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サッカーに詳しすぎる市議会議員、日本代表のオランダ戦を徹底解説

  • 2026.6.19

サッカーのW杯・北中米大会は14日(日本時間15日)、1次リーグF組の2試合が行われた。

サッカー日本代表はオランダ代表と対戦。2度のリードを許すも追いついて、2対2で引き分け、勝点1を獲得した。

準優勝3回の強豪国と顔を合わせた日本代表の初戦を、ブラジルでプロ選手としてプレーした経験を持ち、『サッカーに詳しすぎる市議会議員』としても知られる桐木優氏に振り返ってもらった。

画像1: (C)Getty Images
(C)Getty Images

〈日本〉GK:鈴木彩艶、DF:伊藤洋輝、渡辺剛、谷口彰悟
MF:鎌田大地 佐野海舟、久保建英、堂安律、前田大然、中村敬斗 FW:上田綺世

〈オランダ)GK:バルト・フェルブルッヘン、DF:フィルヒル・ファンダイク、ヤン・ポール・ファンヘッケ、ミッキー・ファンデフェン、デンゼル・ダンフリース、MF:ライアン・フラーフェンベルフ、ティジャーニ・ラインデルス、フレンキー・デヨング、FW:コーディ・ガクポ、ドニエル・マレン、クリセンシオ・サマーフィル

FIFAワールドカップ2026北中米大会がいよいよ開幕。強豪オランダとの初戦に臨んだ日本代表は、2度リードされるもその都度追いつき、2-2の引き分けで貴重な勝点1を獲得しました。

リスクを避け合う序盤戦

お互いにリスクを避ける序盤戦はオランダ代表のペースで進みました。

日本代表は、鎌田大地選手のスルーパスか久保建英選手の個人技を生かしたいところでしたが、オランダ代表のアンカーを務めるデヨング選手(FCバルセロナ)が、守備時に久保選手を追いかけて最終ラインまで下がるため、久保選手はボールに絡めないし、鎌田選手はスルーパスのスペースがないし、と手づまり状態が続きました。

たとえば後半11分あたりで見せた、久保選手が下がり、鎌田選手が裏抜けする形なんかを多く作れれば、もっと違った展開が訪れたのかもしれませんが、久保選手も意外とボールロストが多めな選手だったりするので、もしかすると「リスクが大きすぎる」というチームの判断で控えたのかもしれません。

また、珍しくファーストプレイで逆サイドが見えていないかった鎌田選手も、そのせいで「最終ラインからのラストパス狙い」という安全第一のプレイに徹していて、「ははぁ、ワールドカップ初戦だものなあ……」という感じでした。

対するオランダ代表は、試合の序盤は日本代表の最終ラインをボール取りどころに設定していたように感じました。

しかし、前半11分頃に鎌田選手がボールのコントロールをミスしながらも建て直し、その後に相手を軽くいなして、中央突破を成功させるのを見てからは、オランダ代表は前線への積極的なプレスをかけることもなくなりました。

オランダ代表のこの辺りの判断の早さと、チーム内の情報共有に「さすがだな」と感じつつも、結局は日本代表もボールを前線に運べなかったので、ボール保持率の高いオランダ代表が「果たしてどのように日本代表を崩していくのかな?」という序盤戦に大きな変化はありませんでした。

ガクポ選手の個人技と、右サイドの攻撃で日本ゴールに迫る

画像2: (C)Getty Images
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日本代表は、通常「3-4-2-1」のシステムを採用しています。

しかしこの試合では、守備のときは上田綺世選手がオランダ代表のMF・デヨング選手を背中で見ながら、前田大然選手が前線から縦横無尽に走り回る「4-4-2」の陣形を採用していました。

ただ、左サイドの前田大然選手と中村敬斗選手、伊藤洋輝選手がそれぞれ一つ前に出て、「4-4-2」の陣形に移行しようとする際に、一瞬だけ前田選手の裏にスペースが生まれてしまいます。

そこでオランダ代表はそのスペースを使おうとしましたが、どこからともなく前田選手がすごい勢いで迫ってくるので、オランダ代表はそれほど守備の強度が高くない日本代表の右サイドからの攻めを選択します。

