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朝ドラで“短い出番”ながら残した爪痕「妙な存在感」「見たことある」過去作にも出演していた注目の“若手女優”

  • 2026.7.12
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『風、薫る』第13週(C)NHK

連続テレビ小説『風、薫る』で短い出番ながら強い印象を残したのが、見習い生・土居ヒデ役の池田朱那だ。帝都医大病院に新設された看護科の第1期生として登場したヒデは、勝ち気で向上心が強く、自分の正義を簡単には曲げない見習い生。SNS上でも「妙な存在感」「どっかで見たことあると思ったら!」と注目を集めた。『虎に翼』に続く朝ドラ出演となった池田は、物語に一瞬で緊張感を走らせる“注目の若手女優”としての力を見せている。

※以下本文には放送内容が含まれます。

一言で場の空気を変える女優

ヒデは、西洋式の進んだ看護を学びたいという強い意欲を持った見習い生で、成績も優秀。しかし彼女は、ただの真面目な優等生としては描かれなかった。

実習が始まった場面で、看病婦のフユ(猫背椿)が「見習いさん」と口にすると、ヒデはすぐさま「見習いさんではなく、見習い生です」と訂正する。その一言で、場の空気は一瞬にしてピリついた。悪意を込めて噛みついたというより、正しいと思ったことを正しいと言わずにはいられない。ヒデには、そんな不器用な真っすぐさがある。

このトゲトゲしさは、かつての直美(上坂樹里)にも少し通じるものがある。しかし、直美の鋭さには相手をわざと挑発している自覚や計算があった。一方のヒデは、自分の言葉が場にどう響くかよりも、まず正しいかどうかを優先してしまう。そこに、若さゆえの硬さと、向上心の強さがにじんでいた。

池田朱那の演技は、このヒデを嫌な人物にしすぎない。硬い口調の奥に、もっと学びたい、ちゃんとした看護婦になりたいという熱が見える。だからこそ視聴者は、彼女に反発しながらも、どこか目を離せなくなるのだろう。

ヒデの退場がりんに突きつけた痛烈な問い

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『風、薫る』第13週(C)NHK

ヒデの存在が決定的な意味を持つのは、彼女が看護婦になることを辞めると告げる場面である。

りん(見上愛)は、ヒデなら良い看護婦になれると引き止める。しかしヒデは、りんのような人が良い看護婦なら、自分は看護婦にはなれないし、なりたくもないと冷たく言い放つ。そして、あらためてりんに問いかける。「看護とは何ですか?」と。

りんは、目の前にいる人、弱っている人に手を差し伸べることだと答えるが、その答えをそのまま受け取らないのがヒデである。「その目の前に、ツヤさんもいましたよね」と返すのだ。

ここでヒデが見ているのは、看病婦として働きながら看護婦を目指していたツヤ(東野絢香)の姿である。ツヤは、怠けていたわけではない。学ぼうとしていたし、努力もしていた。しかし、貧困や制度の壁によって道を閉ざされ、結果として仕事を失った。ヒデはそのことを、簡単には流せなかった。

ヒデは、看護婦という新しい職業が、理想を掲げながらも弱い立場にいる人を救えていない矛盾を、鋭く見抜いてしまった。だからこそ、りんの言葉は彼女に届かない。理想が美しければ美しいほど、そこからこぼれ落ちたツヤの姿が、ヒデには見えてしまう。

池田が見せた表情には失望があり、悲しみがあり、未来の分からないものに自分の時間を使えないという切実さが表現されていた。「女が働ける時間は限られている」というヒデの言葉には、若い女性が自分の人生をどう使うかを、真剣に考えている重みがあった。

池田朱那が朝ドラで見せる、時代を揺らす若者の熱量

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『風、薫る』第13週(C)NHK

池田は、朝ドラ『虎に翼』において、汐見圭(平埜生成)と香淑(ハ・ヨンス)の長女・薫を演じていた。香淑の出自や家族のあり方をめぐり、親世代とぶつかることもあった薫は、戦後を生きる若い世代の揺らぎを体現する人物だった。

平埜生成は『風、薫る』において、帝都医大病院外科の助手・黒川勝治を演じていることもあり、親子役を演じていた者同士が時を経て再会したことになる。ヒデを見て「どっかで見たことあると思ったら!」と感じた視聴者も多かったことだろう。

『虎に翼』でも『風、薫る』でも、池田は時代の変わり目に立つ若者を演じている。

『虎に翼』の薫は、親の世代が背負ってきた歴史や選択と向き合いながら、自分の感情を抑えきれずにぶつかる若者だった。一方『風、薫る』のヒデは、明治の看護制度が生まれようとする現場で、理想と現実の矛盾に耐えられなくなる若者である。

時代も、置かれた状況も違う。それでも、池田が演じる人物には共通して、きれいごとでは済ませられない若さの熱量がある。

池田の魅力は、時代の空気になじむ自然さと、若者特有の生々しい熱量が同居しているところにある。時代劇や歴史ドラマでも浮かず、しかし背景に溶け込みすぎることもない。ちゃんとその時代に生きている人として立ちながら、同時に画面に小さな波紋を起こす。

短い登場でも、見る者の記憶に残る。そんな注目の若手女優としての存在感を、『風、薫る』の土居ヒデは確かに印象づけていた。


連続テレビ小説『風、薫る』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

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