプリのデメリット

・初対面の人と出会うので、人見知りには負担が大きい ・相手と共通の友人がいないので関係が途切れやすい ・無限の選択肢が脳を疲弊させる ・メッセージのやりとりに意外と時間と労力がかかる

マッチングアプリはいい部分も悪い部分もあって、明確に向き不向きもあるような気もするけれど、特に女性は登録さえすれば無料で活動を始めることができてしまうがゆえに、とりあえずで始めたマッチングアプリをなかなか辞められないという話もよく聞きます。

今回話を聞いたのは「最初から向いていないと分かっているのに、8年以上マッチングアプリを辞められなかった」という裕香さん(仮名・34歳)。

「マッチングアプリを初めて使った時、私はまだ25歳でした。保育関係の仕事をしているので、職場には出会いがなく、彼氏も長くいなかったので、友人に勧められて始めました。当時から今まで、結婚願望はずっとあるので、誰かと付き合っても、別れる度にマッチングアプリを駆使してきました」

高校、大学と女子校で楽しく過ごしてきた裕香さん。もともと恋愛経験は多くなかった方とのことですが、マッチングアプリが向いていないと感じていたのには、さまざまな理由があったそう。

「とにかく人見知りする性格なので、マッチングアプリでのデートまでのスピード感に、心がついていけていなかったと思います。メッセージで人とどう仲を深めていいかも分かりませんでしたし、結局よく知らないままにデートに行くことになるので、初デートの前はいつも行きたくない気持ちと葛藤していました。最初から素を出して接することもできないので、デートではいつも気を遣ってしまいますし、取り繕った自分を好きになってもらうことにも、違和感を持つことが多かったです」

■「向いてない」と分かっていても、辞められないのがマッチングアプリ

もともとネット上で匿名のやり取りをする習慣もなく、マッチングアプリでの出会いには「今も違和感しかない」という裕香さん。なぜ、そこまで思っていながらも、ずっとマッチングアプリを辞めることができなかったのでしょうか。

「理由は色々あるかも。まず、年を重ねれば重ねるほど出会いが少なくなっていく実感をしていたし、マッチングアプリを使わないと結婚できないと思っていました。あとはやっぱり、他の選択肢と比べて手軽だからというのもあります。合コンに誘ってくれたり、男友達を紹介してくれたりする友達もいたけれど、初対面が苦手なのはどの出会い方でも一緒だから、とも思っていました。あとは結局、とにかくいつかは結婚したいと思っていたので、正直焦る気持ちが強かったんだと思います」

マッチングアプリで2度彼氏を作るも、あまりいい別れ方ができなかったという裕香さん。彼氏ができても、長続きするか分からない不安からなかなかマッチングアプリを退会できず「使わない時はアンインストール」という形を取ってきました。そして、彼氏との関係に綻びが生まれた時には、またアプリを再ダウンロードして「出会いはまだある」と心を落ち着かせていたそうです。

マッチングアプリを開けば、何百、何千人もの異性が画面に並びます。一見、理想の相手を選び放題で素晴らしい環境に思えますが、心理学では「選択肢が多すぎると、人間は幸福度を感じにくくなり不安や焦りが増す」とも言われています。

「正直、マッチングアプリを使えば今の彼よりももっといい人がいると思っていたのもあります。選択肢が多いことに安心感を求めていた一方で、マッチングアプリに消費されてきた側面も大きかったように感じています。自分が相手を条件で見ているからこそ、自分も条件で見られている感覚を強く持つようになっていきました。年齢を重ねるごとに、いいねが減ってきているように感じてしまうし、子どもが欲しいかどうかという欄に“欲しい”と書いている人を見て、自分はこの人の条件に当てはまらないかも、なんて考えるようになりました」

■消費される「マッチングアプリ」を辞めてみたら……

気軽な気持ちで始めたつもりのマッチングアプリ。だけど裕香さんにとって、いつしか「やりたくてやっている」とは言えないものになっていました。

「マッチングアプリに向き合えば向き合うほど、自分が不安定になっていくことにも気がついていました。そんなある日、いつも通りイヤイヤ、マッチングした人との初デートに向かっていました。その日会った人は特に相性が合わず、自分本位な話し方にほとほと嫌気が差してしまって……その鬱憤を晴らすために友人と飲みに行って、酔っ払いの勢いでアプリを退会したんです」

朝起きて、マッチングアプリが消えていることに気がついた瞬間「どっと肩の荷が降りた」のだとか。

「まだやりとりしている人もいたけれど、もうメッセージを返さなくていいんだと思ったら、羽が生えたような気持ちになりました。そこで初めて、こんなにもストレスだったんだということにも気がついたんです」

結婚願望がなくなったわけではない。それでも、裕香さんは「マッチングアプリを辞めた生活」を選びました。

「マッチングアプリを辞めてみると、根本的なことにも気が付きました。そもそも目の前に好きな人がいるわけじゃないのに、結婚したいとか、子どもは絶対に欲しいとか、条件としてそれらが書いてあることにも違和感があります。私の夢は、好きな人ができて、いつか結婚したいと思えることだと気が付きました」

マッチングアプリを辞めて数ヶ月。裕香さんは今、気になる人がいるのだそう。

「初対面の出会いを繰り返すことを辞めた時に、今身の周りにいてくれる人の大切さにも気がつきました。今は、10年来の男友達のことが気になっています。マッチングアプリとは違うから、相手の恋愛スタンスも、これからどうなるかも分からないけれど、マッチングアプリとは全く違う、恋愛する楽しさを思い出すことができました。その人のことを考えると、シンプルに胸が躍ります。私は、今の私のことが好きだなと思えます」

辞めたくても辞められないことって、たくさんありますよね。だけど、辞めてみたら意外にも「なくてもよかったんだ」と気づけることもあります。手放すことにも勇気が必要ですが、その一歩を踏み出せる人にしか、見ることのできない景色があるのでしょう。

(取材・文:ミクニシオリ)

元記事で読む
の記事をもっとみる