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じわじわと不気味さ増す“巧妙”な演出「びっくりする脚本」「細かい」見逃せない“仕掛け”に反響続出【新・深夜ドラマ】

  • 2026.7.12
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ドラマ24『夫婦と16歳〜狂気の隣人〜』第1話(C)テレビ東京

『夫婦と16歳〜狂気の隣人〜』は、自認16歳・実年齢61歳の白石美子(かたせ梨乃/林芽亜里)が、新婚夫婦の隣人として日常に侵入してくるロマンティックホラーだ。強烈な設定に目を奪われがちだが、本作の怖さを支えているのは、脚本と演出の細やかさでもある。ふと映るシワだらけの手、誰かに恋愛相談しているようで実は自作自演にも見える電話シーン。SNS上でも「細かいところまで見ちゃう」「びっくりする脚本」と反響が広がっている。

※以下本文には放送内容が含まれます。

時折映る、シワだらけの手?

『夫婦と16歳〜狂気の隣人〜』の大きなフックは、白石美子が自分を16歳の美少女だと信じている一方で、実年齢は61歳であるという設定だ。映像の中でも、この最大の違和感が視聴者に見逃せない差異として差し込まれる。

たとえば、美子が紘(豆原一成)に恋をしている少女のような気分で行動している場面でも、ふと映る後ろ姿や手元に、61歳の美子の現実が現れる。若い美子として見えていたはずの世界に、シワの刻まれた手が差し込まれる。その一瞬で、視聴者は彼女の自己認識と現実の身体とのズレを突きつけられる。

この演出が巧みなのは、美子の主観と客観を揺らす装置になっている点だ。理由はわからないが、あくまでも美子の中では、彼女は本当に16歳のままなのかもしれない。紘に絆創膏をもらったことを運命と受け取り、隣に引っ越してきたことすら恋の導きだと信じる。

いま映っている美子は、本人の主観なのか、それとも客観的な姿なのか。手元や背中、影のような部分に、現実が忍び込んでくる。本作は、その小さな違和感を積み重ねることで、派手な恐怖ではなく、じわじわとした不気味さを生んでいる。

おたまとたい焼きで恋愛相談

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ドラマ24『夫婦と16歳〜狂気の隣人〜』第1話(C)テレビ東京

視聴者の考察を誘っているのが、美子の“電話シーン”である。美子は時折、誰かに紘への恋心を相談しているように話す。しかし、その手にあるのは電話ではない。最初こそスマートフォンを手にしていたが、途中からおたまだったり、たい焼きだったりに変わる。つまり、彼女は実際には誰かと通話しているわけではない。

この演出は、一見するとただの奇行だ。美子は自分で相談し、自分で答えている。恋に悩む16歳の少女のように誰かへ助言を求めているつもりで、実際にはすべてが自作自演なのだ。

ここに、美子の孤独と危うさがある。彼女の恋は、他者との対話によって現実に引き戻されることがない。誰かが止める余地もない。自分で問い、自分で都合のいい答えを出し、それを正しさとして積み重ねていく。だから、美子の思い込みはどこまでも加速していく。

そもそも美子はどうして自分を16歳だと思い込んでいるのか。認知症のような症状なのか、それとも彼女自身に内包される別の理由があるのか。現時点では断定されない。

ここには、脚本を手がける加藤綾子の持ち味もよく表れている。加藤脚本は、感情が破綻していく人を、日常的な会話や仕草に溶かし込むのが巧みだ。派手な名台詞で人物を説明するのではなく、少しズレた言葉や行動によって、その人の内側にある執着や依存をじわじわと見せていく。信者ビジネスを題材にしたドラマ『るなしい』でもそれが顕著だった。

びっくり脚本が描く純粋な恋愛

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ドラマ24『夫婦と16歳〜狂気の隣人〜』第1話(C)テレビ東京

美子が紘に恋をしたきっかけは、ある意味ではとてもシンプルだ。家族の目を盗んで家出した美子は、自認が16歳であるため、行くあてもないと思い込み、ふらふら歩いていたところで人にぶつかり、怪我をしてしまう。そこに通りかかった紘が、絆創膏を差し出した。優しくされた美子は、紘に一目惚れしてしまう。

この出会いだけを切り取れば、少女漫画のようにも見える。しかし、本作はその“純情”を危険な方向へ転がしていく。わざと紘の前で転んだり、妻の冴(岡田結実)が実家に帰っていて不在なのをいいことに、紘の世話を甲斐甲斐しくやいたりする。

美子にとってそれらの行動が悪意ではなく、恋だということが重要だ。本人の中では筋が通っている。好きだから会いたい。好きだから世話をしたい。好きだから、妻である冴が邪魔になる。しかし、その“好き”が相手の意思や生活を無視した瞬間、恋は侵食になる。

加藤綾子の脚本は、この境界線を描くのが巧みだ。『トランジットガールズ』『私の正しいお兄ちゃん』『スイートモラトリアム』『夫の家庭を壊すまで』など、加藤脚本には、恋愛や親密さが人を救うだけでなく、縛り、傷つけ、暴走させるものとして描かれてきた流れがある。『夫婦と16歳』も、その延長線上にある作品といえる。

シワだらけの手や後ろ姿に現れる現実、おたまやたい焼きを電話に見立てる自作自演、御呪いに象徴される恋の侵食。細部の演出が、美子の主観と現実のズレを丁寧に積み上げている。

加藤綾子脚本が得意とする“日常に混ざる狂気”が、映像演出と噛み合うことで、視聴者は笑いながらも背筋が冷える。だからこそ本作は、深夜ドラマとしての中毒性を増しているのだ。


テレビ東京系 ドラマ24『夫婦と16歳〜狂気の隣人〜』毎週木曜 深夜24時30分~

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

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