しかし、オランダ代表も左SBに入ったファンデフェン選手(トッテナム)が、さほどオーバーラップに積極的ではなかったため、左WGのガクポ選手の個人技に頼らざるを得ませんでした。

もし、中央に縦パスを入れられたら、また違う展開になっていたような気もしますが。縦パスが入ってきたのは、ファーストシュートでガクポ選手からトップに当てた場面くらいでした。

日本代表の右サイドは堂安律選手を中心に粘り強く耐え続け、攻め手を欠くオランダ代表は前半22分、CBのファンヘッケ選手(ブライトン)が左インサイドのラインダース選手(マンチェスター・シティ)に中を通そうとするもトラップミスに終わり、リズムが掴みきれないままハイドレーションブレイクに入りました。

オランダ代表が縦パスからリズムを作り始める

画像: (C)Getty Images 後半には得点を奪う中村選手だが、前半はサマーフィル選手の対応に苦戦を強いられた
(C)Getty Images 後半には得点を奪う中村選手だが、前半はサマーフィル選手の対応に苦戦を強いられた

ハイドレーションブレイクの間に、修正が入ったオランダ代表は、インサイドハーフが中に入り、縦パスを通してボールをもらおうとする動きを見せ始めると、徐々にオランダ代表が主導権を握る展開に。

対する日本代表は、ミスも重なりピンチを招くも、谷口彰悟選手の身体を張ったプレイやGK・鈴木彩艶選手の驚異的な反応で、何とか失点を免れながら時間は経過していきます。

何とかしたい日本代表も修正を加え、個人技に長けた右ワイドのサマーフィル選手(ウエストハム)への対応は、1対1の守備で劣勢が続いていた中村選手に代わり、守備力の高い伊藤洋輝選手が任されるようになりました。

中村選手は、ここからはSBでありながらも繰り返し後ろからのオーバーラップを仕掛けてくるダンフリース選手(インテル)を見る役割を担うことになります。

また、この時にゴールキックを繋ぐのに苦戦していた日本代表は、「どうせトップに収まらないのなら……」と、ボールを蹴りだすように修正。この変更がそれなりに功を奏し、いくつかチャンスを作り出すことに成功するも、得点には至らず。

前半はこのままスコアレスドローで終了し、一進一退の展開が続いた後半戦へと向かいます。前半終了間際の伊藤選手のプレーに、イエローカードが出なくてよかった。

前半終了:日本代表0-0オランダ代表

右サイドの守備を修正したことによりできた新しいスペースを使われる

画像3: (C)Getty Images
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開始直後の日本代表は、ボランチの連係ミスもあって、オランダ代表のカウンターを受けます。ここは足のあまり速くない谷口選手に代わって伊藤選手が追いつき、最後は渡辺剛選手がクリアして難を逃れました。

前半もそうでしたが、どうも日本代表は立ち上がりが不安定。意識のところもあると思うので今後の修正が待たれます。

さて、日本代表はハーフタイムを跨いで「久保選手が右サイドをもっとちゃんと見るように」と修正があった様子。

前半からオランダ代表の攻撃は、ガクポ選手の個人技次第なところがあって、久保選手もガクポ選手の対応で堂安律選手のフォローに回っていて、ここをもっとしっかり抑えようとしたんだろうけど、結果的にこれはよくなかったと思う。

というのは、久保選手が外を見て、上田選手がデヨング選手を見ることで、その間のスペースを見る人がいなくなってしまったから。

オランダ代表はその空いたスペースを使って、センターバックのファンダイク選手がボールを持ち運びだします。徐々に押し込めるようになったオランダ代表は、フリーキックの流れから最後はファンダイク選手のヘディングで先制に成功。

ファンダイク選手のプレイは、ヘディングの直前に明らかにマークについていた渡辺剛選手を後ろから押しているので、個人的にはファウルだと思いますが、試合開始直後の上田選手が引っ張られた場面もノーファウルだったわけで、たぶん手を使うファウルをあんまり取らないタイプの主審で「VARはともかく、その基準は試合を通してある程度統一されていたかな」という印象。日本代表としては、到底納得できるはずもないプレイだったけど。

