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「大人のための絵本」モデル・アンヌさんの名作選暮らしと温暖化~『わたしたちの家が火事です地球を救おうとよびかけるグレタ・トゥーンベリ』『ツバル』~vol.45

  • 2026.6.20

ココナツミルクカマンベールチーズ

6月といえば雨の季節。しかし近年の気候の変化を思うと、今回はあえて晴天の話をしたいと思います。
私は幼い頃から、オリーブとカマンベールチーズが大好物でした。どちらも今ではワインのおつまみの定番として知られていますが、当時の私は、家族に見つからないようこっそり盗み食いをしては叱られていたものです。そう考えると、のちにワイン・エキスパートを取得したのは、ある意味で宿命だったのかもしれません。
そのカマンベールの故郷といえば、フランス・ノルマンディー地方。フランス有数の酪農地帯で、訪れるたびに市場でほどよく熟したものを見つけては買い求め、一日でぺろりと平らげてしまいます。ところが最近、その大好きな味をいつまで楽しめるのだろう、と不安がよぎるようになりました。理由は、気温の上昇です。
先日、フランスのニュース番組を見ていると、気象専門家が深刻な表情で温暖化への警鐘を鳴らしていました。先月、パリでは35度という例年にはない熱波に見舞われたそうです。専門家によれば、10年後、20年後には、パリの猛暑日の日数が現在の南フランス並みになる可能性が高いとのこと。さらに2050年頃には、地域によっては五十度に達するかもしれないと語っていました。
農産物への影響や害虫被害の増加など、さまざまな変化が急速に進むことは想像できます。しかし私の心をざわつかせたのは、その先に続いた話題でした。
それは、バカロレア対策について。
9月始まりのフランスでは、大学入学資格試験であるバカロレアは、日本のように冬ではなく、この6月に行われます。私自身も経験がありますが、窓を開け放ち、爽やかな風が教室を通り抜けるなかで受けたという記憶は今でも鮮明です。その心地よい空気のおかげか、もちろん緊張はしていましたが、不思議と前向きな気持ちで集中できたことを覚えています。
しかし、今後さらに気温が上がるとなると話は変わります。窓を開けば暑く、快適な環境を保てない。試験会場がサウナのようにならぬよう対策が必要だと言っていました。日本ほど冷房設備が普及していないフランス。ふとパリに住む母のことが心配に。冷房のない家で、大丈夫なのだろうかと。
慌ててメッセージを送ると、ちょうどノルマンディーの家の方に滞在しているとのこと。胸をなで下ろしました。
少し前までのノルマンディーは、夏でも肌寒く、海が近くても泳ぐには冷たすぎました。そのため、バカンス先としては南フランスほど人気がなかったのです。ところが近年は、暑くなりすぎた南仏を避ける人が増え、少しずつ注目を集めるように。
ノルマンディーの家の隣には牧草地が広がっていて、牛たちがのんびりと草を食んでいます。その風景を眺めながら、以前、義父がぽつりと言った言葉を思い出しました。
「2050年頃には、ここもココヤシのプランテーションになっているかもしれないな」。
冗談とも本気ともつかない一言でしたが、今となっては笑ってばかりもいられません。
もし本当にそうなったら、カマンベールはココナツミルクを原料に作られるようになるのかも。さて、そのときは、どんなワインを合わせようかしら。
 

『ツバル 海抜1メートルの島国、その自然と暮らし』

写真・文/遠藤秀一
(1,760円/国土社)
ポリネシアの海に浮かぶ9つの島々からなる国、ツバル。海抜わずか1メートルほどのこの国で、人々はどのような暮らしをしているのでしょう。ココヤシはさまざまなものに姿を変え、暮らしを支えます。魚はその日に必要な分だけを獲り、海水で洗って味わう。豚は大切なおもてなしのごちそうに。豊かな海と美しい空に囲まれ、自然の恵みを大切にしながら営まれる、おおらかで無駄のない毎日。しかし今、その暮らしは海面上昇によって失われようとしています。環境問題について考える美しい写真絵本です。

『わたしたちの家が火事です 地球を救おうとよびかけるグレタ・トゥーンベリ』

作/ジャネット・ウィンター
訳/福本友美子
(1,650円/鈴木出版)
スウェーデンの首都 ストックホルム に暮らす、おとなしい少女グレタ。学校で環境問題について学んだことをきっかけに、地球の気候変動や、その影響を受ける動物たちの未来について深く考えるように。いてもたってもいられなくなったグレタは、15歳で座り込みを決意。「気候のための学校ストライキ」と書かれたポスターを掲げ、一人で声を上げ始めました。その小さな行動はやがて世界中の子どもたちへと広がり、大きなうねりとなっていきます。勇気ある挑戦と心に響く言葉の数々を描いた、グレタ・トゥーンベリ の実話に基づく感動の一冊です。


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この記事を書いた人

モデル、絵本ソムリエ アンヌ

アンヌ

14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒業。 モデルのほかエッセイやコラムの執筆などで活躍。 最近は地域で絵本の読み聞かせ活動も行っている。

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