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「早く乗ったら?」遅延中のバスで“数分かけて乗り込もうとする男性”に乗客が苛立ち…わざとゆっくり乗り込んだ理由に「なるほど…」

  • 2026.7.3
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。送迎バスの運行管理やバス運転士の経験を持つVenus☆トラベルです。

今回は、18年ほど前に私がある自治体の市内循環福祉バスを運行していたとき、「なるほど」と感じたできごとを紹介します。

当時の私は、営業職とピンチヒッターのバス運転士を兼務していました。あまりに厳しい福祉バスのダイヤを見直すため、専属運転士が休んだときは、率先して乗務に手を挙げ現場の実態を確認したものです。

そこで私は、専属運転士が「ダイヤが厳しい」と訴え続けてきた理由を、身をもって実感することになりました。

乱れるダイヤとスローペースな乗客

当時、時刻表の見直しを検討していた福祉バスは、時刻表通りに走ることすらままならない状況でした。

1回信号に引っかかっただけでもダイヤが遅れ、交通渋滞に巻き込まれると大きな延着につながることも少なくありません。

専属運転士たちもシビアな運行が求められており、私が乗務した日も自然渋滞が原因となり、3分遅れで運行を続けていました。

交通量が増える朝は渋滞が発生しやすい地域で、3分の遅れはあっという間に5分遅れへと拡大してしまいます。

そんなとき、停車したバス停から1人の男性が乗車しました。着席したらすぐに発車しようと準備していましたが、男性はいつまでたっても乗降扉のステップに留まったままでした……

振り返って男性の方を見ると、ゆっくりではあるものの、1段ずつステップを上ろうとしていました。

私は足が悪いのかなと思い、「お気をつけてご乗車ください」と男性に向けて声をかけました。

すると、男性は足を止めて私の方に視線を向け、軽く会釈したように見えました。

当時の会社規定では、介護などの資格を持たない私は、原則、仕事中に乗客の直接的な補助ができませんでした。遅れるダイヤに焦りつつも、男性を見守るしかありませんでした。

足を止める男性と騒ぎ出す乗客

車内ミラーで男性の動きを見守りつつ、時計を見るとすでに停車してから1分近くが経過しています。つまり、4分の遅延が発生したことになります。

再び男性に視線を送ると、男性は2つめのステップに足をかけたまま、バスの後方を気にしているように見えました。さすがに、私も声をかけようかと思ったとき、乗客から声が上がりました。

「早く乗ったら?」
「遅くなって運転手さんが可哀想じゃない」

気の強そうな高齢女性たち数名が、男性の乗車を急かしています。その間も、男性は後方を見たり車内を見たり・・・しかし、なかなか足を上段に伸ばそうとはしません。

やっと乗降ステップを上り切り、座席へと移動する姿を見ると、足が悪いようには見えない歩き方でした。「なぜこんな行動?」と私は不思議に思うばかりです。

運転士の立場としては、早く出発するため着席して欲しい気持ちでいっぱいです。しかし、年配の男性が発車時に転んでケガをする恐れもあります。

「早く座って・・・」と心の中で念じていたとき、乗客がスローペースだった理由がはっきりと分かりました。

遅れた乗客への優しさは「時間稼ぎ」だった

このバス停に停車してから、すでに3分が経過しています。計6分遅れとなった福祉バスの車内では、乗客がイライラし始めました。

男性が中央の通路を歩いて座席に向かう途中、やはりバスの後方を意識しているため、私は思いきって聞いてみることにしました。

「何か忘れ物ですか?どうしました?」

すると、男性が「そこに…」と言いかけたとき、開いたままの乗降扉のところに、高齢の男性が現れました。そのとき、私は「なるほど!」とピンときました。

同じバス停から乗車する人が遅れていることに気づき、男性はバス出発の時間稼ぎをしていたのです。そのバス停では、私が乗務するバスが発車すると、約1時間後に来る次のバスしか移動手段がありませんでした。

狭路のため路線バスも入れず、他のバス停までは1km以上歩かなければなりません。その状況を知っているため、私自身もバスの遅れにつながっていることを強くは言えませんでした。

ただ、他の運転士たちのためにも、「次からは早めにバス停で待っていてくださいね。」と伝えました。

運転士も待ちたい気持ちはあるがダイヤ次第…

遅れてきた乗客と時間稼ぎをした男性は、頭を下げて「ご迷惑をおかけしてすみません」と乗客たちに謝罪しました。その姿を見て、理由を知った乗客たちも一応は納得したようで、それ以上2人を責めることはありませんでした。

その後、遅れが生じているバスに乗車してくる乗客へ、私は1人1人、丁寧に「お待たせいたしました」と声をかけながら運行を続けました。

運転士も、後方から追いかけてくる乗客を待ちたい気持ちは持っているものです。しかし、運行ダイヤ次第で、待ちたくても待てない状況があることも事実です。

今は違う業種で働く私ですが、バスを利用する際は余裕をもってバス停へ向かうようにしています。


ライター:Venus☆トラベル

近畿地方でバスの運転に関わる仕事に携わって約12年、多くの送迎バスを運転しました。幼稚園や自治体、企業や施設など、それぞれの場所で学ぶことが多くありました。その反面、運転士視点で感じた心の声をリアルにお届けします。


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