後半5分 日本代表0-1オランダ代表

失点直後に元気になる日本代表の攻撃陣

画像4: (C)Getty Images
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失点した後は、日本代表は急に前に出るようになります。

攻撃的な展開になると久保選手が元気になり、下がってボール受けてスペースに鎌田選手を走らせたかと思うと、今度は本来のポジションである右サイドから逆サイドまで走って相手をかく乱。おそらくデヨング選手は自陣左サイドに落ちる約束になっていた模様。久保選手と中村選手とのパス交換から中村選手が得意のカットインシュートを決め切り、早い段階で日本代表が同点に追いつきました。

後半12分 日本代表1-1オランダ代表

リズムは再びオランダ代表へ

押せ押せの日本代表はカウンターからチャンスを作り、サマーフィル選手にイエローカードを出させるなどペースをつかみかけるものの、この日は上田選手がゴール前に全然いない。ボールが収まらなくてサイドに流れたのかな……。

まあ、あれだけ中央で勝負できなければ気持ちもわからんでもないけど、「ワントップの上田選手がゴール前にいないと、日本代表はいったい誰が、どうやって点取るんだい?」という話。形は作るも結果が出せない日本代表は、またしてもリズムを自ら手放していく。

オランダ代表は、ここでまたセンターバックのファンヘッケ選手から、今度は右インサイドのフラーフェンベルフ選手(リヴァプール)に縦パス。

正直に言って、ファンダイク選手よりも、ファンヘッケ選手の方が日本代表にとっては厄介な存在でした。

ディフェンスラインとボランチの間で受けられてしまった日本代表は、慌ててボランチが対応するも、そこもドリブルで交わされ、避けたかったはずの中村選手とサマーフィル選手の1対1に持ち込まれるも、残念ながらここでも止めきれず。

前田選手が、「デコイラン」を仕掛けてきた右SBのダンフリース選手の対応に行って、空いてしまった中央のスペースから、サマーフィル選手にそのまま左足でファーサイドに流し込まれて失点。

後半19分 日本代表1-2オランダ代表

日本代表は、覚悟の右サイド3人全取っ替え

画像5: (C)Getty Images
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その後もファンヘッケ選手からの縦パスに対応できない日本代表。受け手がインサイドに2人いるので、センターバックが前に出るのも限界なんですよね。ただでさえ伊藤選手は、サイドバック的にサマーフィル選手を見ていたりもするので。

何とかリズムを変えたい日本代表は、攻撃であまり機能しきれず、守備でもポジションが不安定になってきていた前田選手に代えて、後半22分に伊東純也選手を投入。するとここで谷口選手が突然の覚醒。縦パスが伊東選手の足元めがけてボールが入りまくる。

(後半22分 OUT:前田選手→IN:伊東純也選手)

縦パスが入るとリズムは日本代表に。押し込まれだしたオランダ代表は、ハイドレーションブレイクで3枚替えを行い逃げ切りを図る。フレッシュになったオランダ代表のこの目論見はうまくいき、試合のリズムは再びオランダ代表へ。中盤で久保選手からボールを奪い、ガクポ選手が堂安選手を1対1で抜きまくり、またもや日本代表の失点は時間の問題かという状況。

盛り返したい日本代表もなんとか堂安選手が個人技で応戦し、渡辺選手と連携して右サイドを崩すも、守備の不安定さは一向に解消されない。オランダ代表はこの試合はじめてコーナーキックでファーサイドを狙うなど、何となく余裕を見せ始めてきた様子。このままでは負けてしまう日本代表も一気に3枚替えを敢行。右サイドを全員変えて強引にペースを奪い返しにいきます。

リードして中盤が引き始めカウンター主体となったオランダ代表は攻撃に人数をかけてこないのでコンビネーションが減りドリブル中心の単独攻撃が増える。しかし、それまで散々押し込まれていたガクポ選手に対して、日本代表は交代で入った冨安健洋選手が見事に封殺。

冨安選手が優勢になることで、同じく交代で入った菅原由勢選手も前へと浮く形を作れるようになり、それがオランダ代表の守備を横や斜めに引っ張ることに繋がりました。

そのせいで裏抜けができるようにスペースを使って、足元で受け手にもなれる伊東選手が、前線で中にも移動できるようになり、日本代表がボールを受け運ぶための広大なスペースがさらに広がっていきます。

