1. トップ
  2. エピソード
  3. 「そのやり方遅くない?普通もっと早くできるけど」人前で見下した先輩。数日後、上司の言葉に救われた

「そのやり方遅くない?普通もっと早くできるけど」人前で見下した先輩。数日後、上司の言葉に救われた

  • 2026.6.14

締切前のフロアで

その日は、任された資料の締切が目前に迫っていた。

図やグラフの配置をどうすれば伝わるか、私はモニターと向き合いながら頭をひねっていた。一枚一枚、見る人が迷わないように整えていく。

そこへ、隣の島の先輩が私の画面をのぞき込んできた。

「そのやり方遅くない?普通もっと早くできるけど」

声が、わざと周りに聞こえるくらいの大きさだった。近くの席の人たちが、ちらりとこちらを見る。

「すみません、急ぎます」

その場では、それしか返せなかった。顔が熱くなる。反論したい気持ちはあったのに、人前で名指しされた居心地の悪さが勝ってしまった。

残業して仕上げた一枚

定時を過ぎても、私はフロアに残った。早く出すことより、見た人がちゃんと理解できる資料にしたい。その一心だった。

「まだ帰らないの?ほどほどにね」

「はい、もう少しだけ。区切りのいいところまでやっちゃいます」

帰り際の同僚に手を振り、私はまた画面に向き直った。

「ここの順番、入れ替えたほうがわかりやすいかな」

誰もいなくなったフロアで、ひとり呟きながら手を動かす。

色の使い方、見出しの大きさ、補足の入れどころ。地味な調整を、納得がいくまで繰り返した。

完成したのは、すっかり夜が更けてからだった。

それでも、自分なりに精いっぱいやり切った。提出ボタンを押したとき、ほんの少しだけ肩の力が抜けた。

とはいえ、あの先輩の言葉は胸に刺さったままだ。

本当にこれで良かったのか。確信が持てないまま、私はその週を過ごした。

空気が変わった瞬間

数日後の朝礼が終わったあと、上司がプリントアウトした資料を手に、フロアの真ん中で口を開いた。

例の、私が仕上げた一枚だった。

「この資料、かなり分かりやすいね。誰が作ったの?」

一瞬、誰のことか分からず、私は反応が遅れた。

周りの視線が、ゆっくりとこちらに集まってくる。

「あの、それ、私です」

「そうなんだ。図の流れが丁寧で、すぐ頭に入ってきたよ。お客さんにもこのまま出せる」

その言葉に、フロアの空気がふっと変わった。

さっきまで何でもない顔をしていた人たちが、感心したようにこちらを見ている。

そして、あの先輩が、ぴたりと黙り込んだ。「遅い」と言い放ったときの勢いは、どこにもなかった。視線を手元のパソコンに落としたまま、一言も発しない。

「ありがとうございます」

私は上司にそう返すのが精いっぱいだった。完璧に言い返したわけでも、謝らせたわけでもない。それでも、人前で受けた言葉を、別の人前でちゃんと取り返してもらえた気がした。

その日以降、先輩が私のやり方に口を出してくることは、二度となかった。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる