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「お客様じゃないから」結婚前にカニ鍋の残り雑炊を出してきた義母→二十年後に家族が下した評価

  • 2026.6.28

初めての手料理

結婚前、初めて彼の実家へ挨拶に伺った日のこと。義母の手料理をいただけると聞いて、前の晩から少しそわそわしていた。

「上がって、上がって。たいしたものじゃないけど」

通された食卓に湯気の立つ土鍋が置かれ、ふたを開けると雑炊だった。よく見ると、底にカニの脚や殻のかけらが沈んでいる。けれど身らしい身は、どこにも見当たらない。

「昨日ね、家族でカニ鍋したのよ。その残りで作ったの」

義母はそう言って、当たり前のように私の前へよそった。隣で彼が「母さん、それは」と口を開きかけたけれど、義母は気にする様子もなくお椀を差し出してくる。

「いいのいいの。あなたももう身内みたいなものだから」

味そのものは出汁が利いていて、おいしかった。だから私もにこにこ食べて、おかわりまでして、その日は普通に帰った。帰りの電車で彼が小さく謝ってきたけれど、私はまだ何が引っかかっているのか、自分でもうまく言葉にできなかった。

あとから来たざわつき

家に着いて、ふと我に返った。前日に家族でつついた鍋の残りを、初めて来た人間に出す。それが嫌がらせの顔をしていないところが、かえって怖かった。怒りたいのに、怒る相手がいない感じ。悪意ならぶつけ返せるのに、悪意がないからこそ、行き場がなかった。

「お客様じゃないから」

結婚後、義母はこの言葉を繰り返した。気を遣わせたくない、という意味なら優しい。でも実際は、気を遣う対象から最初から外されているだけだと、だんだん分かってきた。

結婚式のときも、親族を運ぶバスの手配を、夫を通さず義母が直接式場へ電話していた。家を建てる契約をすませた後で急に反対し、わざわざ担当者を呼び出したこともある。そのたびに私は説明しようとし、声を荒らげ、言い合いになった。

「どうして勝手に決めるんですか」

「だって、よかれと思って」

会話はいつも、そこで行き止まりだった。何十年も家にこもって暮らしてきた人で、こちらの言葉が届く隙間がない。ある時、気づいた。これは分かり合えるとか合えないとかの話ではなく、人として向き合うこと自体が難しい相手なのだと。

あの雑炊は、最初に差し出されたサインだったのかもしれない。

今では夫のほうが先に嫌気がさし、年始すら顔を出さなくなった。子どもたちは義母のことを、陰でこう呼んでいる。

「第二おばあちゃん」

順位は、もう静かに決まっていた。引き止める言葉を、私はとうに失っている。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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