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LVMH メティエ ダールが“和紙”の新たな可能性を探究。日本の伝統素材に着目する特別展を開催

  • 2026.6.13
Courtesy of LVMH

パリ中心地に位置するLVMH メティエ ダールのショールームで、日本の伝統素材である和紙に焦点を当てた展覧会「WASHI ~ the art of crafting paper, where tradition unlocks innovation」が5月28日〜 6月3日に開催された。日本のクラフツマンシップを紹介するシリーズ「Métiers d'Art du Japon ~ 日本の芸術的な職人技」の第二章となる本展では、和紙を伝統工芸品としてではなく、現代のファッションやデザイン、ものづくりに活用できる素材として紹介している。

LVMH メティエダールのショールーム。LVMH メティエ ダールは、LVMHグループが世界各地の職人技術や素材開発を支援する組織として設立され、本展では日本の伝統素材である和紙の可能性に焦点を当てた。 Courtesy of LVMH

和紙は、越前をはじめとする日本各地の産地で今なお受け継がれている日本固有の素材。書画や出版文化を支えてきたことはもちろん、障子や照明などの建築空間、工芸品や祭礼文化など幅広い分野で用いられ、日本人の暮らしや美意識と深く結びついてきた。近年では、和紙を糸状に加工した和紙糸や、シルクやヘンプなど異素材との複合素材、箔加工やデジタル技術との融合など新たな開発が進み、ファッションやインテリア、パッケージング、建築分野においても注目を集めている。本展は、そうした和紙の文化的価値と産業的可能性の両面に光を当てる試みとして、アート作品からファッションアイテムまで、多彩なアプローチを提示した。

会場は、パリ2区にあるLVMH メティエ ダールの本拠地で、エッフェル塔の設計者であるギュスターヴ・エッフェルがデザインしたガラスと鉄骨の天窓が残された歴史的建造物。5フロアにわたる館内はオフィスや素材資料館が設けらており、同展覧会はショールームである地上階と、エッフェル設計のガラス天窓の下に広がる最上階のイベントスペースで行われた。関係者向けのプレビューには、ファッションとデザイン、工芸など多彩な分野の関係者が集結。学生からクリエイター、ブランド関係者まで幅広い世代のゲストで会場はにぎわい、日本の伝統素材が秘める可能性について活発な交流が繰り広げられた。

Courtesy of LVMH
堀木エリ子による作品。 Courtesy of LVMH
民谷螺鈿の着物。 Courtesy of LVMH

まず来場者を迎えるのは、和紙アーティストとして国内外で活躍する堀木エリ子の大型作品。長年手がけてきた独自の手法によって立体的に漉き上げられた繭型のオブジェは、和紙ならではの繊細な質感と光の透過性を生かしながら、空間にやわらかな陰影をもたらしていた。会場中央には民谷螺鈿の着物が堂々と展示され、来場者の視線を集めた。西陣織の伝統技法「引箔」を応用し、和紙に貼った貝殻を細く裁断して一本ずつ緯糸(よこいと)として織り込む独自の螺鈿織を展開。貝殻特有の繊細な光沢と豊かな表情を生み出し、和装帯のみならず、ラグジュアリーメゾン向けのテキスタイルやアートピースの制作にも取り組んでいる。

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三菱UFJフィナンシャル・グループ主催「KOGEI ARTISTS LEAGUE」のファイナリストから選出された3作家による作品展示から。 Courtesy of LVMH

また、三菱UFJフィナンシャル・グループが主催する若手工芸作家支援プロジェクト「KOGEI ARTISTS LEAGUE」と連携し、金工作家の岩田加奈恵、ガラスアーティストの池上創、テキスタイルアーティストの高橋稜が、本展のテーマである和紙を用いた新作を発表した。それぞれ異なる素材を扱う作家たちが、和紙との組み合わせによって新たな表現に挑戦している。日本では古くから、和紙は神社仏閣のお札やおみくじ、祭礼のしつらえなどにも用いられ、人々の祈りや願いを託す媒体として機能してきた。若手作家の3人はそうした和紙の文化的背景にも着目し、文字を書き込む、折る、重ねるといった行為を作品に取り入れながら、その物質性だけでなく、人と記憶や願いをつなぐ存在としての側面を表現した。

スポーツブランド、<em></em>ミズノが手がけた和紙を用いたスニーカー。 Courtesy of LVMH

今回の展示で特に興味深いのは、和紙がアートの領域だけでなく、実際のプロダクト開発にも活用されている点だ。ミズノは初の商品化となる、和紙60%・ナイロン40%の生地をアッパーに採用したスニーカーを披露。和紙特有の軽さや通気性に着目し、スポーツウエアの分野での可能性を提案している。

BODHIが発表したウエアの展示風景。 Courtesy of LVMH

2025年度LVMHプライズ受賞ブランド、SOSHIOTSUKIは和紙40%・シルク60%の生地で制作したシャツを発表。見た目にはシルク特有の上品な光沢を備えながら、手に取ると和紙ならではの独特の張り感が感じられる。さらに、高級カシミヤブランドBODHIは、和紙とカシミヤを組み合わせた素材を用いたウエアを手がけた。柔らかな肌触りと軽やかな着心地を両立させることで、新しい日常着のあり方を探究する。

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すべて「WASHI ~ the art of crafting paper, where tradition unlocks innovation」の展示風景から。 Courtesy of LVMH

会場ではこのほかにも、シルク和紙やヘンプ和紙、和紙糸、箔加工を施した和紙素材に並んで、LVMH メティエ ダールが世界五大陸にまたがるコミュニティを通じて扱う希少なレザーも、まるでオブジェやインテリアのようになどが展示された。なかには革の表面に和紙の質感を再現したレザーもあり、和紙の表現が紙という枠を超えて広がっていることがわかる。また、京都府の後援のもと、丹後地域をはじめとする京都ゆかりの職人や事業者も参加し、地域に受け継がれてきた技術と現代的なデザイン感覚が交差するものづくりを紹介した。

和紙というと、障子や書道用紙を思い浮かべる人も多いだろう。しかし本展が示しているのは、和紙が過去の文化財として保存されるだけの存在ではなく、現代のファッションやデザイン、建築、さらにはラグジュアリー市場においても活用できる素材であるということ。千年以上受け継がれてきた手漉きの技術を土台としながら、新たな用途や表現を生み出していく。アーティストやブランド、職人たちとの協働を通じて和紙の可能性を国際的な視点から紹介した本展は、日本の伝統素材が未来のものづくりにどのように生かされていくのかを考える機会となっていた。

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