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フレグランスは時代を語る。いま人々が“香り”に惹かれる理由とは?

  • 2026.6.2

なぜ今、この香り?──そこには大きな理由がある。香りのプロとその背景をひもといてみよう。フレグランスが語る冗舌なメッセージは、いつだって時代を象徴している。

話を伺った人…
小泉祐貴子(YUKIKO KOIZUMI): 香りディレクター、セントスケープ・デザインスタジオ代表。資生堂、香料会社フィルメニッヒを経て独立。香りを使った企業コンサルティングや環境デザイン、プロダクト開発に従事し、サンキエムソンス ジャポン代表として人材育成にも力を入れている。

日本で“香りをまとう文化”が広がった理由

Jonathan Knowles / Getty Images

日本は香水が浸透しない国──そんな定説も今は昔。ここ数年の人気は右肩上がりで、熱が冷める様子はない。ブームのきっかけはパンデミックだが、以前より少しずつその土壌は育まれていた、と小泉さんは指摘する。

「平安時代の香り文化に象徴されるように、日本人にはもともと香りに対する豊かな感性が備わっています。ただ、強い香りへの抵抗があり、香水の選択肢は限られていました。転機は2000年以降、ニッチフレグランスブランドの台頭です。ジェンダーを問わない独創的な香りを多く試せるようになりました。その後の柔軟剤ブームも、香りをまとう行為を身近にしたといえます」

そうして、パンデミックが起こる。誰とも会わずに家で過ごす日々は、自分を飾るものから癒やすものへと香りの意味合いを変化させた。

「自主的に香りを楽しむことに慣れ、周囲への配慮を重んじるところから、自分の好みを優先して選ぶ感覚を身につけた方も多いのでは。外出できなかった時期は、自然に触れるようなグリーン、ウッディの香調が人気でしたが、今は自由に好きなものを選べるフェーズに。トレンドも多角的です」

香りは“時代のムード”を映すメッセージ

Mariyariya / Getty Images

香りは時代を象徴するものである、と多くの調香師も口をそろえるが、ファッション同様、香りにもトレンドの循環がある。

「昔はやったものがリバイバルしていくのですが、そこに必ず時代の解釈が加わります。かつて香料会社のマーケティング職に就いていたときは、世界の空気──たとえばアップカミングなクリエイターたちが今何を考えているのか、ファッションや建築、街のグラフィティに漂うムードはどんなものか。それをいち早く察知して、香りに落とし込むことでトレンドを作っていました」

だから香水は、鮮度高く時代を語るのだ。トレンドのなかから選ぶのも楽しいけれど、そこから時代のメッセージを感じ取り、香りの分析や表現ができるとさらに深くハマるはず、と小泉さんは話す。

「自分がどんな香りに惹かれるのかを理解し、それを言葉で表現することができると、より豊かなコミュニケーションが生まれます。言語化する知識は、一度習得すればずっと使える技術。そこに流行が反映されていくから、飽きることがなくおもしろいんです」

香りは感性に響き、幸せをくれる。同時に知識欲を刺激して満たしてくれる。今あなたが惹かれるその香りはどんな時代を語り、どんな魅力を放っているだろう。

From Harper's BAZAAR June Issue 2026

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