(後半30分 OUT:渡辺選手、堂安選手、久保選手→IN:冨安選手、菅原選手、小川選手)

リードを奪った後は中盤が引き始め、カウンター主体となったオランダ代表は、攻撃に人数をかけてこないようになります。

コンビネーションが減り、ドリブル中心の単独攻撃が増えていきますが、日本代表は交代で入った冨安健洋選手が、それまで散々押し込まれていたガクポ選手を見事に封殺。

冨安選手が優勢になったことで、同じく交代で入った菅原由勢選手が「前に浮く形」を作れる場面が増え、伊東選手がボールを受けられる広大な前線のスペースがさらに広がってきました。

目論見が外れるオランダ代表

画像6: (C)Getty Images
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最終ラインのスペースを埋めて逃げ切りたいオランダ代表は、終盤の選手交代でシステムをちゃんとした3バックに変更します。

もともとデヨング選手が最終ラインまで下りて守備をしていて、実際は何も変わってないはずなのに、逃げ切りのメッセージを込めた選手交代によって、オランダ代表の選手たちは極端に自陣に引くようになります。

前線のスペースがなくなり逃げ場もなくなった上田選手が覚悟を決めたのか中央で勝負してくれるようになると少しずつボールが収まり始め、日本代表は少しずつリズムを掴む展開に。

「これならサイドから押し込める」と判断したからなのか、後半38分に上田選手に代わり、塩貝健人選手を投入。

(後半38分 OUT:上田選手→IN:塩貝選手)

サイドからのセンタリングとセカンドボールの回収による連続攻撃の活性化と、小川航基選手が消えかけてたところもあったので、そのバランスを取った感じの交代でした。

塩貝選手は「機能している」とは言い切れない部分はあったものの、ピッチを走り回れるので、オランダ代表のDFラインがどんどん押し下げられ、中盤に余裕が生まれるように。

前線でもボールが収まるようになった日本代表は、伊東選手がたびたびディフェンスラインの突破を図り、連続コーナーキックでゴールに迫り続けます。

そして後半43分、右コーナーキックから小川選手の打点の高いヘディングが鎌田選手の頭をかすめると、ボールはゴールキーパーの手をかすめてゴールに吸い込まれ、日本代表はついに同点に追いつきました。

後半43分 日本代表2-2オランダ代表

その後は鎌田選手が止まってしまい、失点しそうな雰囲気もあったものの、残り時間も少なく、両チームの追加点はなく、2対2の同点で試合終了。

もう少し早く同点に追いつけていたら、鎌田選手に代えて板倉滉選手か、瀬古歩夢選手をボランチに入れてもよかったかも。

ただ、例えば塩貝選手を入れずに上田選手を残したまま、板倉選手か瀬古選手が交代出場したとしても、チームが攻めるか守るかの意思統一ができていたかどうかは不明なので、難しいところではありますね。

試合終了 日本代表2-2オランダ代表

日本代表はリーグ最強と目されるオランダ代表から勝点1を獲得し、予選突破に向けて悪くないスタートを切りました。

画像: (C)桐木優
(C)桐木優

〈桐木優・プロフィール〉

1977年静岡県生まれ。韮山高校を卒業後、単身ブラジルにサッカー修行に渡り、無事にプロ契約を勝ち取るも、試合中に後ろからカニバサミを喰らって、泣く泣く引退に追い込まれる。
日本でのサラリーマン生活を経て、介護会社を起業。その後は現場の声を政治に届けるために一念発起し、2011年の多摩市議会議員選挙に初当選を果たした。

自身のホームページに何気なく掲載した「東京ヴェルディ観戦記」が注目を集め、『サッカーに詳しすぎる市議会議員』として知られるように。近年は幅広く社会保障全般に携わる『肩書きの多すぎる市議会議員』としても存在感を示している。

主な資格・職業は、多摩市議会議員の他に、ケアマネジャー、相談支援専門員、保育士、社労士、行政書士、宅建士、管理業務主任者、公認心理師、はり灸マッサージ師、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、サッカーC級コーチ、サッカー3級審判員等

執筆:桐木優
写真:Getty Images、本人提供

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